釧路の太平洋石炭販売輸送臨港線が6月にも廃止されるという。春採の選炭場から知人(しれと)間4km、春採湖の湖畔をとおり、千代ノ浦海岸のふちを行き、釧路港の知人まで、地元では「臨港鉄道」と呼ばれている。1963年まで旅客輸送も行っていたそうだ。今より路線も長かったはずで、こどもの頃、春採から南大通まで乗った記憶がある。アイスホッケーのクレインズも廃部されるなど故郷くしろからの寂しいニュースだ。
『坊っちゃん』「漱石全集第2巻 その2」(夏目漱石著 岩波書店 1965年刊)
『坊っちゃん』は、日露戦争が終った直後の明治39(1906)年4月1日に書かれているから、今から100年以上も前のことだ。漱石が中学校教師として四国松山に赴任した時の体験を基にしたということだ。
主人公の坊っちゃんは、中学校の教師として初めて大人の世界に飛び込んだ。全く知らない田舎で、知らない人の中で生活を始める不安。しかし、坊っちゃんは都会の誇りを全面に掲げ、弱みを見せない。
自分が受けたその人に対する第一印象が果たして正しいのか。その人の言っている他人の評判をにわかに信じていいのか。関わりが深まる中で、徐々に人物を理解できるようになり、人間関係も次第にできあがってくる。自分にとって誰が信用できて、誰に用心しなければならないか。
これらは多くの人に共通する体験だと思う。入学、就職、転居・・人は人生の中で何回もその人を取り巻く情況が変わる。その度に坊っちゃんと同じように人の中で、自分のポジションを決めていく。生きていくうえで必須な動物的なカンというものだろう。
正義感の強い坊っちゃんは、ときどき周囲とぶつかるが、「いつでも辞めてやる」とどこかに逃げ道を用意している。これも僕らにはよくあることで、強がっていてもそうしないと今にも挫けてしまうからだ。そんな時、主人公は東京に残したお手伝いの清さんをなぜか母代わりのように思い出してしまう。ここがつっぱてるように見えるが坊ちゃんの坊ちゃんたる所以である。
登場人物たちはそれぞれのキャラが立っていて、100年前も今も素直に面白い青春小説だ。
「漱石や鴎外も読まないで吉本隆明を読んでわかったなどと偉そうにしている奴がいる。」という言葉を噛みしめながら