トヨタとホンダが1日違いでFCV(燃料電池車)を発表。ホンダは11月17日、東京・青山の本社で『FCVコンセプト』を、トヨタは同月18日、日本科学未来館で“世界初の市販FCV”となる『MIRAI』を公開した。「水素元年」といわれる2015年を目前に両社が想いを伝えた。
「FCVは2015年度中に発売する」というホンダは、公開したクルマの価格や販売時期については明言を避けた。その翌日に発表したトヨタは、複数台の実車やカットモデルを展示し、価格や販売チャンネル、生産工場(愛知県豊田市の元町工場)などを発表。走行性能や安全面などについても訴求した。
水素ステーションなどのインフラ整備についてのかかわり方も両者で違いがあった。ホンダは岩谷産業と共同で、水素製造から充填までの主要構成部位をパッケージ型に収納、10フィートコンテナほどに小型化した「スマート水素ステーション」を開発。
いっぽうトヨタは「餅は餅屋」を貫く。加藤副社長は「トヨタが直接インフラに取り組むということは考えていない。『餅は餅屋』で、いろいろな事業体と連携し、整備状況などを見ながら運営などにかかわっていきたいとは思っている」と語った。
両社の水素社会へ向けた取り組みに違いも見られるが、「官民一体となってつくる」という想いは同じ。ホンダの伊藤社長は会見で「正直に言いますとね」と付けてこう語った。
「クルマっていうのは数をつくれば必ずコストが下がる。FCVは水素をどこで入れればいいかという悩みがある。これまでのように、どこにでもガソリンスタンドがあるというなかで“FCVをつくる”というレベルではない。困難はあるが、1日でも早くクリーンエネルギーに変えていかなければならないという想いがある。
2020年は言い過ぎかもしれないが、2030年にくらいにはFCVがいっぱい走っているようになればいい」
両社は外部供給電源システムの一例を紹介するコーナーを設置していた。ホンダはFCVのエネルギーで沸かした湯でコーヒーを淹れてふるまい、トヨタは電気ヒータを灯してその効果を示していた。ある雑誌記者は、ホンダのコーヒーを片手に「詳細は非公表だけどコーヒーは好評。来年には2社のFCVが街を走る姿が見られるだろう」ともらした。
経済産業省がことし6月にまとめた「水素・燃料電池戦略ロードマップ」では、水素社会実現に向けた3つのフェーズを提示している。そのフェーズ1に、「足元で実現しつつある、定置用燃料電池や燃料電池自動車の活用を大きく広げ、我が国が世界に先行する水素・燃料電池分野の世界市場の獲得を目指す」と記している。