人と意見が食い違うことは、日常的によくあることです。そして、その延長線上に、喧嘩や関係の悪化があります。人との関係が悪くなるの原因をイスラームでは、「欲が勝ってしまうこと」と教えています。
例えば、もし自分の目の前で、配偶者や友人が自分に対して犯した間違いが発覚した時、あなただったら、どう対処するでしょうか。
そこには3つの選択肢があります。
1. 彼の間違いを批判し、あなたの方が正しいことを相手に理解させ、自分の正しさを証明し、なぜそんな間違いを犯すことができるのか、信じられない、と彼を責める。その結果、お互いの心の中に嫌悪感が残り、喧嘩へと発展する。
2. その場を収めるため、彼を非難せず、許し、お互いに嫌な思いをしないように、彼を慰め、励ます。アッラーのことは考えず、ただお互いの気持ちが悪い状態ならないように、という目的で、怒らないようにする。
3. 自分の正しさを証明することも、相手の間違いを批判することも考えず、ただ、どうしたらアッラーが自分をもっと好きになってくださり、満足してくださるかだけを考える。
イスラームでは、人間族関係が悪くなることの根本的な原因は、アッラーが自分をもっと好きになってくださるように、という高い目標を持って関係を築いていないことだと教えています。そういった人間関係は、現世で、敵同士になってしまう可能性があり、また、それを改善しなければ、来世でもお互いが敵となってしまいます。そのことについて、クルアーンでアッラーはこうおっしゃっています。
【その日(最後の審判の日)、主を畏れる者を除いては、(親しい)友も互いに敵となろう。】クルアーン 金の装飾章43-67
しかし、このことを頭で理解していたとしても、実際に、相手から悪い言葉を投げかけられたリ、ひどい仕打ちを受けたりすれば、怒りが湧きます。その時はどうすればいいのでしょうか。
自分の「怒り」を観察する!?:
まず、自分の怒りの正体を観察することが大切です。
自分が怒っているのが、自分と相手がもっとアッラーに好かれるためなのか、もしくは、ただ、自分の自我がそれを嫌って、怒ることを要求しているだけなのか。
もしただ自分の欲が怒ることを求めているだけならば、アッラーのご満足がある行為は、相手にゆずること、自分の権利を放棄することです。(放棄できるのは、自分個人の権利だけです。詳しくはこちらの質問⑤をご覧ください)
本当にアッラーのご満足だけを求めるのであれば、相手にゆずることができます。相手が自分の権利を害した、自分の尊厳を傷つけた、自分を軽視した、ないがしろにした時、そのときこそ、アッラーのご満足を求める人がどう行動するのかが現れます。
人は、欲に支配された時、理性による分別を失います。
正しいことを間違っていると思い、間違ったことを正しいと思いこみます。そのため、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はこうおっしゃっています。
≪ある男が預言者(彼に神の称賛あれ)のもとを訪れ、彼が天国に行くためには何が必要かを尋ねたところ、
預言者は彼に言いました。「怒らないことだ。」≫ブハーリー伝承
ここでいう「怒らないこと」というのは、感情ではなく、行動です。
つまり、「怒りを行動に移さないこと」という意味です。
怒りを覚えること自体は、すべての人が感情として感じるもので、どんな人でも怒りを覚えることはあります。アッラーは、人間に不可能なことをしなさい、とはおっしゃいません。怒りを感じないことは不可能ですが、怒りを実行に移してしまわないことは不可能ではありません。
もし相手に対して自分の内側に怒りを覚えた時には、まず、しなければならないことは、「話さないこと」です。なぜなら、怒りを内側に抱えている状態で、どんなに慎重に言葉を選んで話したとしても、必ず、間違うからです。これは、ただ「黙る」ということではなく、怒っている時にすぐに口を開かず、怒りが引いて、冷静になってから、きちんと必要なことを相手に伝え、丁寧に話をする、ということです。ただ、怒りに任せて口から出た言葉は、暴力になりかねません。
なぜなら、怒っている時には、理性による「分別」が失われているからです。
少し考えてみてください。今までに、怒った時に言ってしまったことを、後から後悔したことはないでしょうか。
怒りが去ってから考えると、怒った時に軽々しく口にしてしまったことをとても後悔することがあります。では、その気持ちは、怒っている時にはどこに行っていたのでしょうか。怒りが覆い隠してしまったのです。怒りは、欲の中の軍隊のひとつで、それが自分を支配すると、分別や理性を覆ってしまいます。
怒った時にすること:
そのため預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はこうおっしゃっています。
≪あなたがたが怒った時に、立っていたら座りなさい。
おそらく怒りは消えるでしょう。
あるいは横になりなさい。≫アハマドの伝承
イスラーム的な怒りのコントロール方法には、他にもウドゥー(お清め)をすることなどがありますが、それについてはまた次回に、詳しくお伝えしたいと思います、インシャーアッラー。
預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、こうおっしゃっています。
≪「本当の強さは戦う人の力にあるのではない。」
すると彼らは「アッラーの使徒よ、いったい誰にそれがあるのですか?」と尋ねた。
すると彼はこう言った。
「それは怒った時に自分自身を制御することが出来る者である。」≫ムスリム伝承
私達が、怒りをコントロールして、アッラーのご満足を得ることができますように。
預言者(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の人徳 クルアーンの奇跡 ①
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