あぁ私のバカ
メインが運ばれてきて
バカみたいな声をあげた私を見て
目の前の岡崎は
目の前の岡崎は
大笑いしたいのを抑えて
くっくと苦しそうに
笑っている
でも、
でも、
デザートが来る前の
この時間しかない
意を決して私は切り出した
実はイブの日
意を決して私は切り出した
実はイブの日
宮本さんがうちに来たんです
あ 突然なんですよ
あ 突然なんですよ
いきなり電話してきて.....
岡崎さんとの待ち合わせの時間に
岡崎さんとの待ち合わせの時間に
遅れてしまったんです
岡崎は黙ったまま聞いている
あのそれで
岡崎は黙ったまま聞いている
あのそれで
私としては
出かけることを話したんですけど
聞いてもらえなくて
聞いてもらえなくて
それで
・・・・
少しの間考えるように
少しの間考えるように
眉間にしわを寄せ
天を仰いだ岡崎が突然
なぁ千秋
なぁ千秋
千秋はアイツのことを
まだ好きなのか?
もしアイツが
もしアイツが
嫌がる千秋を
無理矢理したいようにしたとなると
犯罪にも近い行為だ
でももし千秋にも
その気があったんなら
それはそれで
それはそれで
仕方のないことだろ?
あぁ怒らしてしまった?
人はな
あぁ怒らしてしまった?
人はな
いくつもの小さな間違いを
犯すものだよ
でも人は
でも人は
いつまで恨んでいても仕方ない
ということもわかっているんだ
そして
そして
後悔したり反省したり
繰り返しながら
少しでもいい方向へ
向かおうとするんだ
おれはタカシとは古い仲だ
アイツの良いところを知っている
その代わり
その代わり
アイツの悪いところ
そうだな、特に女性に対しての
悪い “癖”
悪い “癖”
とでも言おうか
その悪いところもよく知っている
アイツは
アイツは
今でこそ立派に
ひとりでやっているよ
でもな
でもな
中学に上がった頃
両親が離婚して
母親についたらしいが
その母親が
その母親が
父親ではない男と
しょっちゅう恋に落ちては
出て行き
終わったら
終わったら
帰って来る
そんな人だったようで
ほとんどは
ほとんどは
母方の祖母に育ててもらってたんだ
だから
だから
やさしさは持っているけれど
どのように使ったらいいのか
いまいち
いまいち
わかっていないのかもしれない
母親に心底愛してもらった
母親に心底愛してもらった
というのがないのだろうな
たぶん
あまり母親らしいことを
あまり母親らしいことを
してもらっていない
それである意味母親に対して
それである意味母親に対して
というか、
女性に対していまさら反抗しているのか?
だらしないヤツに
だらしないヤツに
なってしまったんだと思う
そう言って
そう言って
静かに微笑んだ
あなたは全てわかっていて
あなたは全てわかっていて
今私と
こうしてくださっているのですか
あのぅ
岡崎は
あのぅ
岡崎は
とても優しい目で
黙って私を見つめている
正直なことを言います
と前置きして
正直なことを言います
と前置きして
私は思いを隠さずに
話そうと思った
今はもうタカシを
今はもうタカシを
好きという気持ちはありません
それは本当です
でもイブの日たずねて来た彼を
でもイブの日たずねて来た彼を
受け入れたいと思ったのは
それも正直ウソでは
それも正直ウソでは
ありませんでした
嫌だという気持ちと
嫌だという気持ちと
嬉しいという気持ちの両方があって
あの日あの時
あの日あの時
私は本能のままに動いていました
あなたとの約束が流れてしまっても
あなたとの約束が流れてしまっても
仕方ないとさえ思っていました
でもその後すぐに
でもその後すぐに
ものすごく後悔したんです
行為そのものを
行為そのものを
後悔したというのではなく
横にいるタカシを
見て
そうじゃない違う
そうじゃない違う
って
この人のことを
心から好きだと
思っているからではなく
しばらく感じていなかった
しばらく感じていなかった
人の温かみを
ただ感じたいだけだった
ぬくもりを
肌に感じたい...
自分勝手な
自分勝手な
いやらしい身体の反応が
“誰でもよかったのかも?”
って
それ自体にものすごく腹が立って
それ自体にものすごく腹が立って
私欲求不満の
バカみたいな女でしょう?
もうだめだ
もうだめだ
こんな私
きっと岡崎さんには
受け入れてもらえない
正直に話そうと思いながらも
正直に話そうと思いながらも
上手く話せない自分に腹が立って
涙が出そうになった