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野口英世はなぜ間違ったのか(41)

2014-05-21 12:57:45 | 野口英世
英世はエクアドルのグアヤキルで黄熱病と思われる患者からレプトスピラを分離して、それを黄熱病の病原体であると考えたが、まもなく、それは間違いであったと気が付いた。その理由は「野口英世はなぜ間違ったのか(40)」に記載した。
自分の間違いに気が付きながら、英世はその後「黄熱病の病理学」のタイトルで14編の論文を書いている。間違いに気が付きながら論文を書くと、当然不自然な記載が見られると思われるので、改めて各論文を見直してそれらを検証してみようと思う。



Ⅱ報:黄熱病の病原体を発見し、それはモルモットに感受性がある。
この論文は1919年3月27日に受付されている。Flexner 宛の手紙(ワイル病の免疫血清がこの黄熱病病原体によるモルモットの感染を防御する)は1918年8月17日に書かれているので、この間、7ヶ月以上ある。この間にどのような状況が進行していたのか、後に考察してみたい。
Ⅱ報では、自分の発見した黄熱病の病原体は感染性黄疸(ワイル病)の病原体に似ているとの記載はあるが、ワイル病の免疫血清に反応したことは伏せられている。

Ⅷ報:黄熱病の病原体としたicteroidesとワイル病の病原体であるicterohaemorrhagiaeの免疫学的検討を行った。
ここでicterohaemorrhagiaeの免疫血清はワイル病の病原体として由来の明確な日本株やアメリカ株、ヨーロッパ株を用いて作製したものを用いず、わざわざグアヤキルでネズミから分離した株で作製したものを用いている。しかも日本株等で作製した免疫血清を既に持っているのに、それらを用いていない。これは明らかに不自然な実験のやり方である。
日本株等で作製した免疫血清はFlexner への手紙に書いたように自分の発見した黄熱病の病原体が反応することを知っているので、それらを使用できなかったのであろう。
英世の実験成績が正しいとしたらグアヤキル株の血清型はicterohaemorrhagiaeではなく、別の血清型であったと思われる。どうしても自分の見つけたレプトスピラはワイル病のレプトスピラとは異なることを述べるためにはグアヤキル株は都合が良かったのであろう。

Ⅸ報:この論文は非常に雑な論文である。
icteroides株を接種したモルモットを蚊に刺させ、その蚊をすり潰したらレプトスピラがいたというもの。黄熱病はシマ蚊が媒介することが分かっていたため、強引に行った実験である。本当にレプトスピラが蚊の体内にいたのであれば、そのレプトスピラが先にモルモットに接種したものと同じものである事を証明しなければならない。そのためにはそのレプトスピラを培養し、免疫学的にicteroidesであることを確認する必要があるが、それらを全く行っていない。しかも対照としてモルモットを刺していない正常な蚊をすり潰した試料も調べてレプトスピラがいないことを確認しなければならないが、それも行っていない。これら数々の行わなかった実験については、英世は当然行わなければならないことを知っていただろうが、icteroidesがワイル病の病原体である事を知っていたため行わなかったのであろう。

Ⅹ報:この論文では改めてicteroidesとicterohaemorrhagiaeとの免疫反応を詳しくみている。
それぞれの免疫血清にそれぞれのレプトスピラを反応させ凝集試験、Pfeiffer反応を行っているが、結果は同種の血清には反応するが、他種の血清には殆ど反応せず、交差反応は見られなかった。この結果は英世が先に書いたFlexnerへの手紙の内容とは異なることからデータの捏造がなされたといわざるを得ない。
しかし、この捏造は「野口英世はなぜ間違ったのか(34)」に書いたようにタイラーとセラーズによって明らかにされる。彼らは英世と同じ実験を行い、これらのレプトスピラは血清学的に同一であることを証明したのである。すなわち、英世が黄熱病の患者から発見したicteroidはワイル病の病原体のicterohaemorrhagiaeと同じものであり、黄熱病の病原体ではないと突きつけたのである。

以上いくつかの論文の不自然な点を指摘したが、それでは、なぜ英世は自分の発見したレプトスピラはワイル病の病原体であることを初めから知りながら、しかもデータの捏造をしてまでも突き進まなければならなかったのであろうか。後ほど考察してみよう。
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