福井7人の工芸サムライ

福井県にある国指定7つの伝統的工芸品の職人やモノづくりや産地、福井にまつわる事がらをご紹介します。

鯖江耳かきを一緒に開発していただいた社長が本を出版されました。

2019-07-27 22:48:57 | ブログ

デザイン会社側視点での鯖江耳かき開発事例

 

 

『小さな企業が生き残る』

会社の売り上げを5年で売り上げを12倍に増やした事例あり!これは私が所属していた会社の実例です。 

www.yumakumamoto.work

 苦境に陥った中小企業を再生させてきた生き残ってきた人達の話。優れた技術を持ちながら、メーカーの海外移転や後継者不足などの影響で 危機に瀕している中小企業は少なくない。今、オリジナル商品と それを実現するデザインの力によって復活する中小企業が注目されている。 仕掛けているのは、デザイン会社を経営するセメントプロデュースデザイン代表、金谷勉。 金谷が手がけた成功事例を通して、中小企業が生き残るための方法を解説する。 

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■著者:金谷勉
■編集:花澤裕二(日経デザイン)
■構成:佐藤俊郎
■ブックデザイン:小口翔平(tobufune)
■発行:日経BP社
■価格:本体1,600円+税
■ 発刊:2017年12月15日
■ ISBN:978-4-8222-5757-6

この本はクリエイターの方のために書いた本ではありません。 

デザインを語った本でもありません。
ただ製造業と共にデザイン業はあったと思うのです。 
各地の製造側の方に他産地で苦境から乗り越えた方の熱意と行動力を知ってもらう事で、製造業界の盛り上がるきっかけになればなと思ってます。 
相談に来られた方を一人ずつ救っていくには時間が足りない。 
手術しなくても、薬を処方することで助かる方もいるかもしれない。 
そういう「薬」になればと思いできる限り事例と処方箋を書きました。
製造業が良くなればデザイン業界にもいい風が吹く
製造側とデザイン側のきちんとした関係作りはまだまだできると信じています。
そのために必要な新しい職種も生み出したい。そんな想いです。 
各地の奮闘の裏側も合わせて皆さんの質問と合わせてセッション出来ればと思ってます。 大阪の製造業の方々のご参加お待ちしてます!

金谷社長プロフィール


Kanaya_profile3_Photo金谷 勉 Tsutomu Kanaya
1971年大阪府生まれ。京都精華大学人文学部を卒業後、
企画制作会社、広告制作会社を経て、1999年にデザイン会社「セメントプロデュースデザイン」を大阪にて設立。
企業の広告デザインや商業施設のビジュアル、ユニクロ「企業コラボレーションTシャツ」コクヨの博覧会「コクヨハク」星野リゾートアメニティ開発などのディレクションなどに携わる傍ら、自社商品の開発・販売を行う。
2011年からは、全国各地の町工場や職人との協業プロジェクト「みんなの地域産業協業活動」を始め、500を超える工場や職人たちとの情報連携も進めている。
経営不振にあえぐ町工場や工房の立て直しに取り組む活動は、テレビ番組『ガイアの夜明け』(テレビ東京系列)や『NHK WORLD』(NHK)で取り上げられる。
各地の自治体からの勉強会や講演の依頼も多く、年間200日は地方を巡り、京都精華大学や金沢美術工芸大学でも講師を務める。
初めての著書「小さな企業が生き残る」日経BPより発売中。
 


モノづくり関係者必見!鯖江ミミカキ誕生の秘話

2019-07-27 21:45:54 | ブログ

鯖江の材料商社を変えた鯖江耳かきのお話です

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モノづくり仕事に携わっている方は是非参考にしてください。
少しでもあなたのビジネスのヒントになればと願っています。

 スマッシュヒットとなった鯖江ミミカキの誕生には色々な思いがありました。

リーマンショックから新規事業の立ち上げ

2009年に発生したリーマンショックをきっかけに
鯖江の工場の若い経営者たちが「自分の商品を作り自分たちで販売する
という志のもと「鯖江ギフト組」という活動が始まりました。
私の所属していた会社ではカラフルなメガネ材料を扱っていたのでそれを基にアクセサリーブランドを立ち上げました。

カラフルな材料はこちらの記事から

www.yumakumamoto.work

 
鯖江の同志と毎年2月にギフトショーに出展し名刺交換した企業様を一軒一軒訪問売り込み、コラボ商品などを作れないか商談してきました。
今思えば多種多様のジャンルに片っ端から訪問したことが懐かしく感じます。

訪問した企業
  • 和装小物問屋(京都)
  • ボタン企画会社
  • 雑貨屋
  • TV番組製作会社
  • デザイン会社(東京、大阪)
  • お香屋(京都)
  • 温泉街
  • 美術館(箱根ラリック)
  • 工具屋 

我々の眼鏡業界では眼鏡小売店や仕事を一緒にしたメガネデザイナー、仕入れ担当者、問屋にも協力していただき、知り合いから少しづつ販路を広げていきました。
眼鏡業界はマツケリーの知名度や今までの付き合いから少しずつ販路が広がっていきましたが、異業種の販路開拓は苦戦しました。

断り文句
  • 所詮プラスチックでしょ?
  • なんでプラスチックがこんなに高いの?
  • 見た目はそこらのプラスチックと同じだね

 
などと今となっては商品しか説明してなかったのでセルロースアセテートとは?マツケリー(イタリアの製造工場)とは?鯖江とは?などと背景を説明すればよかったんだなと思います。
今ではその反省を踏まえて背景を話すようにしています。
みなさんも商品だけでなく商品になるまでのプロセスを語って共感してもらえると感触アップですよ。特に地場産地だと有効です。
余談になりましたが あるとき ふと思うことがありました

アクセサリー以外にこんな綺麗な材料を使った実用的なものはないなと

 アクセサリーの他にボタンやハンコを作りましたが材料費、加工賃が莫大にかかる割にはそれに似合わない製品になり葛藤を感じていました。あと自分が欲しいと思わないものを買う人はいないだろうと思いました。
もっとオシャレで実用的なものを、それなりの値段で作れたらなと。。。
しかし方法が見当たらず悶々としながらアクセサリー販売と本業の眼鏡の材料の卸の仕事を続けていました。

作ったもの
  • ボタン
  • ハンコ
  • 着物の帯留め
  • お香立て
  • 箸置き
  • iphoneケース
  • マドラー

人から話しを聞いては色々チャレンジしましたが自分のセンスのなさアセチの変形などで製品化にはならず。。
そして迎えたギフトショーで単独ブースを出す事となり上記のように方法が見当たらないので、主催者が用意してくれた

【3.11応援ギフト展示、プレス向け資料提出、ビジネスマッチング】

という全ての特典に応募し販路拡大と活路を見いだせればなと応募しました。
展示会場では200社以上と名刺交換し前年同様地道な営業を続けました。
ビジネスマッチングでは5社応募することができ5社全てオファーを出しましたが、、、1社しか僕たちのオファーを受けてくれませんでした。。。
その1社がセメントプロデュースデザインの金谷社長でした。
商談日を迎え、恐る恐る面談室に入るとパソコンの前でタイプを激しく打ち、10個ほどもあるタコ足USB充電器をパソコンに接続し携帯を充電されてすご腕IT社長でした。

挨拶するとすごく気さくな方で仲良くさせてもらっている福井のFACTRY900のメガネをされていてすごく親近感がわいたのを覚えています。

福井産のおメガネされていますね!』が第一声だったような。。

20分と限られた時間で当社の商品を紹介し、

販路開拓もしたいですが、この材料で何か作ってください!

とかなりザツにお願いしました。(今となっては笑話ですが社長は困ったと思います。)
そのあと金谷社長は当社のブースにも来てくださり少し談笑をしました。
そしてギフトショー会場をあとにし福井へ帰りました。

 

youtu.be


1ヶ月後にセメントさんに訪問しアセチの材料の説明をスタッフみなさんにさせて頂きました。

「アセチは結構しなる素材なんですよ」と説明した時にボキっと折れた事を今でもイジラれます(笑)。

その後,鯖江にもスタッフさんとお越し頂き当社の工場と当社の技術を見て頂きました。
それから、また1ヶ月あと位に東京で社長とお会いしアイデアを数点提示頂きました。
どれもやりたい商品でしたが 一番最初のページにミミカキがあったのです。

これはすごい!と。

これやりたいです!とおもわずお答えしました。
製造側からみても着眼点はさすがだなっと今でも思います。

着眼点のすごいところ
    • 材料は最小限 (材料の価格はアクリルの約3倍)
    • 極力投資をせずに商品化できる。(高価な金型が必要ない)
    • アセチ最大特徴の色柄が表現できる

当初は先端のチタン部分も全部アセチの一本化にしたかったです。
ですが、この材料は他のプラスチックに比べて柔らかく変形しやすいという欠点があるので耳の中で中折れする可能性があり、非常に危険でした。
今のデザインはアセチからチタン棒が突き刺さったように見えますがその当時は、いかにも棒を刺しましたみたいなアセチとの段差が格好悪く見えるので
先端を段差が出ない形状で強度のあるプラスチックで代替えしようとしました。
製造の町 東大阪市役所を訪問し成形プラスチック製造出来る会社様を紹介頂き、2日間かけて一軒一軒10社近く訪問しました。
現商品みたいにアセチ側に刺し穴をあけるのは決定しており、先端を強度のあるプラスチック製の差込棒をABS,PP,ポリカなどで作ろうとしました。
成形型屋、プラ企画会社、工場さんいずれも型代がものすごく高く、しかもプラ専門家や色々調べたら そもそもアセチに含まれる薬品(可塑剤)は
どのプラスチックとドッキングしても相性が悪いと。。。

万策尽きてセメントさんに訪問。。
それは。。。。 スタッフさんからの一言

メガネと関連してるんだからメガネの製法と一緒でいいじゃない?

はっ!全て解決する! 先端をメガネで使われている金属材料を使えば強度も材料も全部解決する!
その後は早く試作を作りたい一心で次の日には加工先に行き試作をお願いしました。
そこからは毎週とまでは行かないですがセメントさんに訪問し色決め、デザイン修正、試作提出と僕が望んでいた商品にやっと巡り会える!絶対製品化するぞ!と無我夢中であまり覚えていないですが奇跡の出会いから6ヶ月で商品化しました。
それは金谷社長曰く過去最短だったそうで振り回してごめんなさい。。でした笑

製造側で一番勉強になった事は市場に合った価格設定しそれに合わせた商品作りをすることです。
これだけ原価がかかったので上代はこれくらいね。という考えは製造側のエゴであって大半が市場に合いません
安くて良いものが世の中に溢れているので製造側も思った以上のコストダウン、企業努力が必要です。

それと今回最高のパートナーと出会えたことで気づいたことは自分の弱い点(デザイン、パッケージ、マーケティング)を素直に認めプロに任せるということです。

自社で全部できるのが理想ですが何日もかけてダサいデザインやパッケージを作るよりはその時間を買い、その上洗練されたオシャレなデザインを考えて頂けると考えたほうがよっぽど費用対効果があるということです。
ほとんどの方が気づいて無いと思います。
簡単の例えるならば、素人が作った映画見ますか?素人が作ったご飯にお金払ってまで食べますか?そういうことです。

ミミカキはものすごく贅沢な材料、製法を使っているのです


セルロースアセテート(綿花由来の樹脂)
 ・イタリアの職人が手作りで作成 
 ・アクリルの約3倍の価格
 ・キッソオ社でしか供給できない色を使用

ベータチタン
 ・芯先はバネ性のあるチタン合金を使用 
 ・純チタンに比べ約3倍の価格 
 ・福井で一番腕の良い眼鏡部品加工職人を使用

テンプル加工
 ・メガネのテンプルに芯を刺すのと同じ職人を使用
 ・鯖江に1台しかないバキューム式の加工マシンを使う
 ・3~4日かけてバレル研磨を行う(こんな感じだが水を使わない)

④先端メッキ
 ・陽極酸化というチタンに電流を流して色付き膜をつける
 ・鯖江で数社しか持っていない設備を使用

⑤cement/made in japan 刻印
 ・突起を付いた文字盤を押し付ける製法
 ・通常のシルク印刷より4倍の価格  型も4倍

 
オシャレなパッケージもついてくるんです。
ミミカキ箱


それに加えて目に見えないけど一番重要なセメントさんの優れたマーケティング
そんな商品です。

金谷社長が本を出されました。  

www.yumakumamoto.work

 セメントプロデュースデザイン様の協同企画した【鯖江ミミカキ】が
グッドデザイン賞を受賞したよ!

これも、全てセメントプロデュース様のおかげです!
あの時出会ってなかったら、一生関われない賞だっただろうね。
社長の器が広いから、本当は「セメント様の商品」なのに僕たちも便乗するのを許してくれる。
僕なんか器が小さいから、便乗を許すかどうか。。。?笑
いつかは恩返ししたいなー と思っているのでした。

www.g-mark.org

 
【追記】

 「sabae mimikaki」  
グッドデザイン賞、おもてなしセレクション、The Wonder5003冠いただきました。
セメント金谷社長と2012年に運命的な出会いがありこの耳かきを開発頂きました。
物事の考え方、見方など全てにおいて私の人生に多大な影響をいただきました。
この経験を今後の活動に活かしたいと思います。

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