静かな雨が降り、梅雨入りの近さを肌で感じる季節となりましたね。
九州や四国地方はとうとう梅雨に入ったと、今日のラジオで言っていましたよ。
それにしても、この梅雨のしとしと雨ほど、斐川町の水田に似合う雨は無いですよね。
築地松のある風景を、その「みなも」に見事に映し出し、霧雨がその風景を、わずかににじませている。
すると時間がゆっくりと、本当にゆっくりと、ほんの小さな音を立てながら転がっていく。
そんな気がして、空を見上げる・・・
先日、初めて斐川町内にある、「出雲キルト美術館」へ行ってきました。
へえー。キルトに興味があったんですか?と思われた方、すみません!有りません。と言うかわかりません!
実は、パッチワークとキルトの違いが、そもそも理解できていないのです。
と言うか、出来ていませんでした、が正直なところなのです。
今現在進めている、玄関廻りのリフォーム現場の奥様から「あそこの囲炉裏を見てきてよ」とおおせつかったのでした。
畳敷きで6畳の広いホールを持つ出雲平野独特の玄関リフォームのプランに、せっかくだからと囲炉裏を設置することを提案したところ、ご主人のあこがれであることが発覚し、直ぐに着工が決まり、今に至っています。
囲炉裏と言っても様々で、火棚や自在鉤を持つ本格的な物から、床の一部を切り抜いただけだったり、単なる飾りに過ぎない物まで、千差万別。
今回は、穴の周囲に来待石を貼り付け、実際に炭火なら使用可能にした、セミ囲炉裏と言ったところを目指しています。
問題は、囲炉裏の廻りの、テーブル代わりになる、木組みの形状をどうするのかと議論になったときに、参考にして欲しいからと言われ、キルト美術館に、キルトを見るのではなく、囲炉裏を見に行くことになったのです。
これって全く、動機が不純ですよね。
500円の入場料を払い、「すみません。囲炉裏を見せてください」と、案内係のお姉さんにお願いすると「どうぞどうぞ、でも、写真撮影は禁止ですから、心に写し取ってくださいね」と言われてしまい、あらためて美術館であることを自覚したのでした。
十数点あったキルトの作品達は、古民家の古い柱や梁や床板と、絶妙の暗さと、集中させたスポットのまばゆいばかりの光の中で、怪しく、優雅に、そして生命観あふれる輝きを解き放っているようでした。
わからないなりに、時間をかけ、見入ってしまい、本来の目的を忘れそうでした。
そうだ、今私は仕事中であり、芸術鑑賞に来たのではなく、囲炉裏が目的だったはずと、気を取り直して薄暗い板の間にあった、囲炉裏の前の座布団に座ったのでした。
ところが、ところがですよ皆さん!
座った正面には、壺庭に面した壁が取り払われ、一枚の硝子がはめ込んであり、そこからは土蔵の白壁の一部と、オブジェとして配置された梅の古木と、その向こうの古いガラス戸が、強い日の光に燦然と輝き、さらに目の前には、囲炉裏の真ん中に置かれた、花瓶に挿された菖蒲(たぶん?)の花がシルエットとなり、浮かび上がっていました。
ハッとするほどのその演出に、しばらく見とれていると、ゆっくりと、そしてじわじわと、なぜか心が震えだしたのです。
そのうち、涙がこぼれそうになり、やばいやばいとあわてて立ち上がり、お礼を言って、早々に退散したのでした。
五十路をひた走る、仕事オンリーで有るはずのおじさんの心を、激しく揺さぶったのはいったい何だったのか、検証は今後の課題とします。
そんなこんなで興奮さめやらぬ、ヒゲ専務の、長い長いブログにおつきあい頂き、ありがとうございました。
しかし、こんなことで「囲炉裏の有る玄関リフォーム」は、本当に完成するのでしょうか?
心配です!!
それではまた・・・