たまちゃんを放す日はお天気の良い日と、だいぶ前から決めていた。いきなりの野外生活で、びしょ濡れになった上に寒い、とかじゃあまりにもかわいそうだから。

りょうちゃんの頭や、

ママの肩に止まったり、





洗濯バサミをクチバシで持ち上げ、脚で押さえてツンツンするたまちゃん。これは、虫を捕まえて食べる動作そのもの。遊びながら練習してるんだね。


それから、ケージの蓋をそっと開けた。

それに、暖かい日は、きっと虫もたくさんいるだろうしね。
天気予報を見ると、これから1週間は晴れか曇りが続きそうなので、8月1日の土曜日に、たまちゃんを放すことに決めた。
決めたけど、りょうちゃんは、金曜日の夜、
「いやだ〜、あと1週間してからがいい〜😭」
と大泣きした。
でも、私が調べたところ、野鳥はクチバシの黄色いのが残ってるうちなら、同種の若鳥たちがみんなで面倒を見てくれるから、クチバシの縁が少しでも黄色いうちに放すと良い、とのことだった。
さらに、放鳥できるポイントとして、自分で餌を探してたべられる、家で放した時に、天井近くをグルグルと何周も飛べる、といった目安がいくつかあって、それらをほぼクリアしていた。だから、そういった、今、たまちゃんを放すべき理由を説明したら、渋々ながらも、りょうちゃんも土曜日の朝に放すことを承諾してくれた。
金曜日は、たまちゃんとの最後の夜。
りょうちゃんが、
「たまくんと、たくさん遊びたい」(ちなみに、りょうちゃんは、たまちゃんが男の子だと信じているので「くん」呼び)
と言うので、家に帰るとすぐに、たまちゃんとピー君を部屋に放した。
一緒に遊ぶと言っても、いつもたまちゃんは、放すとすぐに高いところに行ってしまうので、眺めたり、
「飛び方がうまくなったね‼️」
なんて話したり、ピー君と一緒に洗濯のピンチハンガー に止まっている様子を見たりするくらいしかできない。
ところが、この日の夜は、こんな感じで、

りょうちゃんの頭や、

ママの肩に止まったり、




ママの髪の毛の中に潜り込んで遊んだりした。
さらに、りょうちゃんが両手を大きく広げて
「たまくん‼️」
と呼んだら、初めてりょうちゃんのところに飛んで来たりした。りょうちゃんは、これがすごく嬉しかったらしかった。
さて、たくさん遊びたいと言っても、あっという間に夜9時になり、たまちゃんはとっくに寝てないといけない時間になった。
ケージに入れるとすぐに出たがったけど、タオルをかぶせたら大人しくなった。
翌朝は、りょうちゃんとジイジと3人で放しに行くことにしていたので、私とりょうちゃんも早めに寝ることにした。だけど、布団に入ったら、りょうちゃんが、
「たまくんがいなくなるの、寂しい。せっかく呼んだら来るようになったのに〜😭」
と号泣し始めた。
そうだね、そうだね、と聞きながら、だけど、呼んだら来るほど人に懐いてしまうからこそ、もう一刻も早く放さないといけないんだよ、と話した。たまちゃんが自然の中で生きていく上で、人への警戒心をなくしすぎてしまったら、誰かに捕まってひどい目に遭わされたり、かわいいからとカゴに閉じ込められたりしてしまうかもしれないから。
りょうちゃんは、散々泣いて、そのまま眠ってしまった。一方、私は、たまちゃんのことを思って、なかなか眠れなかった。
翌朝は、6時に家を出ることにしてたので、5時20分頃に起きてたまちゃんに餌をあげ、支度をし、りょうちゃんを起こして、さて、家を出ようとしたら、なんと雨が降っていた。
でも、ジイジに連絡したら、すぐに止む予報だとのことだったので、1時間ほどたまちゃんを放し、家で時間を潰してから出かけることにした。

洗濯バサミをクチバシで持ち上げ、脚で押さえてツンツンするたまちゃん。これは、虫を捕まえて食べる動作そのもの。遊びながら練習してるんだね。
せっかくなので、ピーくんも起こし、最後に一緒に遊ばせた。

2羽とも、なんて可愛いんだろう💕
ピーくん、すごく嬉しそうだった。
たまちゃんが帰って来なかったら、どう思うんだろうね。。。
7時過ぎには無事に雨も止み、放す予定の山の公園に向かった。たまちゃんの門出を祝うかのように、キレイな青空が見え、日の光が降り注ぎ、気温も上がってきたので、とても嬉しくなった。りょうちゃんが、
「ママ、春みたいだね😄」
と言った。
途中、ジイジと合流し、公園に行くと、山の下の方はカラスがたくさんいて、とてもここじゃ放せないねと、公園の上の方に向かった。
幸い、上にはスズメをはじめ、小鳥がたくさんいた。りょうちゃんが、たまちゃんを放す場所としてスズメがたくさんいる東屋の下を選んだ。そこならケージを出て、いきなりカラスに襲われることもないだろうと思ったんだと思う。
りょうちゃんは、たまちゃんの入ったケージを見つめ、それから上を見上げた。

それから、ケージの蓋をそっと開けた。


たまちゃんは、ケージから出て空を見上げると、すぐに飛び立った。そして、いったん東屋の梁に止まり、それから外に飛び出して、木の中に紛れ込んだ。
りょうちゃんは、すぐに走って追いかけ、木の下に立つと、
「あそこにいるよ‼️」
と叫んで、私も「どこどこ?」なんて言っていたが、そのうち、
「たまちゃん、たまちゃん」
と呼びながら、ワーワー泣き出した。
夕べやったみたいに、両手を大きく広げて、そうすれば、昨日みたいにたまちゃんが自分のところに来てくれると思ったんだと思うけど、もうたまちゃんは、こっちに来ることはなかった。
完全に葉っぱと同化してて、知らない人が見ても絶対に見つけられないだろうというくらい、木の中に溶け込んでいた。そこにいるのが自然だった。
りょうちゃんの泣いてる姿があまりにもかわいそうで、見てられないくらいだったけど、何度呼んでもたまちゃんがこっちに来てくれないと分かっただろうな、と思った頃に、「じゃあ、行こうか」と声をかけたら、りょうちゃんは、
「たまくん、ありがとう‼️」
と泣きながら叫んだ。
公園を後にし、自転車に乗ってる間も、りょうちゃんはずっと泣いていたけど、しばらくしたら泣き止んで、でも、また思い出しては泣いていた。
夕方、たまちゃんに会いに行きたいと言うので、公園に行ってみたけど、もうたまちゃんの姿は見つけられなかった。
りょうちゃんは、再び泣いて、でも、少ししたら泣き止んだ。
なんだか私も疲れてしまったので、この日は外で夜ご飯を食べてから家に戻った。そうしたら、りょうちゃんは、玄関を入った途端に、
「たまくん、どこにいるの? たまくん、どこにいるの?」
と、また泣き出した。
泣き止んでは、また泣き、布団に入ってからも、たまちゃんがどんなにかわいかったか、もっと一緒にいたかった、ほかの公園も見せてあげたかった、一緒に車で出かけたかった、ピーくんもかわいそうだ、と1時間くらい泣いて、泣きながら眠ってしまった。
りょうちゃんが、こんなにずーっと泣いていたのは、生まれて初めてだったんじゃないだろうか。
だけど、難しい野鳥の雛を育て上げ、ちゃんと放せるところまで、たまちゃんが大きくなれたのは、りょうちゃんが拾って、どうにか育てたいと頑張ったからだ。だから、りょうちゃんは、自分のしたことに自信を持っていいし、いつか、たまちゃんとの良い思い出だけを思い出せるようになるから。その時は、育てるのがどんなに楽しくて、たまちゃんがどんなに可愛かったか、そんな話をママと笑って話そうね。
たまちゃんは、野生で生きる強さを持っていて、りょうちゃんに拾われる幸運も持っていた子だ。自分より大きなピーくんに飛びかかっていけるし、ケージから出て飛びたいという気持ちがすごく強かった。
たまちゃんを放した公園には、シジュウカラをはじめとした小鳥がたくさんいて、虫も山ほどいる。きっと今ごろ、仲間と出会って、色々と学んでいるところだろう。自由に伸び伸びと、楽しく飛び回ってるよね。どうか、厳しい自然を生き抜いて、立派な成鳥になってほしい。そのことを、りょうちゃんもママも、心から願ってるからね‼️