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静寂を受けとめる背中*ホーネック*読響

2008-02-11 18:46:04 | きく
コンスタンティン・フローロスという人の『マーラー 交響曲のすべて』によると、交響曲第2番の演奏において第1楽章と第2楽章の間には「少なくとも5分間の」休憩を入れるようマーラー自身の指示があったのだという。
わたしが昨日、聴いた第2番の演奏では具体的な5分という数字には至らないであろうけれど、聴衆が1楽章の終わりでふっと息を抜き再び次の音への期待へ神経が集中されるには必要充分で絶妙な間だったように思う。音楽以外のなにものかが忍び入ってきたような会場内のざわめきが静まりかえるまで、人々の神経が一点に集中されて行く空気が手に触れて理解できるかのような静寂に浸されるまで、指揮者のマンフレッド・ホーネックの腕は上がらなかった。まるで静寂に音があるように、客席に見せた背中がじっとその無いはずの音をききとっているようだった。
プログラム「今月のマエストロ」では声の小ささを巧みに使う噺家の芸を引き合いに出し、聴くということのより深みを経験することができる音の魔術師としてホーネックが紹介されているけれど、第2楽章クライマックス部分に入る前(はたしてどこだったかCDを聴いてみても確認できない)の、小さな小さな弦の音に耳を澄ましステージに向かって上体が前のめりになっていく感覚が起こったことを思えば、なるほど魔法をかけられたのかと腑に落ちる。

特筆したいのは、
第4楽章アルトの声は素晴らしかったこと。
ヴァイオリンの音があまりに美しかったこと。

2月10日(日)18:00開演
サントリーホール

マーラー 交響曲第2番ハ短調

指揮:マンフレッド・ホーネック

アルト:マルティナ・グマインダー
ソプラノ:薗田 真木子
国立音楽大学合唱団

読売日本交響楽団