asano.net

読んだ本の感想と旅行の日記を書いていきます。
後、その他なんかあれば・・・

52冊目:「沈まぬ太陽 五 会長室篇・下 」

2011-07-30 22:30:11 | 
総評:★★★★☆ 巨大な「力」
面白い度:★★★★★ 全編を通して面白かった
読みやすい度:★★★☆☆ 普通
ためになる度:★★★★★ 「現実」を知った
また読みたい度:★★★☆☆ 普通


最終巻です。
今までずっと読んできたが、この作品全巻を通じて思ったこと。
ムゴい・・・
だった。


前3篇に渡って物語が書かれているが、どれも全て形の違った酷さが書かれていた。

恩地の人生、上からの圧力の酷さ。
国民航空の事故で大切な人を失ってしまった遺族の悲しさ、国民航空の内情、対応の酷さ。
事故を真剣に受け止めることなく保身に走り工作を続ける上層部の酷さ。
最後の結末もなかなかムゴい。。。

何なんだろう。
最終的に会長の国見氏は、総理大臣から会長就任の要請を受けたにも関わらず、その当人から会長を更迭させられるというとてもムゴイ仕打ちを受ける。

国見氏が何をやったのだろう。
志は清く、今まで分裂していた労働組合を頑張って一つにしようと、粉骨砕身で取り組んでいた。

まさに花道の無い退任。
恩を仇で返すとはこのことだろうか。


このやりきれない感は今までずっと作品を読んでいて根底にあったものだ。
国民航空のしがらみは国民航空だけでなく、官僚、政界にまで複雑に張り巡らされていた。
官とは何か。

上の人たちは甘い蜜を吸う。それを下の人たちは知らない。
甘い蜜を吸っている人も、実はさらに上の人から巧妙な伏線を張り巡らされて甘い蜜を吸われている。

これはもうどうにもならないのであろう。
上の人は「権力」を持っているから、もし何か不祥事があっても、マスコミなどを操り不祥事を揉み消すことが出来る。

下の人が「何か」をしようとしても、何十にも張り巡らされた強固な防衛策に阻まれ、核心に近づけない。
もしその核心を知っても、明るみに出すことは出来ない。
もし明るみに出せたとしても、それ相応に事が裁かれるのかも怪しい。


同じようなケースがある。
三国志での十常侍というのがそうだ。
皇帝に取り入り甘い蜜を吸っていたが、曹操らの挙兵によって失墜させられた。

今の現代に表すと、「革命」であろうか?
おそらく「革命」に当たることをしなければこの構造は変わらないと思う。
おそらくもし「革命」を成し遂げた人さえも、甘い蜜を吸う構造を作っていくのだと思うが・・・


まあそんな現代にも十分にまかり通っているそんなムゴい構造を知ることが出来ました。
さしづめ、原発問題はかなり上がもみ消したりマスコミを使って情報操作している所はあると思う。

でもそういった「裏」を見る目も今回のことで少しは知ることができたかなと思います。

ちなみに、この小説、ほぼ現実の出来事をモチーフにして書かれており、さらに登場人物のほとんどにモデルがいることが分かりました。

なんか当時の出来事や政界や人物に興味が出てきたので、ちょくちょく調べてみたいと思います。

そんなんで「沈まぬ太陽」、とても勉強になったし面白かったです。
また自分の中の新しい世界が開けたので、読んでよかったなと思いました。