心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

約束の行方・・・vol.51 ~絵里子の気持ち lastへ~

2013-04-23 09:27:42 | 約束の行方



お式は挙げなくてもいいって思っていたから探していなかったのに、

叔父の紹介で、急きょ式場が確保できた

“大事なことだからきちんとした方がいい”と周りの大人が口をそろえてそう言った

啓太のご両親も私たちのことがきっかけで、再び一緒に暮らすようになったと聞いている

たまたま空いていただけあって、式までには2ヶ月しか時間がなかった

無理のきく身近な人にだけ連絡をして、バタバタと慌ただしく今日の日を迎えた




気がついたかな?

とにかく今日は、笑って過ごそうと思っていたけれど、さっきちょっと気持ち悪くなった・・・





今日の日を迎えるために忙しい日が続いた 自分では疲れているだけだと思ったけれど違っていた

嬉しいけど・・・・微妙な気持ち・・・こんな私で大丈夫?

でも、“こんな私を選んでくれてありがとう” と心の中でつぶやいた



啓太にはいつ話そう・・・大事なことなのに、つい言いそびれてしまった

まだ100%確定したわけではない、でもほぼアタリだろう

言ったら慌てるかな? 喜ぶかな? どんな顔をする?

順番が違うって父には言われるだろうからしばらく内緒にしておこう

でも・・・・母や叔母・姉には、さっきばれてしまった

女は鋭い・・・

姉は「私と同じやな~」と面白がっていた

義姉の百合子さんは 「うわぁ~私が思いついた事!!現実になったんやね~」と、

嬉しそうに笑っていた



なんとなく二人で過ごしてゆく中で、自然に天使が舞い降りるものだと思っていたが、

天使は慌ててやってきたようだ







さっき総一郎の姿が見えた・・・ちょっと太ったんちゃう?

奥さんである志穂さんと一緒に来てる様子・・・志穂さんのお腹、大きかったな・・・何人目かな?

二人のお腹を見て安心した、仲良くやってるんやろね・・・


啓太の手に一瞬だけ力が入った・・・きっと啓太の方が緊張してる

ふふふっと笑った私の顔を見て、安心してくれたかな?







遠い昔あなたが言ってくれた可愛い約束

私は本気で聞いてなかったけど、あなたは約束をちゃんと守ってくれたんやね

律儀と言うのかなんと言うのかわからんけれど・・・


知らない場所での生活は少し不安もあるけど、啓太・・・あなたと一緒なら大丈夫な気がする

これからも、こんな私とあわてん坊の天使を よろしくね






























約束の行方・・・vol.50 ~啓太の気持ち その先へ~

2013-04-22 10:13:49 | 約束の行方


君に初めて会ったのは、高校生の時だった

気の合う仲間と集まって他愛もない話をする毎日だった

学校のこと、音楽のこと、女の子のこと・・・

僕はその頃好きな子もいなくて、もっぱら杉山や前田たちの自慢話ばかり聞かされる日々だった

“そのうち僕だって、とびきりな女の子を見つけてみせる!”と断言したものの

周りには全く気になる子はいなかった

バレンタインに妹の真理子の友達からいくつかのチョコをもらったが、中学生相手ではお話にならない

あの子達には悪いけど、全く興味がなかった

そんなある日いつも一人で熱心に本を読んでいる人を見つけた

綺麗な髪に隠れた顔が見えなくて・・・何度か振り向かせようと

亮介たちと騒いでみたが、知らん顔 なかなかこっちを見てくれなかったね

やっと振り向いてくれた時、ちょっと怒った顔をして僕たちを睨んだでしょう?

“うるさい! だまってろ!”とでも言われたようだったけど 

でも僕は、その顔にドキッとした・・・・ひとめぼれだったよ

二人きりで話せないかといろいろ考えた 君はいつもうつむいていたから 顔をあげてほしかったんだ

海が見えることを話したら、とても驚いていたね

それがきっかけで、僕は君と話すことが出来たんだ



あれから今日まで何年たったんだろう・・・



自分を失ってしまうほどのショックな出来事があった

もうだめかと思う出来事もあった

それでも今こうして君が隣にいる 美しいベールをまとって微笑んでいる

これは夢か? いいや・・・違う





エリー・・・・ 君の手は暖かいね





“僕は一度も諦めたことはない” そう言うとイチ兄ちゃんには “お前ちょっと怖いぜ” って笑われたけど

イチ兄ちゃんも祝福してくれたよ、君はどう思うかな?

ちょっとだけ怒るかもしれないね

でも、何があってもこれからは二人で・・・・





あ、そうだ・・・ さっき君が少しだけつらそうにしていた訳を叔母さんがこっそり教えてくれたんだ

僕は知っているって言った方がいいのかな? それとももう少し黙っていようか









エリー、君がどんな顔で話してくれるのか? 僕は、楽しみにしておくよ・・























約束の行方・・・vol.49

2013-04-19 22:17:26 | 約束の行方


“啓太・・・とりあえず私、今夜は帰るから・・・” 


甘い時間を途中で切り上げ、こっそり家へ帰ってきた


兄がどんなふうに言ってくれたのかわからないが、ばれたら・・・・


“嫁入り前の娘がなんやらかんやら・・・・”と煩い父親は言うだろう


朝は何事もなかったように起き出し、いつものように振舞った


啓太は今日の昼間には帰るらしく、出来れば見送りに行きたかった


「昨日は、お客さんの付き合いで飲みに行ったらしいな 若い娘をおそうまで連れまわしよって・・・」と


昨夜の事を父が言いだしたので 


「私は早い目に帰って来たよ、お兄ちゃんは遅うまでつきあわされてたみたいやけどなぁ」と


大ウソをついた


お礼方々兄のところへ行かなくては・・・・と思っていた。


朝食を済ましてから兄の家へ行ってみた


ちょうど勇太ちゃん達が出かけるところだったので、一緒に見送り


「昨日の話・・・聞かせろや」 という兄に従い 家へと入った


義姉の百合子さんは総一郎のことは知っているが、啓太のことは知らない


昨日のお客さんが総一郎だろうと思っているようで「また来はったんやね~男前さん」と嬉しそう


兄は「えっ? 昨日初めて来はったんとちゃうんか?」と怪訝な顔


私は全てを話さなければいけないな、と思い


以前こっそり総一郎が来たこと、昨日の人はもっと前から付き合いがあった人だということを


二人に話した


義姉は「絵里ちゃんモテるんやね~」と、茶化したが


兄は真面目な顔で「ほんで、おまえ本気で結婚するつもりやねんな? 


アメリカ行くって・・・・お父ちゃんに上手いこと話さなややこしいぞ・・・・・」


と、胃が痛くなるようなことを言ってくれた


「それは、ほら・・・お兄ちゃん協力してぇなぁ~頼むわ・・・」 私は手を合わせて兄に拝み倒した


百合子さんが笑いながら “すごいこと”を言いだした


それはとてもいいアイデアだと思ったが、世の中そう上手くいくはずはないと、肩を落としたのだった


昼一番の新幹線で啓太が帰ることになっていたので、私は兄の家を後にして京都駅へと向かった


時間があったので、駅前のカフェで啓太とこれからのことを話した


まず私は、自分の親に話をすること


啓太も両親に話すということ・・


近いうち母親のいる神戸へ来る傍ら、我が家にも立ち寄ると言いだした


私は啓太が母親に会いに行く時までに両親に話さなければならないこと・・・


どう切り出そうか?と、思案した





父に話す前に まずは、母親に話そうと思い「お母ちゃんちょっと話があるねんけど・・・・」


というと、母親の勘と言うのは鋭いもので 「絵里子?結婚でもするんか?」と


いきなり度肝を抜かれることを言われた


私は驚いたが、それなら話が早いということで「うん、そうやねん それにしてもお母ちゃんはすごいな」


と、あれこれ言わずに事実だけを話した


「へぇ~アメリカ~? そりゃ~突然えらいこっちゃ~」 と、目をまん丸くして驚いていたが


「絵里子ももうええ年やし、どんなこと言われてもお母ちゃんは驚かヘん 好きなようにしたらいい


大事にしてもらいや、年下で、次期社長さん? すごいなぁ


そんな人どこで見つけたんや? お父ちゃんは驚くやろうな~でも心配は無用やで


お父ちゃんがなんと言おうと、絵里子のしたいようにさせたるさかい安心しぃや、お母ちゃんは味方やで」


胸に熱いものが込み上げてきた、高校を卒業してから好きなようにさせてもらってきた


仕事も勝手にやめて、アテもないのに帰ってきて結局何も見つけず、見つけられず


いきなり結婚するという娘の言葉を何も言わずに受け止めてくれる母


感謝してもしきれない気持ちでいっぱいになった





母の言った通りというのか、心配することもなく


父は全く反対せず むしろ大賛成で、“大事にしてもらえや、風邪ひくなや”とだけ言って


目にいっぱい涙を浮かべていた











 



約束の行方・・・vol.48

2013-04-18 09:55:31 | 約束の行方


啓太の匂い久しぶり・・・・・変わってないんやね、落ち着く・・・


エリーこそ、ここ・・・・好きなところ変わってない・・・


アホなこと言わんといて、そんなことはいちいち言わんでええの・・・


ね? エリー・・・さっきの話


ん? さっきって・・・?


結婚の話・・・僕は本気だよ、本気で考えて?


ん・・・・わかった・・・


僕ね来年からしばらくアメリカへ行こうと思ってるんだ、だからその時は一緒に来てほしい


え・・・? アメリカ・・?


うん、そう アメリカ・・・そう言えば、エリーに仕事のこと話してなかったよね?


あ・・・そういえばそうやね


うん、あのさ親父の会社絶対に入る気なかったんだけどさ、


亮介があんなことになって僕はあのころ何もする気になれなくなっててさ


結局、話を もらっていた会社にも迷惑がかかるんじゃないかと思って断ったんだよ


しばらく何もする気が起こらなくて、もうどうでもいいやって感じでね


そんな時・・・珍しいことに親父が親身に聞いてくれてさ、今までのこと母さんのこと、


そして将来のことをゆっくり話す時間があったんだ


それまでは、あんな勝手な親父の言いなりになんてなるもんか! って思ってたんだけど


ちゃんと向き合って話したら、そんなに悪い人でもなかったんだってわかったんだよ


それで結局親父の仕事を手伝うことになってね、


それで僕をさ、来年あっちで立ち上げる会社の代表にって言いだしてね


“いい子はいないのか? 嫁さんが一緒ならお前も安心だろ?”って何気なく言うもんだから


僕は、“残念ながら、そんな人はいませんよ” って答えたんだけど


その瞬間、無性にエリーが恋しくなって、会いたくなって・・・


でももしかしたらエリーには大事な人がいるかもしれないって思った


だけどこの際当たって砕けろだなって いい意味での開き直りさ、


エリーとなら、どこにいても安心するし心強い 出来ればそばにいてほしいって思ったんだ


僕の勝手な意見だけど・・・・・どうかな・・・?









私の身体を後ろからすっぽりと抱え込むようにしながら啓太はそんなことを話してくれた


・・・・と、いうことは・・・?私もアメリカ暮らしするってことやんね?


あはは・・・そういうことになるね? 嫌かい?


うううん・・・嫌もなにも・・・私海外って行ったことないねん


えっ? ホントに? ハワイとか? グアムとかも? 旅行は・・・?


ない・・・実は飛行機ちょっと怖くて、杉山くんの事があってからはますます怖くて


だから結局一回も行ったことないねん


そうなんだ・・・じゃあそれは、暗黙の・・・断りっていうのか・・その・・・


うううん、そうじゃないよ


私今、行きたいって思ってん でも飛行機か~どないしよう~って


ちょっとだけびびっただけ・・・・私、こう見えて結構怖がりやねんで・・・


でも、啓太? 私でええの? ホンマにええの? 総一郎のこととか気にならへんの?


啓太は、にやりと笑って


「エリーじゃなきゃダメなんだよ、僕は・・・


僕には、イチ兄ちゃんがしたことを忘れさせる自信があるさ、あんなことや、こんなこと・・・


エリーが好きなところを沢山知っている エリーが悦ぶことをこれからも、精一杯頑張るし


もちろん生きてゆくために、しっかり仕事もするさエリーはそばにいてくれればいい


そばにいて、と言っても家政婦になってくれと言ってるんじゃないよ、


エリーをかごの鳥にするつもりはない


何かやりたいことがあれば始めればいいし、なければゆっくりしたらいいさ」


いい提案だろ? どうかな? 笑いながらそう言うと


啓太の指はまた悪戯に私の身体を彷徨いだした

















約束の行方・・・vol.47

2013-04-17 21:01:30 | 約束の行方


店には新しいお客さまが何組かいらして、兄が言った通りいつもより忙しく


二番目のお客さまが来てからは、啓太と特別な会話もなく過ぎた


帰り際啓太が、お勘定と共にくれたメモにはその日泊まる宿の名前と電話番号が記してあった


10時を過ぎた頃 「絵里子お疲れさん もう落ち着いたし、後はたいして来はらへん あがりや


今夜は片づけもええし、これからデートやろ?」


兄は、素知らぬ顔でそう言うと 「お父ちゃんやらお母ちゃんには適当に言うといてやるから 


ほら、はよう行ってこい」 と、追い立てるように手をひらひらさせて笑っていた


“デートって・・・そんなんとちゃうわ” とは言ったものの、心は正直華やいでいた


啓太とは、たまに電話で話すことはあっても長い間会うことはなかった。


きちんと向き合うのは何年ぶりのことだろう?


こっそり二階へ上がり急いで着替えて化粧を簡単に直すと、慌てて外へ飛び出した


8月の終わり、まだまだ残暑が厳しく身体を包む夜風はむっとしていた


メモにあったホテルに着くとフロントから啓太を呼び出してもらった


程なく下りてきた啓太はいつもの優しい顔でくしゃくしゃと私の頭をなでると


「エリー本当に久しぶりだね、相変わらず僕の知ってるエリーのままだ変わらないし、しゃんとしてる」


「そんなん、久しぶりに言われたわ なんか・・・お尻がこそばいな、啓太も相変わらず・・・うううん


啓太は、なんかすごく大人な感じで凛々しくなったよ、うん かっこええわ」


そう言って二人で褒め合い“この会話、誰か聞いてはったら笑われるで、完全にアホなカップルやな~”


と、二人して吹きだした


長い間会わなくても、こんな風にいつも会っていたような自然な会話が出来るのは啓太だからだろう


啓太は私と話すときは、完全に関西弁に釣られて自分も時々関西弁で話す


関西弁と言っても、京都・大阪・神戸では微妙に違う何かがある


啓太の関西弁は母親譲りなので、神戸の言葉


京都の人とは微妙に違うのだが、これも関西の人しかわからない程度の違いだ


ホテルのラウンジは満席だったので、外へ出て河原町通りを話しながら歩いた


若い子が沢山行き交う 木屋町と河原町との間には東西に通っている小さな道が沢山ある


その両側には店が立ち並び賑わっている


木屋町と先斗町の間には同じく東西に路地が沢山あるのだが、ここは昔ながらのBARや、


お茶屋さんと呼ばれるいちげんさんでは入れない店が多い


兄の店を手伝うようになってから時々兄に連れられて、その中の何軒か連れて来てもらっていた私は


こっそり一人でも入れる店を見つけていた






マスターが一人でやっているその店は、静かなジャズが流れる店で


事故で亡くなった啓太の親友の亮介くんの叔父さんの店の夜バージョン的な店だった


啓太は “ここは、落ち着くね” というと、バーボンのロックをひとくち飲んで


「エリー、僕と結婚してくれないか?」 と、突然真面目な顔で言いだした


「なっ・・・? え・・っ? なんでいきなりそうなるん?」


私は飲んでいたものを吹き出しそうになりながら慌ててハンカチで口元を押さえもごもごと


啓太に向かってそう言ったのだが、啓太はすました顔で


「イチ兄ちゃんとエリーが付き合ってると聞いた時、正直僕はもう駄目かもしれないと思った


でも、イチ兄ちゃんが別の人と結婚するとわかってからは もしかしたら?


まだあの約束が有効かもしれないと密かに嬉しかった」


「約束って? ああ~あの30になってもってヤツ?」


「そう・・・僕もいろいろあって・・・・」


「いろいろって何?」


「あ、うん・・・僕も一応エリーとは別の女の子ともつきあったり・・・」


「ああ・・・そりゃそうやろね」


「うん、でもなんかが違ってて 長続きせんかった」


「へえ、そうなんやね」


「しっくりこないんや・・・その・・なんというか、その・・・そっちのほうが。。。」


「あはは、啓太スケベーやな」


「うん、そうだよ僕はエリーとの・・・が一番しっくりとなじむというのかな・・・?」


「アホ・・・そんなこと、ここで言わんといて恥ずかしいわ」


「エリーが・・・エリーの方がスケベって言うから・・・なぁ、久しぶりにアカン?」


啓太は、突然プロポーズしたと思うとそんなふざけた会話ではぐらかした


「ん・・・そうやね、久々にええかもね」


「で?エリー返事は? YES? NO?」


「んんんん・・・・・どうしようかな~? 」


はぐらかしてそう言いながらも、私はこういう自然なのが一番いいのかもしれない


飾らず、好きなことが言えて・・・・


「とりあえず、今夜試してから返事するわ」


と、啓太の肩に寄りかかりながら啓太の膝に手を乗せた


啓太は私の手を包むとそのまま引っ張って立ち上がらせ“じゃあ出ようか”と店を後にした