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ジェームズ・C・スコット 『反穀物の人類史』 ⑤ 「国家を考える」ノオト その7 初期国家 

2021-01-20 14:56:06 | Weblog

潮目が変わるという言葉がある。さて2021は一体どのような年になるのだろうか。僕は、様々なことで「潮目が変わる年」になると思う。コロナの流行は?日本(世界)経済は?政治は?僕らの生活は?・・当然それらも変わるだろうが、もっと総合的、俯瞰的な観点から見て我々人類が世界をどのように認識しているかに関わる大変革があるのではないかと予測したい。

 

『反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー』(ジェームズ・C・スコット著 みすず書房 2019刊)⑤ 「国家を考える」ノオト その7    

『第4章 初期国家の農業生態系』(P109~P138)から学ぶ。

(通説)国家は豊かな地域で興った。狩猟採集から定住、そして国家の出現は直線的な変化だった。

(著者)定住した人びとが作物化した穀物を育て、1,000人以上の住民からなる町での商業活動は、国家らしきものが登場する紀元前3300年頃よりも2000年も前(新石器時代)から始まっていた。

(著者)国家らしきものには、税(穀物、労働力、正金かは問わない)の査定と徴収する役人、分業(機織り、職人、聖職者、金属細工師、官吏、兵士、耕作者など)、また王を頂点とし神官や首長などの社会的階級の存在、町が城壁で囲まれていることなどの特徴があった。また国家づくりに必要なのは富であり、富は収奪が可能な穀物と権力のもとに動員できる人口だった。

(著者)国家の臣民としての耕作民が一定の地域に集中した理由は、紀元前3500―2500年頃に海水レベルが低下し乾燥化が進んだためであった。耕作可能地が急激に減少することで採集や狩猟が困難になり、水の比較的豊かな場所に人口集中が起り国家形成につながった。しかし一方では、不安定な降雨、洪水、害虫の攻撃、作物・家畜・人間の病気などによって、農耕を捨て狩猟採集や牧畜生活に戻った住民もいた。

 

(P120)「穀物が国家を作る」では、初期国家が雑穀を含めた穀物を基礎としていたことを説明している。

(著者)なぜなら穀物だけが、集中的な生産、目視、分割、税額査定、貯蔵、運搬、収奪、地籍調査、保存、配給に適した作物だったからだ。国家の役人が農地を測量し、収穫量を推定、税を見積もる。食生活において穀物に替わるものがない場合には国家の形成が可能になってくる。反対に、狩猟採集民のように生業がいくつかの食物網にまたがっている間は、国家は起こらない。また、穀物生産(農耕への課税)が止まれば、国家は弱体化する。初期国家が生成する頃は、政治の中心地の外側には世界人口の大半が移動性の人びと(遊牧民、狩猟採集民)がいた。

(*僕)生活が豊かであれば人びとは変化を望まない。1日3,4時間程度の労働で食べていくことができた狩猟採集生活をあえて自ら捨てる理由はない。一方、国家らしき権力のもとで定住し農耕生活を営むことはそれほど楽なことではなかった。そこでは労働の長時間化、生産物が税として徴収されるなど過酷な暮らしが待っていた。そのため、国家を捨てて狩猟採集に戻る事例もあった。

(*僕)穀物はその特徴として2面性を持ち、重要な食糧資源であるとともに、権力による収奪の手段でもあった。それが書名の反穀物という意味だと考える。

 

(P127)「壁が国家を作るー防御と閉じ込め」では、城壁の役割を説明する。

(著者)城壁は、外部から遊牧民を入れないためであるが、重要なのは逆に、国内の耕作(納税)者を外に逃亡さないために築かれたということだ。人びとを決まった場所に押し留め、承認なしには移動させなかった。

 

(P129)「文字が文化を作るー記録と識字力」では、国家と文字の関係を説明する。

(著者)国家に必要なのは記録と登録と測量だ。そして文字の登場と国家の出現は同時期であった。国家を作ろうとする者が臣民の管理のために必要な表記法として。記憶や口承を超えた文字を発明した。また、土地と人びとを収奪するために統計が必要だった。

 

 

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