晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『鴎外の怪談』

2014-12-11 20:50:11 | Weblog

 『鴎外の怪談』(二兎社公演 永井愛作・演出)

 2014.12.9 北広島市芸術文化ホール 19:00開演、21:45終演 15分休憩あり

 この芝居は、有名作家としての森鴎外、本名森林太郎は陸軍軍医総監。幸徳秋水ら無政府主義者、社会主義者がフレームアップされたと言われている大逆事件に際し、軍人のトップとしての職責と表現者としての鴎外の間で悩む姿を描く。

 登場人物たちが導入部でゴツゴツとした長台詞を並べる。聞き逃すまいとするが、耳が慣れてくるまで随分と疲れる。笑う場面ひとつない生真面目なやり取り。作者は特定秘密保護法を意識しているのではないか。この時代に危機を告げようとするストレートなメッセージ。

 私は、新劇と言うべきか、正統派演劇と言うべきか、このように硬派な芝居をこれまで観たことが無かった。そう、ずーっとアングラ、それもテントものばかりでしたから。笑いを交えて、ダジャレを言って、舞台全体で身体を使って動き回って、世の中に対しては真正面から向き合うというよりも斜に構えて、世の中に正しいことなどどこにも無いよと。

 この芝居を観ながら、私も含めて観客は我が内なる森林太郎と内なる森鴎外を感じたであろう。会社や組織の中で役割を演じなければならない自分と、本当の自分はもっと違う自分がいるのだと思う自分である。そんなの当たり前のことだろうと思った人もいたと思う。

 嫁と姑、友情、立身出世、人生観など様々なテーマが織り込まれていたが、私は、作者が若かりし永井荷風に言わせた、「西洋から様々な思想が入ってきたが、この国の人々の中にある考え方は変わらないのさ」というセリフが最も印象に残った。明治のこの国の人々の考え方も、現代のこの国の人々のありようも変わらない連綿と続く何かをもう少し掘り下げてほしかった。

 金田明夫氏をはじめ、力のある役者さんばかりだったので、舞台としてのまとまり具合は素晴らしかったと思うが、訴えかけられる観客はそんなに素直なひとばかりでは無いよというところをもう少し意識してほしかった。見終って、どっと疲れが・・・

 

 

 

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