Genの思いつ記(Gen建築設計所)

人はいろいろであります。いろいろな日常を思いつくままに記録していく建築設計事務所のブログです。

木づくり 一

2009年05月02日 | アート・文化

木造と書いてあると「もくぞう」と読む場合が多いのですが、「きづくり」とも読めます。木造住宅(木の家)に携わっている人間として木づくりの家について ちょっと何か書いてみようと思います。現在、たまたま仕事で2×4(ツーバイフォー)工法の住宅に関わっているので いわゆる在来工法と全く違うなあ~と感じますが、これも木の家なんですね。(2×4工法の正式名は枠組壁工法といいます)なんと15年くらい関わったことのない工法です。

この2×4の住宅というのは家の中に木が見えない。全く隠されてしまう。しかし、火災に強い等、いろいろと利点はありますが、住宅の中で木が見えないというのは「木づくり」の家といえるのだろうか?などと思ってしまった。まあ、そもそも在来工法といいながら、建売住宅なども全て石こうボードで隠して木が見えない家になっているのが現実であります。

いえいえ、木の見えるところがありました。いわゆる、フローリングと称する床材です。ところが実は木の床に見えるのですが、単板という木をスライスしたものをベニヤに張っているだけで木のよさを実感できる木の床ではないのです。ベニヤという表現が悪ければ合板という言い方もあります。合板も薄い木を何重も接着剤で張った材料であります。

ここでは無垢の木のフローリングと区別するために単板+合板のフローリングを複合フローリングと呼びます。では一体、どういうところが違うのでしょうか。

マンションなどコンクリートでできている建物にも複合フローリングが使われています。マンションなどは上下階の音の問題などもあるので、複合フローリングの裏にクッション材を張って防音仕様にしてあります。そうしないと木の床では「コツコツ」という音がして問題があるからなのです。複合フローリングの場合は、L-40などその性能が表示されています。そういう意味で、複合フローリングというのは防音性能がよいのです。考えてみれば音を防止するのですからそれなりのものを 工夫すればできるものです。でも、なぜ、あえて木の床にする必要があるのでしょうか。

別に木の床にしなくても防音の面だけを考えれば他にも適切な材料があるはずです。表面だけの薄っぺらい木ですが、木が見えるということだけで日本人は安心や安らぎを感じるのではないでしょうか。多分、昔から木の家に慣れ親しんだ日本人のDNAがそうさせるのだと思います。そうなんです、複合フローリングが建売や2×4の住宅などに使われるのはマンションのような性能面でなく、木を使っているというアピールをしたいから使っているのではないでしょうか。

それでは、住宅にわざわざ無垢の木を使わなくても複合フローリングでいいのではないかという考え方が出てきますが、それは本当に木の床のよさを知らない人が安易に考えるとそうなるのではないかと思います。無垢の木(加工以外、何も手を加えていない一枚ものの木)と複合フローリングを素足で踏んでみれば一目瞭然なのですが、感触が違います。無垢の木は暖かく、湿気を吸ってくれる。すなわち、冬は冷たさを感じにくく、夏は汗によるべとつき感が少ない。

素足にあった床材なのです。だから、無垢の木のフローリングではスリッパを履くのは勿体ない。必要ないのです。それと大きな違いは、香りが違います。無垢の木のフローリングは木のいい香りがしてきます。これだけでも大きな違いです。

もう一つの大きな違いは材料に接着剤を使っていないということです。シックハウスや化学物質過敏症など名前は聞いたことがある人が多いと思いますが、その原因の一つが接着剤にあります。無垢の木というのは材料にもちろん接着剤は使っていません。(専門的にいうといろんなデータがありますが、もっと詳しく知りたい人はメールにて問い合わせしてください)

床材というのは空間にいる人間に一番影響を与える部分です。せめてそこだけでも本物の木(無垢の木)を使うことによって、少しでも健康に安心に住まえる住宅ができるのではないでしょうか。いうまでもなく、無垢の木と複合フローリングの値段を比べると複合フローリングのほうが安価です。しかし、重要な床ぐらいはこだわって使いたいものです。

「木づくり」というタイトルには 木を使った住宅という意味と、木を使うことによって 林業(山の木)の木を育てたいという意味を込めています。林業の木を育てるということは、使うことによって(伐採)、木に新たな生命が宿るということです(植林)。その林業の山の木のサイクルに協力できるような活動をしていきたいと思います。