晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

桐野夏生 『日没』

2023-12-31 14:16:07 | Weblog

2023年大晦日。今年は、週1本アップを目標にしていましたが、結果は30本ということになりました。70歳を前にして脳みその劣化を自覚しています。2006年4月から書き初めて17年余、トータル1386本、閲覧数1,256,732PV、訪問数526,941UUです。人気ブログからはほど遠い絶滅危惧種ブログを読んでいただきましてありがとうございます。来年も自分の脳髄トレーニングと備忘録として続けたいと思います。

 

『日没』(桐野夏生著 岩波書店 2020年刊) 

僕は、ほとんど小説を読まない。登場人物が多くなると途中でストーリーを見失しなってしまうことが多々あるので読むことができないといった方がいい。今年を振り返っても、中村文則『私の消滅』、吉村昭『羆嵐』と本書の3冊しか読まなかった。

では、なぜ急に桐野氏の小説を読みたくなったのかというと、ニューアルした『世界』の2024年1月号で『反社会的で、善なるもの いま小説を書くということ』という桐野氏のインタビューを読んだからだ。桐野氏については、大昔に『OUT』で無慈悲、残酷、悪意の表現がリアルで巧い人だという印象を持っている。それで近くの図書に走った。

『日没』は、桐野氏自身を投影していると思われる小説家のもとに「総務省文化局・文化文芸倫理向上委員会」(通称ブンリン)なる組織から召喚状が届くところから始まる。出頭先に向かうと、海辺の断崖に建つ「七福神浜療養所」に収容され、「社会に適応した小説」を書くよう矯正される。そこでは終わりの見えない闘いが続くというストーリーだ。

『世界』のインタビューにおいて桐野氏は、作家や編集者、出版社が過激、過剰な表現を避ける傾向にあるのではないかという。それは、国家による単純な監視や規制ではない。「国民」の側から発せられる声を国家が意図的に使う場合があり、作品の中に差別的表現があるなどという声を理由にして過去の出版物が図書館の書棚から消えたり、作家が表現の場を失ったりしているという。またこのような社会の空気が表現する側の自己規制を産むという。桐野氏は、表現者として現実にぶつかる壁や現在の社会が向かっている先に危機を覚えている。

では、僕自身がブログを書いている当事者としてはどうなのだろうか。過去に一度だけ炎上したことがある。それは鉄道車両について辛口のコメントをした時に、非難のコメントが殺到したのだ。その時以来、慎重に言葉を選んだり、何回も校正したりしている。批判をする時は、「・・・とも言われている。」「・・という考え方もある。」というように他人の口を借りて言葉にすることも多くなった。

今の世の中を見ても、TVでは複雑な問題も30秒程度で表面的に説明できる人がコメンテーターとして重用されている。マスコミは見えない権力の意図を忖度して、自主規制しているのは明らかだ。一見すると良いことのように思えるが、危うさを感じる動きもある。例えば、ヘイトスピーチ規制法も差別的な言説を許さないという点からは良いことのように見えるが、権力による言論規制の端緒になりかねないという危険性もある。コンプライアンスという言葉も、同じような構造を持っていて、法令遵守、公平・公正にという誰も反対できないことを掲げられると、何事も堂々とまかり通ってしまう考え方だと思う。

この小説の中には『日没』という言葉は一度も出てこなかった。作者はどうしてこの題にしたのだろうか。この国は「日出ずる国」のはずなのだが、このままでは沈みゆく国になってしまうということなのか。

 

 

 

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ガンバレ・キシダ(その2) アベ派ゼロ内閣でスッキリした表情に

2023-12-18 10:00:42 | Weblog

ガンバレ・キシダ(その2) アベ派ゼロ内閣でスッキリした表情に

MEMOという紙くず、断片を集めてみると気付くことがある。僕は、裏読み、逆バリが大好き人間だと。

○NTT東日本とNHKに解約しようと電話をかけたが、どちらも20分以上「ただ今電話が混み合っています。このままお待ちいただくか、しばらくしてからおかけ直し願います。」とのメッセージが繰り返し流れる。合理化し過ぎで人手不足なのか、解約をしにくくして嫌がらせをしているのか?

○11月16日、バイデンは習近平と4時間、一方、キシダとは20分で全く相手にされず。これでキシダが米国に見限られたことが明らかになり、東京地検からのウラ金疑惑のリークが始まった。10日に元派閥会長の細田が亡くなったのも契機になった?

○イスラエルの暴挙によって、欧米ではネオナチの勢いが増すだろう。

○高市が勉強会を立ち上げた。ネトウヨ、参政党、百田保守党、自民党右派、ついでに杉田水脈もまとめてもって出ていけ。でも人望は無いのだろう。

○柿澤、陣中見舞いと言い訳。選挙時の陣中見舞いは買収そのものだろう!

○11月27日、羽鳥慎一モーニングショーで田崎史郎が官房機密費について「ポケットマネーにすることはないだろうが選挙には使われている可能性はある。」と口を滑らす。河井アンリの1億5千万円を思い出す。

○札幌五輪招致断念。職員40人体制、活動費に13億円を使った。人件費を含めると40億円?

○記載漏れが大疑獄への予感。これは検察のアベ政治への意趣返しだろう。ネタ元は、森に土下座しても5人衆に入れてもらえなかったS村かな?

○連合の芳野友子は、労働貴族でもなくダラ幹でもなく、企業の労務担当重役の典型だ。

○中島岳志i曰く。「キシダ、ブレることだけがブレない」。異議なし!

○年間10億円の官房機密費の使途問題は消えた。検察は法に触れないので興味なし。

○免許更新手続きでマイナンバーのマの字も出なかった。

○ヤメ検郷原。政治家は複数の政治団体を持っている。「ウラ金は性格上帰属があいまいで、どの政治団体の報告書に記載義務があるのか、犯罪事実の特定が難しい」ので、議員側の立件は難しい。一方、派閥側は会計管理者が事務総長(又は会長だが、アベ、ホソダともに死んでいる。)から指示を受けていればその政治家を立件できる。

○栗山英樹が嫌いだ。その理由は、世の中に自分を嫌いだと思っている人がいないだろうと思っていそうなところだ。

○ウラ金疑惑の着地点は見えないが、先週の文春砲の見出し(記事は未読)に西村経産大臣(前)の架空パーティー。経産省は半導体産業を育成するために巨額の国費をつぎ込んでいる。当然、参入したい企業がそこに群がる構図。よってパー券は簡単に捌ける情況にある。北海道選出国会議員のH本、H井、W田らの名前も浮上。彼らの実力以上にパー券が売れている。そこにラピダスをめぐる構図があるのではないか。

 

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ガンバレ・キシダ(その1) 自民党を落ちるところまで落としてくれ 

2023-12-14 10:08:31 | Weblog

ガンバレ・キシダ(その1) 自民党を落ちるところまで落としてくれ 

ブログを2か月ほど休んだ。(休ませていただいた、とは書かない。)親族のこと、勉強のこと、2つぐらい言い訳があるが書かない。

この間にあったことで少し嬉しかったのは、誕生日がきて運転免許の更新をした際に、前回64歳の写真と現在69歳の写真に写る自分がほとんど変わっていなかったことだ。64歳時点で既に髪の毛が薄く顔も老けていたので変わらなかったというのが真実だろうが!

ブログを書かないということは自分の劣化が進んでいると認識しないといけないと思う。何かのせいにして書かない、誰かのせいにして書けない自分を甘やかしていると思う。頭の中では様々なテーマが湧いてくるのだが、キーボードをたたき、文章を校正していく作業がおっくうになっている自分がいる。雨が降っているからと、風が強いからと、気温が低いからとランニングを休む自分と同じだ。

この2ヶ月の間に机の上にその時々に感じたMEMOが散在している。なので振りかえってまとめて日記を書くような気分で以下に記したい。時間順に並んでいないが色々なことがあったなあと思う。

○立憲民主党逢坂誠二副代表のふるまい。予算委員会終了時にTV中継が終っていないのに、必ずキシダ総理(アベの時からずっとだ)のもとに近づいて、あたかも「ドーモ、ドーモ・・こちらは立場で言っていますのでお許しを・・」と弁解しているような姿が映り、いつも不快感が残る。

○立憲民主党安住淳国会対策委員長の発言。TVにおける物価が上がっている例として発言。「家族で行く全国チェーンの寿司店で、これまで1万円で済んでいたのが1万2千円になった。」市井の感覚とずれている。国民の生活実態を掴んでいないのではないか。

○ガザ地区のハマスがイスラエルの挑発に乗ってしまった。プーチンがバイデンの挑発でウクライナを侵攻した構図と重なる。ウクライナ、イスラエルの背後には、米国、ユダヤ資本がいる。重信房子の発言を聞きたい。

○ウクライナ報道が激減、米支援も続かず。どうするゼレンスキー。

○キシダには解散できる体力は残っていないのだから、野党協力などと言っていないで、それぞれの党が思いっきり政権と対峙すれば、自ずとその先も見えてくるだろう。

○日本外交。対米従属の枠を超えた瞬間、総理大臣であっても東京湾に浮かぶだろう。対米自立を与野党ともにビビって主張できず。

○性自認に違和感。スポーツ競技の男女枠はどうなる?

○道新11/10 保坂正康のキシダ評が適確。①自分と周囲の利害損得でしか判断しない。②人事で有能な士を遠ざける。③大局より小事にこだわり、その実践を誇りとする。総じて、状況をつくるのではなく状況の中でしか判断できない。将たる器ではないということなのだ。

○ポストキシダ。①茂木・・背が低すぎる。②西村・・キリキリ感に疲れる。③河野・小泉・・パフォーマンスに自己満足。④石破・・賞味期限切れ。⑤加藤・・睦月の婿で上昇志向が表に出過ぎ。いずれも人望がないなあ。

○野党の文春砲頼み。調査能力の低下

*以上のように並べてみるとあらためて自分が政治への関心が強い人だと思った。(続く)

 

 

 

 

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北海道コンサドーレ札幌サッカー専用スタジアム構想 その10 Jリーグ秋春制移行 野々村Jリーグチェアマン 三上大勝 札幌ドーム 

2023-10-22 10:19:18 | Weblog

北海道コンサドーレ札幌サッカー専用スタジアム構想 その10 Jリーグ秋春制移行 野々村Jリーグチェアマン 三上大勝 札幌ドーム   

テーマを「北海道コンサドーレ札幌サッカー専用スタジアム構想」に戻し、Jリーグシーズン秋春制への移行が協議されている今こそ専用スタジアム実現の絶好の好機だと提起したい。

2016.6.19のその1で「野々村社長がかねてから言っていることのひとつに2万人くらいの規模の専用スタジアムを持ちたいということがあります。」と書いた。

ここにきて、秋春制移行の協議が佳境に入ってきている。秋春制は、7月中旬から8月初旬に開幕し(夏場の暑さによる消耗を避けるといいながら、めっちゃ暑い時期にやるの?)5月末6月初旬に閉幕する。雪の多い地域を配慮して1月から5週間以上ウインターブレークの期間を設ける(12月、2月も雪が積もって寒いぜ!)という。課題は、営業面、降雪地域、スタジアム確保、4月入学の学校制度などあるが、シーズンが国際標準になるメリットも大きいといわれている。今季からアジアサッカー連盟(AFC)もACLのシーズンを秋春制に変更した。

これに対して、降雪地域の一部クラブ(5クラブくらい)からは反対の意見がある。新潟は明確に反対している。さて、どうするコンサだ!三上大勝GMは「条件付きで賛成」を表明。その条件は2つ「1つは冬の間でも、トレーニングができる環境整備。JFAとJリーグと当該クラブ、そしてホームタウンの自治体の4者がしっかり財源を確保することが大事だ。もう1つは、雪国でも冬の間もスポーツを楽しむための環境整備。これはプレーヤーだけでなく、観戦する人についても同様です。」と述べる。

屋内練習場の整備だけでいいのか。僕は、今こそ専用スタジアム実現の千載一遇のチャンスと考えている。三上GMは、もっと駄々をこねるべきだ。冬季間は屋内練習場で練習して、試合は今までとおなじ札幌ドーム?

三上GMは、「確かに試合開催に限っていれば、他の雪国のクラブに比べて札幌ドームは快適なのかもしれません。でも試合以外の日、サッカーのピッチはドームの外に出ていますから、冬の間は雪が1メートルから2メートルくらい積もります。雪かきの必要はあるし、芝の負担にもなりますからね。それにトレーニングも、冬の間は屋内練習場の人工芝で行うことになるでしょう」とはいうが容認姿勢だ。

さらに、「日ハムさんが出て行ったことで『札幌ドームの経営が厳しいのではないか?』という報道はよく目にします。僕らができることは何かと言えば、ドームを『負の遺産』にしないこと。自前の専用スタジアムを作ることは、我々にとっても検討課題ではあります。けれども、このタイミングでそれを具体化してしまったら、ドームはどうなるのか?そんな思いはありました。」と札幌ドームへの同情は聞かれるが臨場感溢れる専用スタジアム建設への意欲は全く感じられない。

先代の野々村さんは今やJリーグチェアマン。後を継いだ三上GMも手腕を発揮してコンサをJ1に定着させている。ただ、現状を見ると、ペトロビッチ監督の選手育成力に依存していて、素質のある選手を獲得するが成長した選手が流出してしまうという繰り返しになっている。J1上位へ進出する壁を乗り越えることができていない。サポーターもミーシャの超攻撃的サッカーに魅了されてはいるが、マンネリ感を抱いており観客動員も伸びていない。

その要因のひとつには、もちろん資金力の課題もあるが、チームの将来像、目指しているビジョンが明確でないことにあると思う。ファイターズは自前の球場を持ったことによって利益が急増し経営的に自由度が増している。コンサも、「2万人くらいの規模の専用スタジアム構想」をもう一度掲げ、そこに向かってチーム、サポーターが一体となって進む時ではないか。野々村チェアマンを輩出したコンサだ。その人脈を生かして資金、アイデアを集めて実現させよう。「世界がまだ見たことのない」積雪厳寒でも練習、試合ができる天然芝のサッカースタジアムを持とうではないか。

 

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北海道コンサドーレ札幌サッカー専用スタジアム構想 兼 北海道日本ハムファイターズボールパーク構想 その9 東日本学園大学 音別町 糸山栄太郎 東郷重興 冬季五輪招致 新幹線延伸 

2023-10-12 09:58:08 | Weblog

北海道コンサドーレ札幌サッカー専用スタジアム構想 兼 北海道日本ハムファイターズボールパーク構想 その9 東日本学園大学 音別町 糸山栄太郎 東郷重興 冬季五輪招致 新幹線延伸      

冬季五輪に大きな動きがあった。前回(その8)に「事実上の冬季五輪招致断念と捉えていいだろう。」と書いたが、冬季五輪招致の断念(昨日10.11)が正式に発表され、新幹線延伸も延期が確実になった。札幌市の描いているまちづくりの骨格が崩れた。これから様々な影響が出てくるだろう。だが、市民が望んでいるのは、福祉や除雪など生活の安定だろうから市民の間には深刻なダメージ感はないだろう。

秋元札幌市長は、東京五輪汚職が明らかになった昨秋の段階で、遅くても今春の市長選挙で得票率が落ちた段階で断念の決断をしていればキズは浅かったのではないか。そうしていればその後、エスタ、パセオの閉店、バスターミナルの分散移転などを遅らせることができたのではないか。今回は、秋元市政におけるファイターズの市外流出に並ぶ大失政だ。

 

では、北海道医療大学の当別町から日ハムBP内への移転を考えてみたい。

北海道医療大学を運営する学校法人東日本学園大学の歴史には興味深いことがある。

Wikipediaで北海道医療大学を調べると「1974年2月に佐々木真太郎が中心となり、当時の北海道知事・堂垣内尚弘が協力して、東日本学園大学として設立された。当初は佐々木の息子糸山英太郎が所有する音別町(現・釧路市)の土地に学園都市を構想し、雄別炭鉱尺別鉱業所が閉山された事による国から音別町への交付金より一部の支援を受け、音別校舎(教養部)を設置した。」とある。

確かに道医療大の前身である東日本学園大学が音別で開学した記憶がある。釧路へ帰省する際、国鉄の車内から同時期にできた大塚製薬の音別工場とともに校舎を見ることができた。1970年代のことである。

さて設立に尽力した佐々木真太郎(1902~1985)とはどういう人物なのか。埼玉県川越市の石炭商の子に生まれ、東京高等主計学校を卒業後、ガラス会社勤務を経て1928年に照明器具製造販売の佐々木商会を設立し、戦後GHQの受注により巨利を得、それを元手に各地に2000万坪(6700㌶)の土地を購入しゴルフ場を経営、1969年には長者番付全国一位となった。そして新日本観光興業創業者(現:新日本観光株式会社)。東日本学園大学会頭とある。

その佐々木真太郎の息子が、かの有名な暴れん坊の糸山英太郎(1942~ )だ。佐々木と妾の糸山道子との間に出来た子だ。父の新日本観光に入社しゴルフ場の運営で実績を上げる。1970年、父の友人である笹川良一の姪で笹川の弟笹川了平(大阪日日新聞社社主)の娘である桃子(1948~ )と見合い結婚して資金的にも恵まれるようになり、政界、投資にも進出した。

糸山英太郎が、音別町(現・釧路市)の土地を所有していたのかが見えてくる。1960年代から70年代という時代からもここがゴルフ場開発候補地だったと推測される。

糸山英太郎は、政治家として参議院議員(1期)、衆議院議員(3期)の当選を果たしている。政界引退後は、新日本観光株式会社等の会長職に就き、東京都港区のザ・イトヤマタワーに居住する。最近の話題では、2021年5月、参議院議員蓮舫の長男である村田琳と養子縁組し、養父となったことが報じられた。また、親戚・井口良二 (異母姉の舅)娘婿に岸田文武、その子に岸田文雄がいる。

以上が、東日本学園大学の創設に関わった佐々木真太郎、糸山英太郎親子の人脈、金脈だ。ただし、彼らの影響が現在まで続いているのは調べきれていない。

その後、「大学機能の大半が当別町に置かれていたことから、1985年に音別校舎を廃止し当別町へ移転・統合した。1994年(平成年)には現校名(北海道医療大学)へ改名した。」とある。

最近における学校法人東日本学園の動きでは、2021年9月末に理事長が東郷重興から鈴木英二に代わっている。

前理事長の東郷重興も興味深い大物だ。

東郷重興(1943~  )は、東京都出身。父は北海道拓殖銀行の行員であり、小学生の頃は函館市や八雲町に暮らした。東京大学法学部を出て1966年に日本銀行に入行し国際局局長を務めた。1996年請われて日本債券信用銀行に転じ、翌年に頭取に就任した。しかし、1998年12月日債銀は経営破綻、日債銀粉飾決算事件(不良債権約1600億円の未記載)で逮捕、後に無罪。その後、大阪造船所社長、ダイゾー社長、日本ラッド社長などを歴任した。そして、2012年より北海道医療大学を経営する学校法人東日本学園理事長に就任した。

以上のことから、ファイターズBPに移転する北海道医療大学は、その華麗なる人脈、経営の基盤となる金脈において侮れないものがあると思う。

 

次回は、僕の切望する「北海道コンサドーレ札幌サッカー専用スタジアム構想」を実現する起死回生策を提起してみたい。

 

 

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(再開)北海道コンサドーレ札幌サッカー専用スタジアム構想 兼 北海道日本ハムファイターズボールパーク構想 その8 札幌ドーム 月寒体育館 レバンガ北海道 

2023-09-29 16:31:14 | Weblog

(再開)北海道コンサドーレ札幌サッカー専用スタジアム構想 兼 北海道日本ハムファイターズボールパーク構想 その8 札幌ドーム 月寒体育館 レバンガ北海道   

このテーマでは、2016.6.19のその1に始まり、2017.6.3その2、2017.10.23その3、2018.2.13その4、2018.4.19その5、2018.8.13その6、2019.10.8その7と書いてきた。

今から読み返すと、僕の予想は大外れで汗が出てくる。日ハムBPは、今年(2023年)3月に当初の計画どおりに開業した。一方のコンサ札幌サッカー専用スタジアム構想は言い出しっぺの野々村社長がいなくなり全く話題にのぼることがなくなった。でも、僕の希望は、あくまでコンササッカー専用スタジアムの実現だ。

今回は最近の動きに触れたい。日ハム移転後の札幌ドームだが、活用策として出てきたアイデアといえばカーテンで仕切ってハーフ仕様でコンサートをやることぐらいだ。この数年の間で何をやっていたのだろうか。アーティスト側からすればプライドがあってそんなところでやりたくないと。だから未だに実績ゼロ。事前のリサーチ不足、セールス不足。ちなみにBPの音響はドームよりも良質なので大きなコンサートもBPに持っていかれる可能性もある。このまま無策で札幌ドームが赤字になっても札幌市が税金で補てんしてくれるから倒産はないという感覚なのだろうか。

さらに、地下鉄東豊線も乗客数が減っていることだろう。

このような情況の中で、札幌ドームの駐車場エリアに月寒体育館を400億円かけて移転改築するという案が出てきた。そこをバスケ「レバンガ北海道」の本拠地にするということだ。本来、冬季五輪招致が決まれば隣接の国有地の払い下げを受けることができたのだが、招致の見通しが立たないので現在の駐車場に建設するという。五輪招致について市の態度は前向きだが、市民の同意の見込みがないことから、市民意向調査には踏み込めない情況だ。従って、これは事実上の冬季五輪招致断念と捉えていいだろう。

レバンガ北海道も本拠地を求めている。日ハムは借金をしながらも自力で新球場を建設した。一方、レバンガには税金を投入してアリーナを作ってあげることに、市民の合意を得ることはできるのだろうか。さらに、気になるのは新B1リーグの参入基準に来賓・貴賓席、スイート、VIPラウンジが必要とのこと。これって何のために必要なのか。スポンサー対応に使うとしたら少なくともここは自前だろう。税金を投入する上で一番考えなければならないポイントは、「公共性、公益性」があるかどうかだ。僕は、地下鉄駅に直結している「きたえーる」を使い、VIP対応施設などはレバンガ北海道が自前で作るべきと考える。

次回で、もう一つの動きである、日ハムBPへの北海道医療大学の当別町からの移転を考えてみたい。

 

 

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「秋本真利贈収賄疑惑事件から、権力をめぐる構図を読み解く」 日本風力開発 競馬 洋上風力 黒川弘務  辻裕教

2023-09-10 11:11:41 | Weblog

「秋本真利贈収賄疑惑事件から、権力をめぐる構図を読み解く」 日本風力開発 競馬 洋上風力 黒川弘務  辻裕教 

僕が最初に感じたことはなぜ「競馬」なの?少し変わった事件だなというもの。マスコミ報道からは、利権をめぐる業者と政治家の典型的な贈収賄事件に見える。だが、だがどうももっと根が深いのではないか。

○まず、政治家の関係から見ていこう。菅―河野―秋本の親分子分ラインはこうだ。

*菅義偉(前総理):河野太郎を総裁選に担ぎ出す。法大出身で秋本真利は大学の後輩。当時、菅氏のイメージに合わない唐突な感じを受けた「カーボンニュートラル宣言(政策)」を覚えている。きっと、再生エネルギーは金のなる木と判断して、風力発電の拡大も盛り込む。

*河野太郎(デジタル担当大臣、一応麻生派):秋本真利を市議から国会議員に引っ張り出す。なんと、河野一族は昭和の時代から競馬会との関係が深く、祖父の一郎は畜産会のドン。那須野牧場を所有。父の洋平は日本軽種馬協会理事。太郎自身は日本競走馬教会会長だった。太郎の実弟が社長の日本端子など河野一族の関連会社が入る麻生台ビルの上層階には競馬諸団体が事務所を構えている。ひとつ謎が解けた。今回の事件の舞台が「馬主組合」というのもなるほどとうなずける。

*秋本真利(外務政務官辞任):氏は結局パシリ役だった。「再生可能エネルギー普及拡大議員連盟:会長・柴山昌彦」事務局長として風力発電を推進。氏の役割はこうだった。洋上風力入札第1ラウンドでは、3海域を三菱商事が総取り。それに不満を抱いた日本風力開発(社長:塚脇正幸、氏は三井物産出身)からの依頼を受けて第2ラウンドで審査基準が変更されるように、国会で質問。見返りに供与を受けたという構図。

以上からは、三菱対三井の利権争奪も見えてきた。

○もう一つの動きを見たい。岸田―麻生による大宏池会ラインが、菅―河野タッグつぶしのために検察を動かしたという見方だ。

岸田文雄(総理):菅退陣後、岸田、麻生も発起人に名を連ね「国産再エネに関する次世代型技術の社会実装加速化議員連盟:会長・森山裕」を発足させ、菅―河野―秋本ラインに対抗。今回の事件は検察を動かし、秋本を発端に河野、菅の政敵をターゲットにしているのではないか。

検察:菅に対する怨念を抱えている。菅(当時官房長官)は、黒川弘務元東京高検検事長(カケ麻雀)を検事総長に据えるために検察庁法改正案(定年延長)の閣議決定を主導した。結果的には世論の反対で断念。この定年延長を進言したのが辻裕教法務事務官(当時)だ。その辻氏は、菅をサポートした「裏切り者」として検察の人事で、仙台高検検事長の職を辞すべく追い込まれた。だがあくまで検察のターゲットは菅なのだろう。検察の独立を脅かされた恨みは忘れていない。

9月13日にキシダは内閣改造をするという。これが、国民のためではなく、自らの権力の延命のためだということは「国民は百も承知」だ。ただ、キシダ対スガに闘いからも目を離せない。

雑誌『選択』2023年9月号を参考とした。

 

 

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重田園江 『真理の語り手 アーレントとウクライナ戦争』 その2 ヴチャ ガルージン

2023-09-04 13:53:31 | Weblog

マスコミは、ジャニー喜多川による性加害を伝えることができなかったと自らのこれまでの姿勢を自己批判している。だが、皆がどこかおかしいぞと感じていることがある。それは他の芸能プロにおいてはどうなのかという問題だ。話題をジャニーズ事務所に限定しあえて深堀を避けているのではないか。「汚染水」放出報道も同じ構造だ。一部で伝えられ始めているが、含まれているのは本当にトリチウムだけなのかという問題だ。アルプスの性能も含めてデータの開示を求めるべきだ。

 

『真理の語り手 アーレントとウクライナ戦争』(重田園江著 白水社 2022年刊) その2 ヴチャ ガルージン    

何が本当のことなのだろうか?かつてならおおむね新聞やテレビで伝えられた内容は真実だと推測された。それだけマスコミの信頼性が高かったと言える。だが近年は、マスコミは信頼できるのか?権力に対する忖度や自己抑制が働いているのではないかという疑いを持ってしまう。一方で、ネットメディアが発達し、真偽が定かでない多種多様な言説が溢れている。一体、何が真実なのか。著者は、アーレントの思想をとおして考える。

「Ⅰ アーレントと真理の在りか」(P17~P67)、「第一章 政治が嘘をつくとき」(P19~P36)と「第二章 ハンナ・アーレント―真理と政治」(P37~P67)

アーレントは、「真理という理念が成り立たない世界は存続しない」(P43)という。意味を捉えるのが難しい言葉だ。著者はアーレントのこの言葉を手がかりとする。

では、ヴチャ(住民虐殺)起こったことをどう捉えたらいいのか。ロシア軍による虐殺?ウクライナによる自作自演?真実は一体どこにあるのか? ヴチャで住民が亡くなったことは動かしようのない真実だ。では、誰が、どのような方法で。

著者は、前駐日ロシア大使ガルージンが「ウクライナによるでっち上げ」(2022.4.11、TBS「報道特集」)との発言を批判して、これを許したら「『この世界に起きたこと』と『起きていないこと』の区別が失われてしまう」(P39)、そして、「『本当にあったこと』をどの範囲で確定できるかが問題なのではない。」(P40)規模や主体、意図や経緯がどういったことなのかということではなく、「出来事として何かが起きたか起きなかったか、その大きな枠組みとしての存在/不在はやはり確定できるという、私たちの事実に対する『信念』『期待』『想定』が問題なのだ。それが定かでなくなった世界は、人が人として生きることができない世界ではないだろうか。」(P40)と述べガルージンに怒りを向ける。

また、「虐殺があったかなかったか、『あなたはあなたの信じたいものを信じ、私も私の信じたいものを信じる』(例えば、ガルージンの発言)という意見や見解、政治立場の相違に格下げされてしまったら、世界は存在しつづけられないだろう。・・真理は意見の相違とは別の次元にたしかに存在し、そしてそれを、真理であるが故に証言し証拠立てる人たちがいる。このことが、人間が人間として世界に場所を占めるために、なくてはならない条件となっているのだ。」(P44)という。

「人間が意のままに変えることができない事柄が存在し、それについて語る者たちが真理の証言者であるというアーレントの考えは、政治的な噓、独裁者の噓、メディアの噓や虚構が、真理を戦勝するのみならず現実を変える力を持つ現在において、きわめて重要なものである。」(P66)

以上が、著者の真理をめぐる見解だ。真理の捉え方としては僕も同意できる。だが著者の中では、トランプ、プーチン(ロシア)批判に一直線なのだ。なぜトランプ、プーチンは真理の側にいないのか、論理が飛躍している。僕は、バイデン、ゼレンスキーを支持はしないが、著者の考えには同意できない。なぜなら、戦っている当事者、対立している当事者たちの発する言説のどちらも鵜呑みにしてはいけないと考えるからだ。当事者たちは、まさに言論戦、情報戦を繰り広げている最中なのだ。そこには真実とともに自国に有利になるようなプロパガンダも含まれているからだ。

著者は、真理が定かにできない世界は、人が人として生きることができない世界だという。僕は、確証の持てないことを真理と決めつける方が慎重さに欠ける怖い世界だと考える。著者は、少し前のめり過ぎている。そこは同意できない。

 

 

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重田園江 『真理の語り手 アーレントとウクライナ戦争』 その1 プーチン どっちもどっち論 スターリニズム ナチズム ロズニツァ 実証性  

2023-08-27 14:06:36 | Weblog

「SAMEJIMA TIMES」からの転載です。「福島第一原発「ALPS処理水」の海洋放出について、科学と政治の双方の視点からフェアに解説しているのが、国際環境NGO「Friends of the Earth(地球の友)」メンバーのFoE Japanが公開している『【Q&A】ALPS処理汚染水、押さえておきたい14のポイント』」です。僕の抱いていた素朴な疑問に答えてくれました。

 

『真理の語り手 アーレントとウクライナ戦争』(重田園江著 白水社 2022年刊) プーチン どっちもどっち論 スターリニズム ナチズム ロズニツァ 実証性    

本書は、2022年2月24日に勃発したウクライナ戦争を根底から捉えることができる重要な著作だ。著者は、ハンナ・アーレント(1906~1975)の思想とウクライナの映画監督セルゲイ・ロズニツァ(1964~ )の作品を基に思考を進める。

「序章 アーレントの時代、ふたたび」(P9~P16)

アーレントは、「スターリニズムとナチズムを、同時代の二つの全体主義とし、しかもそれがソ連では戦後にそのまま継承された」(P13)と捉える。そして著者は、今のロシアに「跋扈する「ソ連の亡霊」、とりわけ秘密警察の暗躍が、世界への差し迫った脅威だ」(P13)という。

一方、ロズニツァの映像からは、「スターリン時代のウクライナは、他の東欧諸国同様、最悪の経験をしている。これらの国々は、ヒトラーとスターリンの両方から攻められその餌食となり、信じられないほどの人命が失われた」(P13)ことがわかる。

僕は、1年半前にロシアがウクライナに侵攻した際、僕の周囲の人を含めてこの国のほとんどの人がロシアに対して一方的な非難をあびせたことに対して違和を感じた。表面的にみるとケンカと同じで先に手を出した方がなんたって悪いとなる。従ってロシアが悪いということなのだろう。でも僕はこれに組みしたくなかった。僕には、ほとんどの人が一方の見解に流れた時は直感的におかしいと感じる性癖がある。ちょっと待てよと。

僕は、ロシア、ウクライナのどちらにも原因があるという「どっちもどっち論」をとった。NATOの東方拡大に対するプーチンの恐怖感と警戒感は理解できる。そして昨年(2022)末にバイデン政権は、自らは戦わない、米兵の血は流さないという不戦の意思を表明してプーチンを挑発した。それに乗ってしまったプーチンの誤った政治判断は致命的なものになりつつある。一方のゼレンスキーも、ウクライナが簡単にNATOに加盟でき、その場合NATOが同盟国を支援してくれるだろうというこちらも誤った情勢判断をしてしまった。そして開戦後に続いているのは、アメリカ及びその同盟国からの武器供与に依存したウクライナの主体性なき戦いだ。戦線は米国などの外部からコントロールされている。ロシアもウクライナも政治指導者が判断を間違ったために両国の多くの国民の命が失われている。どっちもどっちなのだ。これが僕のとった議論だ。しかし本書を読んでいくと、それがとても表層的な議論だったということがわかる。

本書を読むともっともっと深堀が必要だということがわかる。歴史を振り返ってみて、ロシア、ウクライナ、東欧諸国がこれまでにどれほど残酷な経験をしてきたのか。この地域では、人の命が本当に軽く扱われてきたのだ。国同士の戦いにおいて、また国の内部における国民同士で、さらに国を超えて、民族間の凄惨な殺し合い、言論弾圧、暗殺という底知れぬ闇を経験しているのだ。そして今もこの地域に暗雲が立ち込めているのだ。それらを踏まえない議論は浅薄だと著者はいう。

さらに著者が学問の現状を批判する言説にハッとする。今の主流は「データに基づく比較研究、エビデンスに基づく科学的分析、量的・統計的な「実証性」の重視」(P15)となっていないだろうか。「だが、「いまあるもの」の定量的記述や比較が、有限性と歴史的一回性を生きるしかない人間の生の条件のなかで、どれほどの意味をもつだろうか。歴史をつうじて過去へと問いかけ、そこに在った「事実」に目を向けることで、何が現在を作っているのかを理解しようとすること。こうした試みの方がずっと魅力的ではないだろうか」(P16)と著者はいう。

思い当たることがある。最近のNHK番組において、過去の日記や記録などにおける単語の出現数をAIで分析し、それをもって時代の特徴としようとする手法が散見される。あえて数値化して客観的な裏付けとする方法だ。僕は視聴していていつも違和感を持っていた。あえて無駄な手間暇をかけなくても人間の持つ総合的な分析力、共感力、直観力の方が本質をずっと深い所で掴んでいると考える。

 

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福田博幸 『日本の赤い霧 極左労働運動の日本破壊工作』 文春砲 ロス疑惑 HSST 武村正義 前川喜平 中村紘子

2023-08-15 15:05:15 | Weblog

岸田総理に対してイライラ感を持つ。氏の発言は、誰かが書いた原稿を抑揚なく読むだけで言葉から伝わるものがない。マイナカードのミスもいつもの「○○大臣に支持をした」で済ませてリーダーシップをとらず他人事。喜怒哀楽がなく何をしたいのか、大事なことはすべて先送りで必死さが感じられない。無気力、無関心、無責任、無感動(かつて四無主義といわれた)の総理に対して、何故かこちらも不思議と怒りも期待も生じなくなってしまう。ただ2週間ごとにヘアサロンに行き身だしなみだけは気をつかっているようだ。一日でも長く総理をやりたいだけなのか。

 

『日本の赤い霧 極左労働運動の日本破壊工作』(福田博幸著 清談社 2023年刊) 文春砲 ロス疑惑 HSST 武村正義 前川喜平 中村紘子  

近くの図書館から借りた。著者の立場から見ると左翼は駆逐対象なのだろう。その左翼絶滅危惧種と自覚している僕が感じたのは、著者が左翼をずいぶんと過大評価しているということだ。著者に思うほどすでに左翼の社会に対する影響力はない。

まず本書に感じたのは、扱っているテーマに一貫性がないということだ。順に並べると、国鉄・JR・日本航空の労働組合。1960年代からの革新自治体、田中角栄と中国の関係、中曽根康弘とソ連の関係といった具合だ。図式的にいうと、左翼=悪、労組=悪、外国=悪ということだ。では善=正義はどこにあるというのか、そこはよくわからない。

やはり自腹を切って購入するような本には思えない。ただ、どのような論理構造をとっているのか、それがしっかりとした根拠を持っているのか、そして十分説得力をもって話が展開しているのかどうか。そして本書から初めて知るような事実があるのだろうか。

では、僕にとって初見と思われる事柄を以下にメモしておく。

○(P160)1984年、最初に週刊『文春』砲がさく裂し、マスコミが当時「ロス疑惑」と大騒ぎをした、「疑惑の銃弾 三浦和義氏のロス疑惑」報道は、大物警察官僚のスキャンダルを掴んだ文春に対して、その報道をくい止めるために検察がリークした情報なのだという。その内容は、警視総監候補だった柴田善憲警察庁副長官の公金横領疑惑である。その裏取引に文春が応じたのだ。

ここから学べる教訓は、マスコミが連日大騒ぎを始めたら、その裏で何かが動いている可能性があり、国民の目をそらそうとしているなどを疑うことだ。今も、ススキノで起きた猟奇的な事件に関する検察からの小出し情報をマスコミが連日にわたって報道している。何が動いているのだろうか?

○(P226)日航の新交通システム「HSST」(リニアモーターカー)の電導技術が経営中枢に入っている日共党員を通じてソ連に漏れたという記載がある。確かに1986年ころ、札幌と千歳空港間を15分で結ぶという構想があったことは記憶している。これについての真偽のほどは確かめようがない。

○(P317)1937年に起きた盧溝橋事件は、日本軍と国民党軍を全面戦争に突入させるために中国共産党が仕組んだ謀略という記載がある。僕は初めて聞いた考え方である。これは学問的・歴史的な検証に耐えられないであろう。こういう暴論を書くと、著作全体の価値を自ら貶めてしまうのではないか。

○(P322)新党さきがけの武村正義は、1956年から翌年にかけて繰り広げられた山村工作隊の活動メンバーだったと記載されている。1956年という年次は誤りであり正しくは1952年だろう。ことの真偽は不明。

○(P347)1970年当時の民放労連執行委員長は武村宏弥(北海道放送・日共党員)

○(P386)前川喜平元文部科学省事務次官は、ソ連貿易をやっていた群馬県「前川産業」のオーナー前川昭一の長男。前川家と中曽根康弘とは関係が深い。

○(P390)ピアニストの中村紘子は、銀座の画廊「月光荘」のオーナー中村曜子の娘。曜子は中曽根の恋人で、ソ連絵画を扱っていたという。

 

 

 

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安倍元首相のロシアより発言と「疑惑の銃弾」

2023-08-05 15:32:21 | Weblog

安倍元首相のロシアより発言と「疑惑の銃弾」 

2022年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻して以来、この国ではほぼ「一億総ロシア糾弾・ロシア制裁」一色になった。その中で、異色の発言を行っていたのが安倍晋三であり、各マスコミからはほとんど黙殺された。バイデンの逆鱗に触れたのだろう。

以下、安倍元首相の発言

○2022年2月27日、フジテレビ系「日曜報道THE PRIME」での発言。

「プーチンの意図はNATO(北大西洋条約機構)の拡大、それがウクライナに拡大するということは絶対に許さない。東部二州の論理でいえば、かつてボスニア・ヘルツェゴビナやコソボが分離・独立した際には西側が擁護したではないか、その西側の論理をプーチンが使おうとしているのではないかと思う。」

(コメンテーター:まさに、平和維持部隊を送り込もうとしているのはコソボ紛争と似ているところがあると思うのですが。プーチンがNATOの東方拡大について不満を漏らしたことがあったのですか)

「米ロ関係を語る時に(プーチンは)基本的に米国に不信感をもっているんですね。NATOを拡大しないことになっているのに、どんどん拡大しているんです。プーチンとしては領土的野心ということではなくて、ロシアのいるのだろうと防衛・安全の確保という観点から行動を起こしているのだろうと思います。もちろん私は正当化しているわけではありませんし、しかし彼がどう思っているかを正確に把握する必要があるんだろうと思います。」

○202年.5月、英紙エコノミストのインタビューでの発言。

「侵略前、彼らがウクライナを包囲していたとき、戦争を回避することは可能だったかもしれません。ゼレンスキーが、彼の国がNATOに加盟しないことを約束し、東部の二州に高度な自治権を与えることができた。おそらく、アメリカの指導者ならできたはずです。しかしもちろんゼレンスキーは断る」

○2022年6月、日本の週刊エコノミスト誌が「勇ましさに潜む『自立』と『反米』」で安倍発言を論評

「(前出のフジでの安倍氏の発言は)主要7カ国(G7)を中進とする西側民主主義陣営が結束してロシアに経済制裁を科し、ウクライナへの軍事支援を強化するなかで、それに同調する岸田文雄首相に背後から弓を引くに等しい、極めてロシアよりの発言だ。」

知米派の政府関係者は「自分の(ロシアに対する)失態を棚に上げて米国を批判する安倍氏の脳内が理解できない」と憤る。

『紙の爆弾』2022年8月号 孫崎亨「安倍晋三銃撃事件から一年 岸田政権の対米従属と“疑惑の銃弾”の真相」(P4~P9)を参考にした。

そして、2022年7月8日、「疑惑の銃弾」によって安倍氏は暗殺された。ウクライナ侵攻、トランプ訴追、アベ暗殺という現象からどのような権力闘争の構図が見えてくるのだろうか。バイデン政権VSトランプ・プーチン・アベ3人組の闘いであり、バイデンは3人を嫌ったのだ。

 

 

 

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ミシェル・アンリの「内在の哲学」と吉本隆明の思想について

2023-07-23 09:04:25 | Weblog

この3ヶ月間、論文の書き方の指導を受けた。下記の文章は、自分が「今、持っている力を何とかやりくりして全力」(浜田寿美男氏から)で書いたものだ。指導教官はブログを書くことを推奨していた。自分の文章を音読する。他者に読んでもらう。そうすると、文章を書くことに慣れると。

 

ミシェル・アンリの「内在の哲学」と吉本隆明の思想について

ミシェル・アンリ(1922―2002)と吉本隆明(1924―2012)は、ほぼ同時代を生きた人だ。二人を比べると、西洋哲学に抗おうとした点やマルクスとマルクス主義は異なると述べたことなど、論理に共通点がある。だが、アンリは世界との関係を切断した「内在の哲学」を構築した。対する吉本は、世界を対象化しながら世界との緊張関係の中に自己を見出した。そして、晩年のアンリに変化が生じたことを論じる。

1.戦争体験という共通性

二人には、第二次世界大戦という苛烈な戦争(アンリは戦場)体験がある。二人はそれぞれの戦中、戦後において、自分を取り巻く世界が激動する中で、時流に任せて生きるのではなく、いかに自己を確立するか、自己の拠って立つ場所をどこに求めるのかという切実な問いに向き合った。

アンリは、レジスタンス活動に参加し、そこでは常に自分の思考や行動を隠さなければならなかったという経験から、「真理は、(略)内面性、内密性の内にあり(略)文化、政治、経済、社会システム、言語構造など(略)人間の外部にあるものは人間の真理たりえない」と考えた。(1)

一方、「戦時中、学生だった吉本は、読書に基づく徹底した思索の結果、戦争を肯定し国家のために死ぬことも覚悟していた。しかし、敗戦により、自分が確信をもって抱いた死生観は全否定され」(2)、「ある種の放心状態に陥ってしまった」(3)。吉本は、自らの価値観の崩壊を経験した後、思想の再構築に挑み、かつて自分が信じてしまった国家とはどういうものなのか、さらに自分と国家や社会との関係はいかなるものなのかについて思索を展開した。

2.アンリ哲学と吉本思想の分岐点

戦争という共通の体験を経たアンリと吉本だったが、二人の考え方の間には、自らと外部との関係をどう捉えるべきか、そこに大きな分岐があった。

アンリは、自分を取り巻く外部との関係を切断した「私」という存在をあらゆる「存在」の根底に据えた。また、西洋哲学における「事象が現れてくる」とは「対象化されること」だという存在論的一元論を乗り越え、自己意識を「対象化」してはならないと考えた。彼は、私が私自身を直接に感じとる、世界の事象とはかかわらない、客観的、対象的な規定とも無縁な、自己の感情を哲学の基軸に据えた。

吉本は、国家の成り立ちを次元の異なる三つの幻想(観念)から解明しようとした。すなわち「共同幻想」という集団が持つ観念、「対幻想」という二者間の観念、個人の存在の根拠となる「自己幻想」を分析し、それらの相互関係を明らかにしようとした。そして、「国家は共同の幻想である。風俗や宗教や法もまた共同の幻想である」(4)といい、共同幻想はその集団の構成員としての自己にとっては、共同の規範であるとともに縛りやつながりの根拠でもあると考えた。

さらに、「人間はしばしばじぶんの存在を圧殺するために、圧殺されることをしりながら、どうすることもできない必然にうながされてさまざまな負担をつくりだすことができる存在である。共同幻想もまたこの種の負担のひとつである。だから人間にとって共同幻想は個体の幻想と逆立する構造をもっている」(5)といい、共同幻想と自己幻想は、すなわち国家や法、宗教などと、それらを構成する個人とは、原理的に対立する関係にあると考えた。吉本は、戦争中に疑うこともなく国家の方針を受け入れてしまった自らの経験や、集団の中で集団が自分の思い通りにならないことから生じる苛立ちなどの原因は、共同幻想と自己幻想の逆立にあるのだと述べた。

「私」という存在をあらゆる存在の根底に据えるという考え方ではアンリと吉本は一致している。アンリは、世界の事象とは関わらない自己の感情を中心において「内在の哲学」を構築した。吉本は、世界を外部性として排除するのではなく、緊張関係(逆立)を孕みながらも世界を認識の対象とし、世界との関係無くしての自己はありえないと考えた。アンリは、事物を対象化せず、事物に対する知覚も捨て、自ずと自己の中に湧き上がる感情に依拠した。ここにアンリと吉本の考えとの分岐がある。

3.アンリのキリストの言葉への接近

世界をすべて「情緒的な主体」との関わりの中で捉えなおしたアンリだったが、その後において、「私たちの『存在の感情』と他者とはどのような関係を持つのか、他者との共生は私たちの『存在の感情』といかなるかかわりを持つのか」(6)、「アンリ哲学は、(略)自己の個体性をよく説明する一方、自己の外、すなわち外在性をどう表しうるのか」(7)という問題に直面した。「私」のうちに沈潜すればするほど、「私」を存在せしめる「何か」との関係が問題として浮上した。

晩年のアンリにとって「私」の存在を支えてくれる「何か」とはキリストの言葉だった。「超越的な現れであるキリストの言葉がその逆説性によって人間の生の条件を思い出させたのだとすれば、中期以前のアンリとは異なる次元で超越的な現れが内在的生に作用することを認めたことになろう」(8)。結果的に、遮断していたはずの世界、否定していた他者との関係が復活してしまった。これは吉本のいう自己と共同幻想の関係、他者性、外部性を否定しきれなかったということではないか。アンリの哲学は初期と後期で大きく変化した。

(1) 村松正隆『授業資料』

(2) 先崎彰容『100分de名著 吉本隆明 共同幻想論』NHK出版、2020年、14頁 

(3) 同前、26頁

(4) 吉本隆明『「共同幻想論」角川文庫版のための序文』、『100分de名著 吉本隆明 共同幻想論』NHK出版、2020年、11頁

(5) 吉本隆明『「共同幻想論」「序」』河出書房新社、1968年、27頁

(6) 村松正隆『アンリとフランス哲学』、『ミシェル・アンリ読本』法政大学出版会、2022年、54頁

(7) 吉永和可『他者と共同体』、『ミシェル・アンリ読本』法政大学出版会、2022年、130頁

(8) 古荘匡義『生の現象学とキリスト教』、『ミシェル・アンリ読本』法政大学出版会、2022年174頁

 

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原武史 『歴史のダイヤグラム〈2号車〉 鉄路に刻まれた、この国のドラマ』 JR北海道 松本清張

2023-07-03 14:09:26 | Weblog

マイナンバーカードを持つことに対する不快感はどこからくるのだろうか。それは、相次ぐ事務ミスだけが原因ではない。免許証は運転をするため、健康保険証は病院にかかるためとそれぞれ目的がはっきりしていて納得感があるが、マイナには所持する切実な必要性を感じない。僕には、在日外国人が日常的に在留カードを持たせられている気持ちに通じるものがあると思う。

 

『歴史のダイヤグラム〈2号車〉 鉄路に刻まれた、この国のドラマ』(原武史著 朝日新書 2023年刊)         

本書は、著者が朝日新聞に連載したコラムをまとめたものだ。皇室、文豪たち、駅弁や駅前食堂などいずれの話題も鉄道に関係している。「鉄学者」と自称するだけに、当時の時刻表を調べ尽しており、行き先、便名、時刻などはきわめて正確だ。これは、著者が高く評価する松本清張の小説における手法に通じている。また、車窓からの景色、車内の乗客の様子、その土地の人びとの様子なども良く書き込まれている。

1コラム、新書3ページという短い文なのでひとつの話題を掘り下げることはできないが、起承転結がはっきりしていて論理の展開が明瞭で、作文やエッセイの書き方の手本になるような見事な文章だ。

そこに鉄路があるから、人々は様々な想いを抱く。鉄道が無くなってしまうと、このような思いを抱くひとや、それを文章にしたためるひともいなくなってしまうだろう。あらためて鉄道はいいなあと思う。

本書を読んでいると、自然に北海道のことを考えてしまう。不採算路線はどうなるのか。新幹線が開通した後に並行在来線をどうするのか。本州と道内を結ぶ貨物列車は存続できるのか。鉄路が廃止された後の代替交通手段をどうするのか。北海道の鉄道には課題が山積していて中々解決策が見当たらないのも周知の事実だ。

鉄道の存続には採算も重要なので仕方がない課題ばかりだが、北海道からレールが剥がされてしまうと、これからは旅情を題材にしたエッセイや物語は生まれにくくなる。時間短縮には最も有効なのは新幹線だが、トンネルだらけの旅は楽しいのだろうか。僕は、それとは真逆の、ノロッコ列車のようなスピードを落として、車窓からの風景をゆっくりと楽しむ乗り方があってもいいと思う。

一度レールを剥がしてしまうと二度と元に戻ることはないだろう。なにか工夫はないのか。素人の思いつきだが、都市間を結ぶ幹線以外のローカル線は。車両を思いっきり軽量化した構造にして、列車スピードも落としたら、線路の整備レベルを低くでき、線路維持の経費を減らせるのではないか。

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松村圭一郎 『小さき者たちの』 水俣 文化人類学

2023-06-13 13:51:20 | Weblog

6月11日18時55分、北海道では久しぶりに緊急地震速報が流れた。「苫小牧沖で地震 北海道 東北で強い揺れに警戒してください」。その後の気象庁からの発表では、「震源地は浦河沖で震源の深さは136km、地震の規模を示すマグニチュードは6.2」と。僕の科学的な浦付けのない直感では、苫小牧沖を避けたかったのではないかと。苫小牧沖ではCCS(二酸化炭素の封じ込め)を実施している。

 

『小さき者たちの』(松村圭一郎著 ミシマ社 2023年刊) 水俣 文化人類学  

著者は、エチオピアを研究のフィールドとする文化人類学者である。僕は、人類学に対して功罪両方のイメージを持っている。「文化人類学の実践も、一歩間違えば、植民地主義的で暴力的な征服と支配の実践なってしまう。」(『「人新生」時代の文化人類学』(大村敬一ほか著 放送大学教育振興会 2020年刊 27ページ)人類学が列強による植民地政策の先棒を担いだという事実がある。この国でも先住民族であるアイヌの墓を掘り返し、骨格の特徴などを研究している。

一方、国家なき社会のイメージを追い求めている僕は人類学の成果に期待を持っている。人類の初源を探求していくことによって、現在を乗り越えるオルタナティブな人びとの在り方、将来社会の構想に繋がるのではないかと思っている。人類学の研究によって「国家なき社会」が見えてくる。

書名の「小さき者」という言葉使いに違和感を抱いた。人々に対する著者の尊大な視線も感じた。僕は、故郷の釧路にかつて暮らした人びと、また今も暮らしている自分と同じ名もなき人びとを指して「小さき者」とは呼ばない。著者のどこか上から目線を感じた。著者によるエチオピア研究の成果は読んでいないが、どのような視点からなのか少し危惧を抱く。市井の人々は小さくも大きくも無い。置かれた環境の中で懸命に生きているのだ。

著者は自身が生まれ育った熊本の過去、現在の人々の生活を知るため、関係文献を読んだという。水俣病患者と関わった石牟礼道子、原田正純、土本典昭、川本輝夫らの著作、天草については森崎和江らの著作である。その結果、著者は本書の『おわりに』で「私は日本のことを、自分たちのことを何も知らなかった。」(P201)と述べる。

フィールドワークが文化人類学の基本的手法なのに、著者が熊本に実際に足を運んで歩き回った形跡はない。ただ、文献を読みその要約と少しの感想を記しているだけだ。そこに、社会のあり方についての展望や問題提起は伺えない。ただ、立ち尽くしているだけだ。もう少し、著者自身の内部で咀嚼してから考え方を表明するべきだったと思う。書籍化は少し早すぎたと思う。

 

 

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「経済クラッシュ」ノオト その13 河村小百合 『日本銀行 我が国に迫る危機』 日銀債務超過 財政破綻  

2023-06-05 14:03:05 | Weblog

1ヶ月ほど、ミシェル・アンリの思想「〈私〉の在りかを探る」について考えていた。スポンジに吸収するような若々しい頭脳ではないが、68歳の春の一時期にひとつのこと没頭できたという経験は、これからもずっと覚えていると思う。

 

「経済クラッシュ」ノオト その13 『日本銀行 我が国に迫る危機』(河村小百合著 講談社現代新書 2023年刊) 日銀債務超過 財政破綻        

○異次元の金融緩和を維持し続けるとどうなる?

・アメリカなど先進国では、2020年には新型コロナで経済が悪化したことに対処するために一時的・緊急的に金利を引き下げた(ほぼゼロ金利)。

・主要国の金利の推移を見ると、2021年頃から経済が回復に向かい物価が急上昇、そのため2022年春頃から金利を引き上げて金融の引き締めを行っている。その中で唯一日本は超金融緩和を維持している。

・お金はリスクを考慮しなければ「金利の低い」ところから「金利の高い」ところへ流れていく。海外の金利引き上げにより、内外の金利差が大きくなり、円を売ってドルを買う動きが加速し、「円安」(2022年春には1ドル=115円が10月には1ドル150円に)や物価上昇(消費者物価指数(前年同月比、上昇率)2023年1月で4.2%)につながっている。さらに海外との金利差が広がると物価がまだ上がる可能性もある。

・現状の異次元の金融緩和をどうするのかについて、日銀植田新総裁は、就任前の本年2月24日に、「(日銀の)金融政策は適切、金融緩和を維持し企業が賃上げできる環境を整える。物価目標2%実現が見込まれる場合には、金融政策の正常化に踏み出すことができる」と微妙な言い回しをした。正常化に踏み出すとはどういうことなのだろうか。

 

○それでは、金利を上げるとどうなるか?

・日銀内田真一副総裁(3月20日就任)は3月29日に、長期金利が2%上昇した場合、日銀の保有する国債に生じる含み損が約450兆円になる試算を示した。

・なお、現在の含み損は2022年12月末時点で約9兆円。これは、長期金利を0.25%から0.5%に引き上げことによって発生した。

・黒田総裁(3月16日)は、国債は、満期まで持つと元本が戻り、利子も付く。すなわち「時価評価をしていないので(日銀の)資産がマイナスになる可能性は極めて少ないと思う」と述べた。

 

○日本銀行(本年3月20日時点)バランスシート

【資産】

国債(約581兆円)・・金利が付かない情況

共通担保オペ(約97兆円)

その他(ETF等)

【負債】

発行銀行券(約122兆円)

当座預金(約534兆円)→日銀が民間銀行から預かっているお金。日銀が民間銀行に利子を支払う(2008年から)

・金利の上昇で国債から得られる利子よりも銀行に支払う当座預金の利子が上回れば赤字(債務超過)になる可能性がある。

・(河村氏)金利を上げないといけない局面になれば、当座預金の金利も上がることになるため、日銀が民間銀行に支払う利子も増え日銀の負担が増える。結果的に日銀は赤字になり債務超過になる可能性がある。

 

○日銀が債務超過になるとどうなるか?(河村氏が指摘する最悪のシナリオ!)

・日銀が、当座預金約534兆円(3月20日時点)の金利を1%上げると、支払う利子が約5.3兆円増える。日銀の自己資本は11兆円なので約2年で債務超過になる!

・債務超過になると、

①中央銀行が赤字になり円の価値(信用)が大きく下がる。

②現状のように国債を買い入れ続けると日銀の財務はさらに悪化する。

③日銀は国債の買い入れができなくなる。

④国債に頼っている日本の財政は破綻する。

 

○日銀が国債を買い入れできなくなると日本の財政はどうなるか?

・2023度予算において、国債の新規発行額は約36兆円、歳入の31.1%を借金に頼っている。(僕の補足:この国の現状を家計に例えると収入の3分の1を新たな借金に頼り、過去の借金の返済をしながらも借金残高が増えている状態にある。サラ金地獄状態なのだ。)

・(河村氏)このような情況になれば、政府は国債発行額を減らさなければいけなくなる。いや最悪の場合、新規発行は一切できなくなる。そうなると財源が無いので社会保障や防衛費などのすべての予算を一律4割カットしないと収まらない事態になり得る。(僕の補足:そこに待ち受ける情況は、敗戦時の日本経済のような混乱だ。)

 

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