・ケトン体Ketone body けとんたい
よくも悪くも働くケトン体についてです。
二つのアルコール分子と二つの炭酸ガス分子より生成合成する物質です。
ブドウ糖が枯渇した状態で脂肪酸が燃焼するとき肝臓ではケトン体(アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸)ができます。脳にとってはブドウ糖が枯渇したときの唯一のエネルギー源となりうる物質です。
脂肪酸が燃える時にケトン体が 多く発生します。1960年代から中鎖脂肪酸を使うとケトン体の産生効率が高いことが明らかになり、中鎖脂肪酸を利用したケトン食がありました。
ケトン食は、1921年に開発され、メカニズムは、いまだ完全には解明されていなかったことから日本ではあまり普及していませんでした。1995年以降アメリカで急速に普及した治療法で難治性てんかんの子供に用いられている治療食です。
米やパンなど炭水化物はできるだけ食べないようにして、砂糖の代わりに人工甘味料を卵、豆腐、肉、魚、食用油主体の食事です。そして「脂肪:非脂肪(たんぱく質+糖質)」の値を、3:1~4:1に保つことを目標とします。言わば、糖尿病食よりも糖質制限食をさらに徹底させた食事療法です。
ケトン体を増やすためには、中鎖脂肪酸を多く摂取し、長鎖脂肪酸の吸収とβ酸化による分解を促進するために脂肪分解酵素のリパーゼと肝臓での長鎖脂肪酸のミトコンドリアへの運搬を促進するL-カルニチンの摂取は有効です。
このような方法を用いて、ケトン体を多く産生させると、食事だけで、さらに、がんの縮小の報告もあります。
ケトン食療法Ketogenic dietとしての中鎖脂肪ケトン食の基本は、主食の糖質を極力減らすことです。糖質の1日摂取量は40g~50g以下を目標に1回の食事につき糖質が20gを超えないように、ご飯・パン・麺類・芋類、果糖の多い甘い果物を極力避けます。
果糖も体内でグルコースに変換されるからです。糖質を食べるにしても、できるだけ玄米や全粒粉小麦など精製度の低い炭水化物で少量です。
たんぱく質は体重1kg当たり1~2gの摂取とします。60g~120g/体重60kgで、赤身の肉はがんを促進しやすいことから控え目として、大豆製食品(豆腐や納豆)、魚、卵、鶏肉などの摂取となります。
主食を1日の糖質の摂取量が40gを超えないようにしましょう。
グルコース(ブドウ糖)が十分に供給されていると、脂肪酸の分解でアセチルCoAが増えてもTCA回路で代謝されるので、ケトン体は増えません。
肝臓ですぐに分解される中鎖脂肪酸を利用すると、脂肪の割合を60%程度に減らし、糖質を1日40g程度摂取とするとケトン体を大量に産生するといわれています。
中鎖脂肪を多く摂取して、脂肪:糖質40g+蛋白質の比率を1.5:1、食事の60%~90%を脂肪にする食事を目標とします。糖質を40g、蛋白質を80g摂取するとカロリーは480kcalです。糖質+蛋白質の120gの1.5倍の脂肪は180gで、これは1620kcalとなり合計2100kcalです。
中鎖脂肪はココナッツオイルや精製した中鎖脂肪(MCT:マクトンオイル)を1日40~80gの摂取とします。
がん予防効果があるω3不飽和脂肪酸(DHAやEPA)を多く含む魚の油を多く摂取し、調理に、αーリノレン酸が、なたね油10.2%・くるみ9.0%・大豆油7.5%・エゴマ油45%・亜麻仁油55%等の多く含む食用油、オリーブオイルを用いるようにします。
食物繊維やビタミン・ミネラルが豊富で積極的摂取が進められ糖質の少ないキノコや海草(わかめ、もずく、など)やおからを食材に使用することも有用です。腸内環境を良くし便秘を防ぎます。
脂肪をグリセロールと脂肪酸に分解する消化酵素のリパーゼの製剤を脂脂肪の多い食事の後にすることによって、さらに脂肪酸の代謝を促進します。膵消化酵素補充剤のリパクレオンを推奨しています。
中鎖脂肪酸はカルニチンがなくても肝細胞のミトコンドリアに取り込まれますが、植物油の多くやオリーブ油、ラード・牛脂などの長鎖脂肪酸は体内の脂肪を燃やすカルニチンが必要です。
アルコールは糖質の少ないウイスキーや焼酎のような蒸留酒や糖質フリーの発泡酒などであれば糖質制限の観点では問題ないのですが、アルコール自体ががん細胞の増殖を刺激しますので、がん患者さんはアルコールの摂取はできるだけ控えるべきです。
以上のような体内のケトン体産生をわざと増やすような食事療法を行うと、最初の1週間くらいは、脂肪が多いと食後に腹痛がきたり、便秘になったり、倦怠感が出てきます。しかし、食物繊維を多く摂取し消化酵素を利用すると、そのような不快な症状はほとんど経験しなくなるといわれます。
食事療法として体力も栄養状態も悪化させない「ケトン食」です。これは糖類の摂取を極端に減らし、脂肪を多く摂取しケトン体を産生させるという食事で、てんかんの食事療法として確立しています。中鎖脂肪酸からケトン体を作る経路は糖質の影響をほとんど受けずにケトン体が多量に産生します。
ケトン食療法はアルツハイマー病やパーキンソン病や脳卒中等を原因とする脳神経細胞障害の進行抑制、抗癌にもと広範囲に用いられています。ブドウ糖を絶てばがん 細胞は死滅するともいいます。
しかしながら血中のケトン体が増加した状態のケトーシス(ケトン症:ketosis)では、ケトン体のアセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸は酸性が強く血液や体液のpHが酸性になった状態をケトアシドーシスKetoacidosisと言います。
糖尿病性ケトアシドーシスは主に1型糖尿病患者に起こり、インスリンが不足した状態で脂肪の代謝が亢進し、血中にケトン体が蓄積してアシドーシス(酸性血症)を来たし、ひどくなると意識障害を引き起こし、治療しなければ死に至ります。
このように糖尿病の人では血液中のケトン体濃度の上昇は糖尿病の悪化を示すサインとして知られます。
ケトンKetone(R-CO-R')は、1831年に木酢から得られた酢酸カルシウムを熱して生成されるアセトン(CH3-CO-CH3)に由来しています。
アルコールは、水酸基の結合する炭素原子の種類によって3種に区別しケトンは、第二アルコールの酸化生成物で植物より精油する成分で神経の刺激性が強い物質です。
体内ではアルコールは毒物として、何よりも優先して肝臓で分解し、その間同じ補酵素を使う糖新生(乳酸やタンパク質を分解してブドウ糖を作ること)や脂肪代謝のような大切な生理作用が行なえないのです。
その結果アルコールによる低血糖、乳酸アシドーシス、脂肪肝を起こすことがあります。
アルコールの代謝はアセトアルデヒトとなって、さらにそれが酸化されて酢酸に分解され代謝経路のTCAサイクルに入り最終的に二酸化炭素と水に分解していきます。この過程で生じるエネルギー7kcal/1gが体の各組織の活動に利用され特に筋肉や心筋のエネルギー源として、酢酸を利用しています。
ケトン体をエッシェンシャルオイルで8%以上含むものの皮膚への直接塗布を禁止しています。カルボン(キャラウエイ、ディル、スペアミント)、カンファ(ローズマリー)、メントン(ペパーミント)などがあります。
ケトン体Ketone bodyとはアセト酢酸、β‐ヒドロキシ酪酸、アセトンの三つを総称しています。
ブドウ糖が枯渇した状態で脂肪酸が燃焼するとき肝臓ではケトン体(アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸)という物質ができます。
ケトン体は水溶性で細胞膜や血液脳関門を容易に通過し、骨格筋や心臓や腎臓や脳など多くの臓器に運ばれ、これらの細胞のミトコンドリアで代謝されてブドウ糖に代わるエネルギー源として利用しています。
特に脳にとってはブドウ糖が枯渇したときの唯一のエネルギー源となりうるのです。ケトン体は体に悪い物質と思われる方が多いと思います。しかし実際は、インスリンの働きが正常である限りケトン体は極めて安全なエネルギー源でもあります。
良くも悪くも働くケトン体は脂肪分解作用を有し、うっ血を和らげ、粘液の流れをよくします。
糖尿病の人では血液中のケトン体濃度の上昇は糖尿病の悪化を示すサインとして知られます。
ケトン性低血糖症の場合大変危険ですので、体がケトン食療法に耐えられるか、厳重な管理のもとで行わなければなりません。
脂肪酸は脳に入ることが出来ないので、脳を動かすエネルギーはブドウ糖だけです。
ご愛読戴きましてありがとうございます。よりよい情報をお届けしてまいります。
(初版2020,2,1)