私は
自分があまりにも真理子に対して
失礼な気持ちでいたことを反省して
自分でも驚くような
自分でも驚くような
ある行動を起こした
夏休みが終わった頃
杉山君の学校前で
夏休みが終わった頃
杉山君の学校前で
杉山君の気持ちを確かめるべく
ひとり待ち伏せしたのだった
私は人の顔を覚えるのが得意だ
私は人の顔を覚えるのが得意だ
一度会った人は
ほとんどと言っていいほど覚えている
先日の海で遊んだ時
先日の海で遊んだ時
啓太が連れてきた何人かのお友達が
門を出てきた
相手達は
相手達は
私のことなど忘れているようで
気にも留めずに下校して行った。
その中でひとり
その中でひとり
前田 祐作だけは
私のことを覚えていたようで
「あれ?この間 海に来たよね?
「あれ?この間 海に来たよね?
確か千秋ちゃんだったね」
と立ち止まって声をかけて来た
「誰かと待ち合わせ?」
「誰かと待ち合わせ?」
気になる様子でたずねてきたが
私は曖昧な笑顔で会釈して
心の中で
心の中で
“早く帰ってちょうだい”と思っていた
しばらくして
しばらくして
待ち人が啓太と一緒に出てくるのが見えた
私の心臓は
私の心臓は
破裂しそうなほどドキドキしていた
案の定啓太が私を見つけて
案の定啓太が私を見つけて
「やぁ千秋ちゃん今日はどうしたの?
誰か探しているの??」
私は迷った
私は迷った
妹の気持ちをこの人の前で
明かしてしまってもよいものかどうか?
杉山君は何も知らずに
杉山君は何も知らずに
ニコニコ微笑んでくれている
あああ、どうしよう・・・・
“神様はこんな時
私を見捨てずにいてくださった”
啓太が校舎の方から
啓太が校舎の方から
別の友達に呼びとめられのだった
「悪い!亮介 先帰ってくれ!
千秋ちゃんまたね」
と言いながら踵を返し
と言いながら踵を返し
再び校内へと消えて行ったのだ
杉山君は
杉山君は
私がだれを目当てに来ているか
なんてことを知らないので
ちょっと首をかしげると
小声で
小声で
千秋ちゃん
ここは男子校の前だよ
しかも君は結構かわいいんだ
だからみんな
だからみんな
物珍しそうに君を見てる
気をつけた方がいいよ
気をつけた方がいいよ
中には強引に声をかけるヤツもいるからね
そう言われてハッとした私は
そう言われてハッとした私は
かなり大胆な行動を
とっていたんだと思い
急に怖くなってきた
「実は私
「実は私
私が待っていたのは杉山さん
あなたです」
そう言った私を
そう言った私を
目を丸くして見つめた杉山君は
「え、そうなの?
僕に告白でもしに来たの?
君って見かけによらず
君って見かけによらず
勇気があるね」
と、にこやかに笑ってそう言った。
「いえ、違うんですっ!
「いえ、違うんですっ!
そうじゃなくて」
私は慌てて大きく否定した
その姿を見て
その姿を見て
“なんだそうじゃなかったのか~”
と、冗談なのか?
本気なのか?見当もつかない表情で
「とにかく話を聞こうじゃないか、
「とにかく話を聞こうじゃないか、
ゆっくりできるところへ行こう」
そう言うと さっさと歩きだした
そう言うと さっさと歩きだした
私は小走りで追いかけながら
必死で後を追った
こんなところにカフェがあったのか
こんなところにカフェがあったのか
と思うほどの場所に
隠れ家的なその店はあった
制服での寄り道を
制服での寄り道を
禁止されている私は
少しおどおどしていたが
その様子を 察して
「ここは大丈夫だよ
「ここは大丈夫だよ
この店のマスターは僕の叔父さんでね
だからいざという時は言い訳が出来る」
そう言って私の気持ちを
そう言って私の気持ちを
そっと和ませてくれた
運ばれてきたコーヒーを
運ばれてきたコーヒーを
ひとくちゆっくりと飲むと
「で、話というのは、何かな?」
「で、話というのは、何かな?」
と、やさしく声をかけてくれた
私は緊張のあまり
私は緊張のあまり
「単刀直入に聞きます!
杉山さんは、今好きな人はいますか?」
と直球で聞いてしまった。
少し驚いたような顔で、
少し驚いたような顔で、
ふっと微笑むと
「千秋ちゃん?君はさっき
僕に告白にしに来たのではない
僕に告白にしに来たのではない
と言った
ということは
それを聞いてどうするのかな?
どうして聞きたいのか
教えてほしいな」
私はどのように言えばいいのか
私はどのように言えばいいのか
わからなかった
この時杉山君が
この時杉山君が
気を悪くしたんじゃないか?
怒らせてしまったんじゃないだろうか?
怒らせてしまったんじゃないだろうか?
と、そんなことばかり考えていた
どうしようかと
うつむいていた時
「千秋ちゃん、僕はね
「千秋ちゃん、僕はね
後、何年かしたら
夢をかなえるために
いろんなことを
犠牲にしなくちゃいけないかもしれない
犠牲にしなくちゃいけないかもしれない
でも今は
あ、もしかしたら
君は大切な友達の為に
僕の気持ちを確かめようと
しにやってきたの?」
この人のことを
この人のことを
真理子が好きになったのが
よくわかったような気がした
杉山君が察してくれたのだから
杉山君が察してくれたのだから
この際はっきりと
正直に話そうと思い
私もゆっくりコーヒーを飲むと
私もゆっくりコーヒーを飲むと
大きく深呼吸をした
「そうです。
あ、でもこれだけは
最初に言っておきますが
今日私が杉山さんに会いに来たことを
今日私が杉山さんに会いに来たことを
真理子は知りません
私が勝手にしていることです。
私が勝手にしていることです。
こんな勝手なことをしたら
もしかしたら
真理子は怒るかもしれません
でも
でも
真理子の気持ちを知っているのに
黙っていることが出来ず
ずい分身勝手な行動に出てしまったと
ずい分身勝手な行動に出てしまったと
後悔しています。
でも・・」
ここまで言った時
ここまで言った時
杉山君が、口を開いた
女の子にこんなことまでさせて
女の子にこんなことまでさせて
僕は罪な奴だな
それ以上言わなくてもいいよ
と笑って
と笑って
「千秋ちゃん僕はね
実のところを白状すると
真理子ちゃんのことが好きなんだ
だから啓太とも仲良くやってるし
だから啓太とも仲良くやってるし
しょっちゅう家にも遊びに行く
あいつ等の家の事情も
あいつ等の家の事情も
だれよりも知っていると思う
真理子ちゃんがね
真理子ちゃんがね
小学生だったころから
僕は知ってるんだよ
確かに好きかもしれない
確かに好きかもしれない
と思ったのは最近なんだ
先月みんなで
先月みんなで
海へ行っただろう?
あの時真理子ちゃんが
妙に僕のことを避けているように思って
気になっていたんだ
気になっていたんだ
なぜだろう?
なにか悪い事でもしたかな?と
考えても思いつかない
考えても思いつかない
しかも自分で
なぜこんなに気になるんだろう?
そこでひとつの答えが出たんだよ
そうか僕は
そこでひとつの答えが出たんだよ
そうか僕は
真理子ちゃんのことが好きなんだ
ってね
じゃぁさ
じゃぁさ
真理子ちゃんが
どうして僕を避けていたのか
千秋ちゃん
千秋ちゃん
君にはなぜだか理由がわかるかい?
わかります
わかります
たぶん
だからこそ
真理子が最近元気をなくして
私は
私は
私が思うこと
多分間違ってはいないであろう
真理子の気持ちを話した
「杉山さん、あなたの夢
あなたがかなえようとしている夢を
真理子は知っています。
あなたが夢をかなえること
あなたが夢をかなえること
それはもちろん真理子が
口出しできるはずもありません
しかも大好きな杉山さんが
しかも大好きな杉山さんが
夢に向かって努力していることも
真理子は、知っているし
叶えてほしいと思いながら
叶えてほしいと思いながら
そうすることによって
自分から遠いところへ
行ってしまうのでは?
ということも彼女はわかっているのです。
芸能人になったら
ということも彼女はわかっているのです。
芸能人になったら
きっと普通の女の子との恋なんて
出来なくなるでしょう?
今自分の気持ちを告白してしまったら
今自分の気持ちを告白してしまったら
きっと困らせてしまう
この気持を
この気持を
受け止めてもらえなかったら
でも受け止めてもらったとしても
長続きできるものでは
長続きできるものでは
ないだろうと
思っているのだと思います。
避けていたというのではなく
避けていたというのではなく
どうしたらいいのか
わからなかったのでは
ないでしょうか?」
言わなくてもいいと言われたのに
言わなくてもいいと言われたのに
結局話の成り行きで
言いたかったことをほとんど話した。
私は決して真理子が
私は決して真理子が
好きだと思っているのだから
付き合ってあげて欲しい
などと
などと
言いに来たのではなかった
ただ単純に
ただ単純に
杉山君に好きな人がいるのか?
いないのか?を
聞きたかっただけだ
もしも
もしも
杉山君も真理子のことを
好きであったらいいのにと
期待していたのだった