誰かが自分のことを批判した時、すぐさまシャイターン(悪魔)は、
「あなたの権利を主張すべきだ。言われもない中傷を取り除くべきだ!」
と、横で旗を振って、相手に応戦することを応援してくれます。シャイターンの目的は、議論して、二人の間に敵意を植え付け、二人ともまとめて地獄に連れて行くことです。
しかし、批判され悪口を言われてもそれに応えず、反対に善いことで返せば、アッラーの元での彼の地位はどんどんあがっていきます。
ある敬虔な学者は、ある男からひどく批判され、あることないこと自分の悪口を、人々に散々言いふらされていました。そのとき、彼のしたことは、批判に応戦して言い返すことでも、相手が嘘をついていることを、人々に釈明することでもありませんでした。
彼は、自分の悪口を言いふらしている張本人の男の家に、ナツメヤシの詰め合わせセットを持って行き、彼に贈り物として差し出しました。
自分が悪口をさんざん言いふらしている相手からプレゼントをもらって驚いた男が、思わず、
「私が何をあなたにしてきたか、知らないわけではないでしょう?!」
と言うと、彼はこう言いました。
「本当に私はあなたに感謝しています。
私には本当に善行、天国に行くためのポイントが、とても必要です。
あなたは私に、なかなか貯まらないその善行ポイントを、いつもくださるので、私も何かあなたに差し上げなければ、と思ったのです。
本当にどうもありがとうございました。」
この学者のふるまいは、クルアーンにこうある通りです。
【 善と悪とは同じではない。(人が悪をしかけても)一層善行で悪を追い払え。
そうすれば、互いの間に敵意ある者でも、親しい友のようになる。 】クルアーン41-34
この学者は、嫌味で相手に贈り物をしたわけでも、善人ぶるために我慢して、イヤイヤそういう行動をとった訳でもありません。
では、どうして、彼はこんな不思議な行動をとったのでしょうか??
この学者は、ただ、アッラーが自分をどうご覧になっているか、その一点だけのことを考えたのです。
悪口を言われ続けている状態は、自分にとっては、アッラーから、忍耐のご褒美がもらえるばかりで、何も損をしていることはありません。
アッラーはすべてをご存知で、必ず、それを現世でも来世でも、大きなご褒美として、確実に返礼してくださるからです。
自分に対する人の評価よりも、アッラーが自分をどう思っているか、アッラーの自分に対する評価を優先することにより、害を仕掛ける相手に対して、善いことで返すという「クルアーン的ふるまい」がとても簡単になります。
預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はおっしゃいました。
《 誰でも、自分が間違っているときに議論を止める者は、アッラーが、彼のために、天国の下層に家を建ててくださいます。
また、誰でも、自分が正しいときに議論を止める者は、彼のために、天国の中間層に家を建ててくださいます。
また、だれでも人格を美しくした者は、彼のために、天国の最上階に家を建ててくださいます。 》 ティルミズィー伝承
アッラーが私たちの人格を美しくしてくださいますように。