心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

星屑の涙・・・13

2013-07-25 09:20:32 | 星屑の涙


「あら・・・? あなた・・・もしかして、真理子さん?」

そう言って声をかけて来たのは、美咲だった

八月に入り毎日“暑い”という言葉ばかりが出るような頃

私は千秋と待ち合わせをするため、南青山のカフェに来ていた

カフェでたまたま隣の席に案内された美咲は、私に気がつき声をかけてきた


「あっ・・・こんにちは、お久しぶりですね」

「こんなところで会うなんて、すごいわね・・・偶然って」

そう言って笑う美咲・・・

“誰と一緒なんだろう? もしかして・・・達也? 達也だとしたらどんな顔するのかしら・・・”

私は、ちょっと悪戯な想像をして一人でこっそり笑った


「真理子さんは、今日はおひとり?」

「いえ、友達との待ち合わせです」

「そう」

「ええっと・・・ 美咲さんは・・・?」

「あぁ私? 私の連れは・・・ふふっ」 

美咲はとても嬉しそうに微笑み 

私の耳元で「大きな声じゃ言えないけれどダンナではないわ」と、言った






ああ、きっとあの時の人ね 千秋ったら早く来ないかしら・・・

そう思うと私は、待ち人が遅いことに少しだけ腹が立った

ふと隣を見ると やはりあの時の男性が、いつの間にかやって来て 座っていた。

隣り合って嬉しそうに話す美咲を見ていると先日の居心地の悪さが襲って来て

千秋の姿を探すふりで会釈をして外へ出た。

そこへ、交差点の向こう側からいつもと変わらない笑顔で笑う千秋が見えた

胸の前で手を合わせ “遅れてごめん!”と合図した

私は小さく手を振り “いいわよ・・・”と

少し目立ってきたお腹をさすりながらやって来た親友を 走らせまいと慌てて走り寄った

「ごっめ~~ん、真理子ぉ~久しぶりの電車だったから一本乗り遅れちゃったのよぉ」

「いいわよ、仕方ないわ妊婦は走れないでしょ? 気にしないで」

「ああ・・・お店出てきちゃったの? あそこのジェラート美味しいのよ食べたかったのにぃ」

「あ、そうなの? あの店じゃなくてもあるでしょ? ジェラート

あそこにはもう今日は戻りたくないわ」

「えっ? どうして? 何かあったの?」

「いいから・・・後で話す 話せば長くなるから、とにかくどこかに座りましょう

お昼まだでしょう? ランチに行こう、あなたどこか美味しいところ連れて行ってよ

こっちはあなたの方がよく知ってるでしょう?」

「あ・・・うん そうね、そう言えばお腹ペコペコだわ」

そう言って何がいいかしら~? とあれこれお店を考える顔の千秋を見ていると

これから、母になる友が頼もしく見えた





星屑の涙・・・12

2013-07-19 09:57:16 | 星屑の涙


「女の方が結構大胆かもしれないな・・・」

その夜の達也はいつもより激しく私を求めてきた

何かをふっ切ろうとでもしているのか、いつもより深いところまで攻めいり

私を満足させることだけに徹していたようで、自分は決して満足しようとしなかった。





「・・・・何が? それって、私のことを言ってるの?」

「いや違う・・・」

「すまない、今夜は少し乱暴だったかもしれないな」

「ふふっ・・・ いいえ、それは構わないけれど、何かあったの?」

私はその理由を多分知っている、それでも知らぬ顔で聞いてみた

「いやぁ~そうだな・・・まぁ、どうでもいいことだよなこんなこと、

真理子に言ったら笑われるかもしれないがな・・・

昨夜、うちのヤツ帰って来なかったんだよ

帰ってこないと言うのは違うな

帰っては来たが、朝方だった 昨夜学生時代の男たちと一緒だったはずだ

オレは寝ていて、気がついてないと思ってやがる でもな、ちゃんと知っていたんだよ」

さすがに私もその席にいたとは言えなかった


「あなたも、今夜こんなことをしているんだからお互いさまなんじゃないの?

っていうか・・・・やはり男の人って言うのは、自分のことは棚に上げても

奥さんの浮気だけは許せないのね? まぁ・・・そりゃぁそうでしょうね・・・」

嫌味で言ったつもりではなかったが、達也はどうとったのか・・・

その後しばらく考え込んでいた。

そう言えば、昨夜飲んだ佐藤さんのところも 奥さまの浮気が原因で別れたと言っていた

いつの時代も女はおとなしく家にいればいいと思っている男が多いのだろう

“まさかうちの嫁に限って”などと高を括っているのだろう











黙って考え込んでいたのかと思うと、ニヤリと笑った達也の手がまた私に伸びてきた






美咲は、達也と私のこと(存在)を知っている

私たちの関係が始まってすぐに気がつき

ダンナの浮気相手に電話してくるような女性だ

達也にしてみれば、なんやかんや言っても妻が自分を・・・

自分だけを愛しているものだと思っていただろう

かすかな疑いが、事実としてわかった時 男の方がうろたえるのかもしれない





そんな事があってからも私は達也と定期的に会い

会うたびに密な時間を持つようになっていた

肌が触れ合うと寂しさが少しは軽くなるような

そんな錯覚を起こしていたのかもしれない

気がつけばそんな関係を持ってから2回目の夏が近づいていたのだった























星屑の涙・・・11

2013-07-18 10:21:02 | 星屑の涙

「真理子、いい子にしてたかい?」

「リョースケ もう、いつまでも子供扱いしないでよ!」

「それだけ元気があれば大丈夫だね・・・」

「えっ リョースケ・・・何を言ってるの? 待って・・・どこへ行くの?」

「真理子は連れて行けないところだよ・・・」


“亮介!!私を置いて行かないで! 待って・・・”



また同じ夢を見た・・・

泣いていたの?私・・・

時々見る同じ夢、追いかけても追いかけても追いつかない

私を置いて星空へ消えた人の夢







昨夜は久しぶりによく飲んだ

イチロ兄のお友達たちは、皆気さくで ずい分年は離れているはずなのに

私も遠慮なく話すことが出来た

最後まで一緒だった 佐藤 浩さんと、林 圭祐さん

二人とも独身だ

気ままに過ごしているのかと思ったが

佐藤さんは一昨年離婚したそうで、原因は“妻の浮気”

それでもそのことを面白おかしく話す佐藤さんは、

最後に“女はこわいぜぇ でも好きだなんだなぁ”と言いながら笑って手を振ってくれた

もう一人の男性 林さんは、今までに結婚歴はなく

イチロ兄と、佐藤さんに “こいつはもしかしたら・・・こっちなのかもしれない”

と、冷やかされていたがご本人曰くどうやら“そっち・・・”ではないらしかった

まぁ私にしてみればどちらでもよい話だが、十分笑わせて頂いたし 楽しい夜だった








心のどこかで何か引っかかることがあった時、亮介の夢を見るのだが

やはり美咲に会ったことが心に残っていたのだろうか・・・












星屑の涙・・・10

2013-07-09 09:10:58 | 星屑の涙

美咲が手を握り見つめるその先にいた男性は

達也とは全く正反対な雰囲気を持つ人だった

“元彼とつきあっている” と達也は言っていたが

達也自身それがどんな人か知っているのだろうか

線の細いおとなしそうな・・・良い言い方をすれば優しそうだが

悪い言い方をすると、神経質そうな

そしてこれは私の勝手な想像だが、人妻と付き合うようなタイプではない気がした




そっと見ているつもりだったが、イチロ兄に気づかれ

耳元で 「こらッ!真理子 見すぎだぞ、気になっただろうが知らん顔をしておけ

あいつ等はな、その・・・むかし付き合ってたんだ 今はどうなのか知らんがな」

 と、神妙な顔で説明してくれた。 イチロ兄は案外真面目な人なのだ

“知っている”とは言えないので 「へぇ~いろいろあるのね」 と素知らぬ顔で見て見ぬふりをした

しばらくして誰かが「じゃぁそろそろ、お開きにするとしよう またそのうち会おうな!」

と言って立ち上がったので、慌ててイチロ兄について外へと出た


夜風が気持ちよく明りの少ない路地から見上げた空はいつもより少し多めに星が見えた


「うわぁこんな街中でも星が見えるのねぇ、お兄ちゃま~」と見上げて言う間に

皆はそれぞれ勝手に次の場所へと消えていた

美咲とあの男性が2人でどこかへ行ったのか、それとも帰ったのかわらなかった





イチロ兄の隣には二人の男性が残っており

“もう一軒行こう” ということになったらしい

私は今度こそ遠慮しようと思ったが、「真理子ちゃんもおいでよ」と誘われ

イチロ兄も 「そうだぞ、真理子も一緒に行こう 遠慮はいらん 

こいつらは二人とも花の独身貴族だ、たまにはパッと気晴らしすればいい」

イチロ兄は精一杯気を使ってくれているに違いない

帰りを待つ人もいない身・・・

今夜は、さっきの居心地の悪さを払拭してから帰ろうと思った






星屑の涙・・・9

2013-07-06 10:34:18 | 星屑の涙


「で、そーいちろう? そろそろ紹介して下さらない?」

しびれを切らしたのか、興味津々なのか・・・

とうとう美咲が言いだした

男性陣は、勝手な想像と男同士の暗黙の了解とも言える沈黙を保っていたのに

とかく女は興味深いとでもいうのか・・・

イチロ兄は、わざとらしく含みを持たせ

「う~ん、そうだなぁ・・・簡単には教えられないなぁ」などと楽しんでいる様子

男性たちは表面にこそ出さないが目だけは輝いている

「なによ! もったいぶらないで早く言いなさいよ!」

「まぁまぁ・・・野暮なこと聞くなよ美咲・・・そう言えばこの間!!」

誰かが見かねて話をそらそうとしたところでイチロ兄は笑いながら

「あはは・・・悪い悪い! その、この人はだな・・・森下家のお姫様だよ」

「はぁ? お姫様って・・・何よ?」

「あぁ あのな、真理子はオレのいとこだよ

うちの家系は男が多い うちの子たちも男ばかりだし

真理子の・・・あ、この人のアニキんところの子達も男ばかりで

うちの弟のところの三番目がやっと女の子らしいが、まだ腹ん中だ

生まれてこないとわからんだろう?

オレら従兄弟の中では唯一の女の子だし、とにかくかわいいお姫様なんだよ

今でもそうだが、昔からかわいくてな

お姫様みたいにキラキラしてた

オレは真理子が大好きで、年はずい分離れていたが相手をするのがとても楽しかったんだよ

今ではなかなかお相手していただけないがな・・・」


私はイチロ兄がそんな風に見守ってくれていたんだと改めて嬉しく思った

それを聞いた周りの男性陣は、肩透かしにでもあったようにちょっとだけ残念そうな

それでいて、ホッとしたような 微妙な雰囲気を醸し出していた。

美咲だけははっきりとした口調で

「ふんっ 面白くないわねっ! 

てっきりいい人なのかと思っちゃったのに、なぁんだ・・・そうなのね」 

とかすかな笑みを浮かべただけでその後何も聞かなかった





私の居心地の悪さは変わらなかったが、それを聞いて男性陣たちが俄然張り切りだした

「真理子ちゃんは、今彼氏は?」とか

「この中じゃぁ どいつがタイプ?」 だとか・・・皆子供みたいに楽しそうだった

私はどの質問にも笑顔で返答をしてその場をしのいでいた

美咲はと言うと私には興味を失ったのか、隣に座る男性と指を絡ませている







私は皆なと話ながらもしっかりその様子を視線の先に留めていた