この辺りも、坂道の多い町だ。
千鳥ヶ淵の西側、五味坂から行人坂や東郷坂を通って市ヶ谷駅へ。
五味坂の上に、滝廉太郎の居住地跡の碑があった。
この時季、武島羽衣の詩と共に美しき調べが思い浮かぶ。
まさに今相応しい歌、『花』(組曲『四季』の第一曲)は、滝廉太郎の作曲だ。
そこから南側に見える下り坂は、袖摺坂。
昔は、行き交う人の袖が触れるほど狭い道だったという。
ここは、桜の木はないが、歌の情景を思い浮かべる桜巡りの一つに数えた。
さらに、途中で番町文人通りに少し入ってから、行人坂へ出る。
行人坂は法眼坂の一部で、昔、斎藤法眼または宅間法眼の屋敷があったことが名の由来だという。
行人は行者や学僧のことで、法眼は僧の階位だが、仏師の宅間法眼が関係するのだろうか。
しかし、ここは旗本屋敷町で宅間上杉氏もおり、様々に混同した説が出ている気がする。
参考:千代田区「千代田区内の坂」/麹町わがまち情報館「連合町会町域案内」・番町文人通り案内/
大石学『坂の町江戸東京を歩く』/やさしいデジタル地図江戸古地図
行人坂を下ると、すぐに次の上り坂になる。
これが東郷坂。
東郷坂の脇に、東郷元帥記念公園がある。
その名の通り、東郷平八郎邸があった所。
公園内では子供の遊ぶ傍らに、大きく枝を広げた桜が咲いている。
公園を横目に進むと、靖国通りに出る。
市ヶ谷駅近くのこの通りも、沿道に桜がいっぱいだ。