晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『オーロラ交響曲の冬』

2010-01-15 21:51:21 | Weblog
 『オーロラ交響曲の冬』(山口泉著 河出書房新社 1997年刊)

 山口泉氏が子ども向けに書いた一冊。舞台は、20世紀が終ろうとしている長野県内のある街。12歳の主人公は友人たちと合奏団を結成していた。その中には在日の子どもがいた。そこに、チェルノブイリ原発で被爆した子どもたちが療養のためやってきた。外国人の中の一人が交響曲を作り、一緒に演奏する中でみんなが友人になったというストーリー。

 世の中には差別があってはいけない。しかし現実には差別はある。原発は、怖いものである。でも、現実には存在し、事故も起こっている。この国で、在日ということを明らかにすることは勇気がいる。隠している人も、表明している人もいる。作者は、表明してこそお互いの気持ちが分かり合えるという。

 山口氏のこの著作は、子ども向けとはいえ、ストーリーは嘘や偽りの全く無い世界で、極めてきれい事に終始している。

 そこで教育論を考えた。子どもの成長を考えた場合、悪質な環境を遮断し、良質な環境の中で育てるべきか、それとも現実そのままの中で育てるべきか。

 例えば、子どもに見せるテレビ番組を選ぶ。親が子どもの友人を選ぶ。良質の本を与える。いわゆる有害情報から隔離する。山口泉の本を読ませる。

 さて、子どもはどう育つか。人間理解に歪みが生じるだろう。疑うことを知らない人間。人間の持つ多面性がわからない人間ができるであろう。

 山口泉的世界観の行き着く先は破綻と考える。

 なぜなら、子どもたちはきれい事では治まらないこの現実社会の中で、とにかく生きていかなくてはならないから。

 


 
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