皆様ごきげんよう。昼下がりの黒猫でございます。
今回は本の感想を。
『ウェストマーク戦記1 王国の独裁者』
『ウェストマーク戦記2 ケストレルの戦争』
(ともにロイド・アリグザンダー著、宮下嶺夫訳 評論社)
舞台は架空の王国ウェストマーク。
数年前に王女を亡くしたウェストマーク国王アウグスティンは、悲しみで心を病み、政治に関心をなくしていた。そのため宰相のカバルスが王に代わって権力を振るい、国民は次第に圧政に苦しめられるようになっていた。
孤児の少年テオは、印刷工のアントン親方のもとで見習い工をしていた。生まれた街・ドルニングを出たことはなかったが、おおむね不満もなく暮らしていた。
そんなある日、奇妙な小男からパンフレット印刷の依頼を引き受けたことがきっかけで、親方は殺され、テオはお尋ね者となってしまう。
行き場のなくなったテオは、その元凶を作ったパンフレットの依頼者にして旅のペテン師、ラス・ボンバス伯爵と従者の小男マスケット、旅の途中で知り合った浮浪児の少女・ミックルと行動をともにすることになるが・・・?
というのが1巻。
主人公テオはいろんな街を巡るうちに政治に不満を持つ王国の現状を目の当たりにし、その中でも王政の廃止を主張するグループの長・フロリアンと知り合ったりします。
なんだかんだで一行は王宮に行く羽目になり、そこでカバルスの悪行を暴いたり驚きの真実が発覚したりして、1巻は結構王道な感じの児童文学として終わります。
が。
1巻の終わりから半年後。
未だ混乱がおさまったわけではないこの機に乗じ、隣国・レギア王国がウェストマーク国内の王政反対派と手を結んで侵攻を企てていた。
侵攻してきたレギア軍に対し、新たな指導者を得た王国軍に加え、フロリアン率いる市民軍も各地で応戦して戦闘を繰り返すが、状況は次第に悪化していく。
仲間と別れたテオは各地を放浪して王国内を見て回っていたが、レギアの侵攻に伴い、かつての知己・フロリアンと彼の組織した市民軍と行動をともにするようになる。
常に空腹と自分の倫理観と闘わなければならない軍での厳しい暮らしを続けるうちに、テオは道徳心を失っていき・・・?
というような感じの話が2巻。
全3巻だそうなんですが、わたしの行く図書館には何故かまだ2巻までしか入っていないのでここまでしか読んでいません。
大好きな作家さんの作品ですが、1巻は楽しい児童文学、2巻は一転して戦記ものという感じで全然趣が違い、びっくりしました。2巻は結構きつい描写も多く、1巻の雰囲気を期待して読むと辛いかも。
主人公テオは12・3歳だと勝手に思っていたら、2巻では婚約者ができたりして結構年齢が高めなことも判明。あらやだ(笑)。
3巻までで王政→共和制への移行が描かれるんだと思いますが、主人公テオは王室側にも反王室側の指導者にも親しい人物がいて、色々辛い立場です。
わたしも3巻を読んでいないのでまだなんとも言えませんが、この先どうなるのかとても気になります。テオ頑張れ。
一番のお気に入りは根っからのペテン師だけどどうにも憎めないラス・ボンバス伯爵。いつもペテンでお金をもうけることばかり考えていて、そこそこ成功もするんですが、結構な確率で自分も騙されちゃうという何だか可愛いキャラです。食いしん坊という点もイイ。2巻では殺伐としがちな雰囲気を和らげてくれる貴重なキャラクターでした。