どこでも元気

　①私は屋久島に縄文杉を見に行った。
　　　一般道からトロッコ道を歩くこと二時間半、
　　　そこから這って登るような山道をさらに二時間登った。
　　　ひいこら登っていると後ろから
　　　「ついさっき歩き始めました」みたいな顔をしたおばちゃん達が
　　　陽気にカラカラ笑いながら私を追い越していく。
　　　通り過ぎざま聞こえた会話は
　　　「近所の何々のおじいちゃんが病気」という話題だった。


　②私は冬の伊吹山に登っていた。
　　　途中から天気が崩れ、横殴りの吹雪の中
　　　友人達と励まし（怒鳴り）あいながら
　　　山頂を目指していた。三時間歩いて辿り付いた
　　　頂上には人っ子一人いなく
　　　普段は開いているはずの売店も閉まっている。
　　　真横に積もる雪、途方に暮れる私たち。
　　　近くのお堂の鍵が開いていたのでそこに転げ込み
　　　呆然と天気の回復を待っていたら
　　　「裏庭をちょっと散策」みたいな顔をしたおばちゃん二人が
　　　お堂の外でカラカラ笑いながら雪を避けている。
　　　中に招き入れ、お互いストーブで昼食など作りながら
　　　聞こえてきた二人の会話は
　　　「うちの主人が高血圧」という話題だった。



結論・おばちゃんはどこでもすごく元気で
たいてい近所のお年寄りか、ご主人の病気の話をしている。
かなわないはずだ。