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書架と画廊の街・ミネルヴィア。深遠なる叡智と美の真髄を求めて、種族も思想も関係なく、世界中からあらゆるものがここに集まると言われているところだ。
その最大の特徴は、浮遊都市であること。大陸の端の切り立った崖から高く見上げた先に、巨大な岩がいくつか浮かんでおり、その上に都市が形成されている。岩と岩の間に橋は架かっておらず、大陸との行き来も含めて全て遊覧飛行船で行われている。
「す、すごい……本当に浮いてる。岩も船も」
「うむ、まったく不思議なものよな。我も千年生きておるが、落ちる気配がまったくない」
「……そういう不吉なことは言わないように」
飛行船の到着駅(ターミナル)は、輝く真鍮の柱と硝子のドームだった。中は広々としていて、他にも何隻か船が発着していた。土産物の店が軒を並べ、都市の全体地図が掲示されている横の壁には、新刊発売だとか新作発表だとか、色んなチラシがたくさん貼られていた。
「ほお、宿は一番高い所にある『極楽湯戯場(サナトリウム)』の島に集まっておるようだな。温泉とやらには一度入ってみたかったのだ」
「膝や腰の痛みをほぐし、疲れもさっぱり洗い流せます……だって。いつもより太陽に近いせいか夏みたいに汗もかいてるし、楽しみだな。」
ここは全ての島をひっくるめて書架と画廊の街と言われているけれど、その中身は島ごとにまったく違っていて面白かった。