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「ああ、それにしても本当に美しい。誰もが一度は思ったことがあるでしょう、深遠なる満天の星空をこの手にしてみたいと。夜空を閉じ込めたともいわれる天藍石はその望みを叶えてくれる石といえますが、これほど大きく、透き通っているのに濃い色のものは初めて見ます」
「星空を?」
晴れていれば世界中のどこからでも見える星空を僕は思い返した。塗りつぶしたような真っ黒な空に、ぎっしりと白い光がきらりと輝いている。けど遠い遠いそれらは僕に、美しさ以上に恐ろしさを、憧れ以上に虚無をもたらすことがほとんどだった。星空を手に入れたいなんて、考えたこともなかった。
「君はそうは思いませんか」
「……あいにくと。この秘宝はとても綺麗だと思います。けど僕は、星空を綺麗だと思ったことはありません」
「そうですか……。少なくとも私たちの故郷では、とても美しい星空が見えるのですが。乙女の守り星と青年の守護星が星の大河の畔でひときわ強く輝くのは、二人が愛の言葉で着飾っているからだ、と言われています」
「そんな風に見える場所があるんですね。……そういえば、どちらからいらしてるんですか?」
ふと尋ねた。おじさんは含みのある笑顔で答えた。
「ここからずっとずっと遠いところですよ。……だから私たちには、家に帰るまでもうひとふんばり、いやあ、さんふんばりぐらい必要なんですよね。あははっ」