東京・中野にある「宮城漁師酒場・魚谷屋(うおたにや)」
宮城漁師酒場 魚谷屋
の店長、
魚谷浩さん登場。
今が旬の海産物や、宮城県の海産物の美味しさや、
そして、生産現場の実情、震災後を経て大きく変化した
水産業の今後について伺いました。
■今が旬の海産物はワカメ
宮城漁師酒場・魚谷屋(うおたにや)は宮城県の海産物を扱っている飲食店。
今が旬の宮城の海産物で特にオススメしたいのが「ワカメ」。
1月から3月がワカメの収穫時期で、通常はそこから乾燥させたり、
塩蔵加工をして1年中食べられるように加工してから
世に出されているが、未加工のものを茹でて食べると、
驚くほどに美味しい。店頭ではワカメのしゃぶしゃぶを提供していて、
湯通しして茶色から鮮やかな緑に変わる瞬間も楽しんでほしい。
■終わりの見えない支援
東日本大震災を受けてすぐに、石巻市のボランティアに行くことを決意。
自身は神戸市東灘区出身で、阪神淡路大震災の
記憶も鮮明に残っていたという事もあり、その経験を生かせればと思い
宮城県へ行った。とても2週間程度のボランティアでは
到底補えないほどに支援を必要としている現状を知り、
自分の夢である、飲食店独立はいつでも出来ると思い、
長く滞在して、ボランティアをすることを決意した。
当時はほぼフリーターのような状態で、体力が続く限りボランティアを続けた。
当初2週間の予定だったが、1年2年と月日が過ぎ、
気づけば4年間滞在していた。長く滞在するに連れて、
支援というあり方に疑問を覚え、石巻の市民の目線で
復興を考えていこうと思い、蛤浜という漁村に腰を据えて、
真剣に街づくりに取り組み始めた。当時漁村を持続させることは本当に難しかった。
その経験を経て、現在東京で、宮城漁師酒場・魚谷屋を開くに至っている。
■フィッシャーマン・ジャパン
宮城漁師酒場・魚谷屋の運営を支えているのは、
「フィッシャーマン・ジャパン」という団体。
宮城県石巻市で漁業支援の活動をしている一般社団法人で
「漁業をカッコよく」をコンセプトに集まった東北の若手漁師集団。
宮城県を中心に東北の若い漁師や水産業に関わる人たちが所属している。
未来に正しい漁業を残すモデルを作りたいという事をテーマに掲げ、
漁業のイメージを良くするために、普通とは違う切り口で
様々な取り組みを行っている。宮城漁師酒場・魚谷屋では、
海産物そのものはもちろん、漁師や生産者にも
興味を持ってもらいたいと考えている。その一環で
「お魚さばき教室」という取り組みを行っていて、
そこには、コロナ禍で家で過ごす時間が増えたため、
魚料理のハードルを下げたい、もっと多くの人に
魚料理を楽しんで欲しい、という背景も隠れている。
魚谷屋のYoutubeチャンネル、 魚谷ch.でも動画をアップしている。
■東日本大震災から10年
東日本大震災の発生から10年が経過し、
いろんなきっかけに出会う10年で、
自身も人間的に成長できて、特にコミュニケーションの
取り方など、大きな影響を受けたと思っている。
被災地に一番必要なことは何より、現地の実情を多くの人に
理解してもらうこと、自身の故郷は神戸で、
学生時代は四国に行っていたり、日本各地を回ったが、
宮城ほど思い入れの強い地域はなく、
第二の故郷のように感じている。震災前と震災後の
漁業は大きく変わっていて、2011年頃は、スマートフォンが流通し始めた時期で、
SNSなどを通じて、漁師の生業というものが世に広まっていった。
ダイレクトにやり取りできる関係、最終的に食べてくれる人が
わかるという事は、漁師にとってとても大きなやりがいに繋がっている。
■釣りで町おこし
魚谷というのは本名で、魚に携われている事は
ここ数年とても運命に感じていいて、誇りを思っている。
まな板の上で調理をしているだけではなく、
YoutubeやECなど様々な物を取り入れつつ、
今後はリアルと、オンラインということのメリハリが大切だと考えている。
その取り組みの一つとして、漁港で釣りしている人たちの下に
料理人を派遣し、魚の下処理をするというサービスを
考えている。釣りをした後は、魚を持って帰って
簡単に調理して食べるだけという形になる。
地権者の了承があれば十分可能な事で、
釣りで町おこしをしていきたい。そして、みんなで海を守っていきたい。
4年間のボランティアの経験が今の自分を作っていると考えていて、
宮城県の水産業と、飲食業者として関われる事に誇りを持っている。
漁師たちと一緒に良い漁業の形を、未来に残していきたい。