<グラシェ谷を下る>
ツールドモンブラン(14);2日目(2);グラシェ谷からモッテ小屋へ
(アルパインツアー)
2011年7月16日(土)~24日(日)
第4日目;2011年7月19日(月)(トレッキング2日目)
<第2日目の地図>
■グラシェ谷
■モッテ小屋
<長閑なグラシェ谷>
■プーのコルを出発
素晴らしい展望を楽しみながら,プーのコルで一休みした私たちは,8時14分に再び歩き出す.ここからは緩やかで長い下り坂になる.
ここから,標高差約900メートル,ほぼ東へ向かう下り坂が続く.多く名谷である.地図によると,グラシェ谷(Glaciers)というらしい.谷の向こうには氷河に覆われた尖鋒が見えている.素晴らしい展望である.路傍の至る所に,紫色の可愛い花が咲いている.残念ながら,花オンチの私には花の名前など全く分からない.
地図を再び確かめる.
暫くの間は.ツフ川(発音は不正確;Rau des Tufs)の支流の右岸沿いに下っていくが,やがて2回ほど川を渡ってから,ツフ川の左岸を高巻きしながら下っていくようである.
等高線の混み具合を見ると,どうやら単調な下り坂の連続のようである.
<もうすぐ小さなコル>
■尖鋒を眺めながら休憩
前方に氷河を抱く尖鋒を眺めながら,緩やかな砂利道を下り続ける.
そして,8時50分,小さなコルで休憩を取る.目の前の尖鋒を眺めながらの休憩である.私はこの眺めを忘れないように,急いでノートに尖鋒の姿をスケッチする.
■長閑な湿地帯
9時丁度に,小さなコルを出発する.相変わらず下り坂が続く.
何本かのクリークを渡る.私の地図には載っていない小さな支流である.辺りは次第に湿地帯になる.
広々とした谷の両側には峻険な山が聳えているが,私たちが歩いている湿地帯は,至って長閑な雰囲気である.ところどころに地糖を連想させる池が連続している.水辺には白い小さな花が沢山咲いている.
<湿地帯の水辺に白い花が咲いている>
■グラシェ村を見下ろす
広い谷の左岸沿いに下る道をノンビリと歩き続ける.舗装はしていないが良く整備された砂利道である.
やがて進行方向右手(南東)の眼下に数件の建物が見え始める.
現地ガイドのクリストファさんが,私たちに大声で説明する.
「・・あそこに見えているのがチーズ工場です.昨日,牧場で見た××(品種名は聞いた途端に忘れた)という牛の牛夕からチーズを作っています・・・あそこを見学しましょう」
地図で場所を確かめると,どうやらグラシェ村(la Ville des Glaciers;標高1780m)という所らしい.
<グラシェ村を見下ろす>
<チーズ工場見学>
■草藪の土手をショートカット
クリストファさんが,
「では,出発します.本当の道路は大きく曲がりくねっていて長いので,ここからショートカットします・・・」
と言う.そして,かなり急な斜面を適当に下り始める.草ぼうぼうの斜面で踏み跡のような,そうでもないようなところを,適当に下り続ける.
足許が悪く,しかも夏草が生え茂っているので,随分と歩きにくいが,一同,半ば面白そうに,そして,半ば迷惑そうな顔をして,大きくカーブして下まで続いている道に降り立つ.正直な所,本来の道に降りて,ひとまず「ホッ」とする.
今度は少し上り勾配の本来の道を,ほんの100メートルほど歩いて,10時47分にチーズ工場に到着する.
先ほどの急な土手下りで,手こずった方々が居られたために,列が長くばらけてしまった.そこで,最後の人が到着するまで,数分の間,工場入口で待つ.
<チーズ工場>
■雨が降り出す
石を積み上げて津凝った小屋がチーズ工場である.どこの国の人か分からないが,ヨーロッパのどこからか来られたツアー客と鉢合わせになる.せまい工場なので,彼らが見学を終えるまで,外で待っている.
待っている間に,困ったことに,雨が降り始める.
■牛乳の濃縮釜
ようやく工場の中に入る.
最初の部屋では,風呂桶としても十分使えるほどの大きな鍋で牛乳を濃縮している.中年の男性が竈に薪を放り込んでいる.
部屋の中は釜焚きの煙が充満していて,ひどく煙い.
クリストファの説眼によると,この釜には約500リットルの牛乳が入るそうである.この500六トルの牛乳から45~50キログラムのチーズの塊が出来るとのことである.
この工場の生産量は,この塊を1日に6個だという.
<牛乳を濃縮>
■攪拌釜
隣の部屋に入る.10畳ほどの狭い部屋の入口近くに攪拌釜がある.この釜で濃縮牛乳を攪拌してチーズに仕上げるようである.
部屋の片隅に,今日作ったチーズの塊が数個置かれている.
<攪拌機> <製品のチーズ>
<モッテ小屋を目指して>
■降りしきる雨
11時04分,チーズ工場の見学を終える.
雨が激しくなり始める.仕方なく雨具上下を着用する.リュックにもザックカバーをかぶせる.さらに雨傘をさして,歩き始める.
私たちはグレシア川(発音不正確;Glaciers)左岸で川より少し高い所を北東に向かって歩き続ける.道幅が結構広い砂利道が続く.終始緩やかな登り坂である.かなり強い向かい風が吹いてくる.
傘を射していると大変な抵抗を感じる.傘が風を受けて,グラグラと揺れて,骨が折れるのではないかと思うほどである.
もはや地図を見ることも,写真を撮ることも出来ない.ただ,ただ,黙々と歩き続けるしかない.
<チーズ工場を出発>
■モッテ小屋に到着
ますます向かい風が強くなってくる.さらに上り勾配の傾斜も幾分きつくなる.雨傘に受ける風雨に逆らって歩くのは結構辛い.まあ,その内にモッテ小屋に到着するだろうと思いながら,我慢して歩き続ける.
降りしきる雨の中,時計を見るのもままならないし,ノートに記録することもできないが,11時30分頃,グレシア川の支流に架かる橋を渡る.
橋からほんの少し歩いた所の三叉路を左に進む.人一人がやっと通れるほどの狭い道が続く.枝道に入ってから,さらに強い風が吹き荒れる.その風に煽られて,私の傘の柄がすっぽ抜けてしまう.残念至極.
壊れた傘を棄てるわけにもいかないので,そのまま左手でもったまま歩き続ける.実に惨めである.そして,11時33分,ようやくモッテ小屋(Chalet-Ref des Mottets,標高1870m)に到着する.
<モッテ小屋に到着>
■モッテ小屋の食堂で昼食
モッテ小屋の建物は広場を囲むように「コ」の字型に建っている.
とにかく一刻も早く雨風をしのぎたいので「コ」の字の縦棒の位置にある建物の玄関に避難する.ところがこの玄関が狭い上に,先着の日本人グループがいて,落ち着いて雨を凌ぐことができない.同行者のどなたかが,
「・・・ここで昼食ってガイドが言っていたけれど,どうするんだろう・・」
独り言のように言う.
この独り言を聞いた先着の日本人が,
「ここの食堂は予約していないと入れませんよ」
と不吉なことを言う.
どうなるんだろうと心配しながら,雨を凌いでいると,クリストファさんがヒョッコリ現れて,
「これから昼食にしましょう・・・こっちへ来て下さい」
と私たちを「コ」の字の1画目の建物に誘導する.
建物の中は食堂になっている.私たち以外にも沢山の先客が食事を摂っている.
建物内部の湿気と熱気で,眼鏡が曇るだけでなく.デジカメの調子もヘンテコになる.まるで湯気が立ちこめる風呂場を撮ったような写真しか撮れない.
それでも,ようやく雨が降っていない場所で,椅子に座ることができたので,気分的にも大分落ち着いてくる.
スープ,色々なネーベンを盛りつけた大皿,それに食後のシャーベット.旨い不味い歯はともかく,これで昼食は終わりである.
<湿気と人混みでムンムンする食堂>
<スープ>
<メインディッシュ>
<デザート>
(つづく)
「ツールドモンブラン」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/7d12c995c9a7b065d441adb797ffcc23
「ツールドモンブラン」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/ec1a8588999ad57da2e8f8ce62fce12e
「ツールドモンブラン」の目次
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/4a4c5fb759853b8b140c4d3944095d8c
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[編集後記]
2011年9月11日(日) 快晴 暑い1日
昨日の学会での報告のために,私は神経を使い果たしてしまった.そのために今朝は,どうにも気分的にだるくて何もする気にならない.
でも,今日は以前から計画していた山旅スクール5期の皆さんと大船から柏尾川川岸,藤沢の新林公園,片瀬古道,江ノ島道を歩く予定がある.何となくだるい気分を押して,朝,9時30分から16時頃までお付き合いした.このときの状況は,別途,このブログで纏めるつもりである.
夕方,帰宅.
玄関を開けると,
「・・・さっさと宿題をやっちゃいなさい・・」
という金切り声が聞こえてくる.
北鎌倉に住む娘が孫娘を連れて我が家に来ている.
孫娘の宿題はさておいて,賑やかな夕食.その後,テレビのサザエさんを見てから,娘親子は自宅へ引き上げる.
私は,家の中が静かになった途端に眠くなる.
今日は凸凹があまりないコースを10キロメートルほど歩いただけだったが,何となく疲れた.
「明日は,終日,自宅でノンビリ過ごそう・・」
そう思いながら就寝する.
こうして,貴重な1日がまた終わってしまう.
少年老い易くガクガクしちゃうよ・・・・
(愚痴おわり)