風は温いが吹かぬよりましと、汗をかきながら歩く先に、やすらぐ木陰があった。
木立の合間から見えるのは、品の良いビルディング。
その向かいは、小さく静かな前栽で、彦根藩主、井伊家の中屋敷跡の道標があった。
さらに奥へと小道を行くと、木々とせせらぎが人を包み込む庭園になっている。
ここは、井伊家中屋敷跡であり、明治初期には伏見宮邸だったが、戦後、歴史ある地を残そうと鉄鋼王と呼ばれた大谷米太郎氏が買い取った。
初の東京オリンピックを前に、ホテル建設が進められ、現在はホテルニューオータニの庭園となっている。
ホテルとなってからは、奥に滝も作られた。
庭園は一般開放されており、人々の憩いの場所となっている。
一巡りして初めの道標の方へ戻る道すがら、来る時はいなかった猫に出会った。
その顔、まるで東照宮の眠り猫である。
さすが、徳川の忠臣であった井伊殿の屋敷跡であるな。不思議な縁だ。
暑い昼下がりに、涼しい場所を見つけての昼寝であろう。
お邪魔しました。