心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

星屑の涙・・・6

2013-06-26 09:35:27 | 星屑の涙


人は、苦しみや悲しみをどうやって忘れるのだろう?

忘れるなんて出来るのだろうか?

いえ・・・忘れなくてもいいのだろうか?

その答えは、未だに出ていない





達也は、出会った次の日早速電話をしてきた

「一人で飯を食うのも味気ない 今夜いかがですか?」

私はその日の仕事が長引きそうだったので、やんわりと断りを入れた

しかし達也は根気強いとでも言うのか

それなら自分も残業して時間を調節すると言って来た。

強引すぎるのは、好きではないので

少し嫌味をこめて再び断りの言葉を告げると

今度は拍子抜けしそうなくらいあっさりと諦めの言葉を口にした

そして、突然自分の都合で無茶な誘い方をしたと詫びた後

こちらの都合がいい日にぜひ会いたいと言って来た。

週末なら都合がよいと告げると、子供のようにはしゃいだ声で楽しみにしていると電話を切った








何もかも忘れさせてくれるような人が

いつか私を 心の闇から救い出してくれると信じたかった

私の周りには、ご機嫌伺いをしながら接して来るような男が多かった

会社では、社長の娘と遠慮され 

昔のことを知っている人は

“迂闊に声が掛けられない”と、慎重に接してくるのだった



過去など知らない相手となら気楽に接することが出来るだろう

相手が既婚者だろうが、その時の私にはどうでもいいことだった







自然な流れでそうなった

長い間忘れていた悦びがこみ上げる 

私の身体をゆっくりと確かめながら奥へ奥へと攻めてくる雄の身体は

以前から知っていたかのような動きで私を頂点まで連れて行ってくれた




























星屑の涙・・・5

2013-06-25 08:53:03 | 星屑の涙

「それにしてもご主人は罪なひとですね こんなに綺麗な奥さんを置いて行くなんて

僕だったら何があっても連れて行きますよ、しかもこんなに悲しんでいらっしゃる・・・」

「主人・・・?」

なぜ私が “主人を見送りに来て悲しんでいる妻” に見えたのか?

わからなかった

「ええ・・・その指輪 ご結婚されているんでしょう?」

「あ、これ・・・いいえ、私は独身です」

「えっ? そうだったんですか? いやあ~失礼いたしました。

指輪をなさっているから てっきり奥さんだと・・・

単身赴任か何かのご主人の見送りだとばっかり

いやあ~オレ早とちりだから そうでしたか・・・失礼失礼」

そう言って頭を掻きながらにこやかに話す達也を見ていると

自分のつらさもどこかへ消えてしまったようだった。

「うちはね、女房と娘がふたりでディズニーランドへ行くというので送ってきたんですよ

本場に行ってみたいと言うもんでね・・・全く、困ったもんですよ」

「まぁそうでしたの、それはそれは楽しいでしょうね」

私は当たり障りのない返答をして無理して笑ったかもしれない


「どうです? 具合もよくなられた様子、よかったらお送りしましょうか?」

「いいえ、それには及びません 私も車で来ていますので一人で大丈夫です。

ご親切にありがとうございました。」


そう言って立ち去ろうとした私の手を達也は少しだけ強引に引っ張ると

「ここで会ったのも何かの縁だ、よかったら連絡先を教えていただけないでしょうか?」

「まぁ・・・強引な方ね、奥さまもいらっしゃるのに」

少し呆れて言った私に、悪びれもない顔で笑うと

「いや・・・たまに一緒に酒でもと思っただけですよ、うちのやつあまり飲めないもんで

下心なんて毛頭ありません」

「私、飲めるなんてひと言も言ってませんのに・・・」

「いや・・・あなたの顔を見れば、イケる口だってわかりますよ」

と、しっかり下心のありそうな顔でそう言ったのだった。



40代半ばぐらいであろうか? 

達也はその時無邪気な少年のような顔で、楽しそうに笑ったのだった








私はたとえ下心があろうとも

“この人なら少しの間だけでも嫌なことを忘れさせてくれるかもしれない”

と、その日携帯電話の番号を交換したのだった





星屑の涙・・・4

2013-06-24 09:18:46 | 星屑の涙


達也に出会ったのは一時帰国していた兄の家族を送りに行った空港だった

空港にはトラウマがあるので、本当は送りになど行きたくなかったのだが

甥っ子たちにせがまれて仕方なく一緒に行くことになってしまった。

みんなが乗った飛行機を見送った後

不覚にも私の身体は震えが止まらなくなり一人で動けないでいた

そこへ親切に声をかけてくれたのが達也だった

「大丈夫ですか? 顔が真っ青ですよ・・・医務室へ行きましょう」

「いいえ・・・大丈夫です、大したことはありませんから・・・」

そう言いながらも私の身体の震えは止まらず、今にも吐きそうだった。

「とにかくここへ座ってください、水でも買ってきますから」

そう言って立ち去った達也をただただ見つめるしか出来なかった。





15年前のつらい出来事

私の中にぽっかり空いた大きな穴は、未だ埋めることは出来ず

心配そうな兄の言葉に、心配かけまいと私は気丈に答えた

「もう大丈夫よ」 と・・・

言葉では言っても 心は全く大丈夫ではなく、いつまでたっても立ち止まったままだった







そんな私を今までより少しだけ和ませてくれたのが達也だった






星屑の涙・・・3

2013-06-22 11:07:23 | 星屑の涙

ある日 私は一人でなじみの店へ向かっていた

大きな交差点の向こう側から歩いてきたのは

達也とその妻である美咲 そして娘であろう高校生くらいの少女の3人だった

私は素知らぬ顔で通り過ぎ しばらくして振り向いた

娘が何やら楽しそうな顔で、達也に腕をからませながら笑っていた

美咲も二人と並んで楽しそうに歩いていた

私は、達也の少しだけひきつったような顔を見逃しはしなかった






「どこから見ても幸せそうな家族よね

上手くいってないなんて、無理して言わなくてもいいのに・・・

そう言えば、奥さま私の顔はご存じないのね?」

そう言った私に、なんとも情けない男は

「だから・・・そんな事言うなよ、あれは仕方がなかったんだ

あの日は娘の誕生日だったから、プレゼントをねだられて

ティファニーだぜ? 今どきの高校生はすごいものを欲しがる」

「ふふふ、でもやさしいパパは買ってあげたんでしょ?ティファニーを」

「う・・・そうさ、シルバーのネックレス ったく高くついて仕方ないぜ」

「かわいいもんじゃないの、それくらい買ってあげなさいよ

で? 奥さまにも何かねだられたとか・・・?」

「おい、真理子 お前やけに楽しそうだな? 何だかおれが苦しいことを楽しんでやしないか?」

「あら・・・? そうかしら? いいえ、そんなつもりはないわ」

「おまえさんのように金持ちのお嬢さんにはわかんないだろうな」

「いやね・・それは言わないでよ

まぁ、いずれにしても私には関係の無いことだわ」




いつでもそうだった

どの男にも敢えて深く関わらないようにしてきた


でも、達也との関係はそれまでの男たちとは

少しだけ違うものだった










星屑の涙・・・2

2013-06-21 16:23:40 | 星屑の涙


「そんな人でよかったら、いつでもくれてやるわよ」

そんな電話がかかって来たのはその男と出会って間もない頃





電話の主は隣にいた男の妻だった

電話口でかなり興奮していた彼女の言葉にあっけにとられた私は

横にいた達也に無言で電話を渡し

夜風に当たるためベランダへと出た




達也は相手と何やら話しこんでいたが

やがて申し訳なさそうにベランダへと出てきた

「すまん・・・こんなことになるなんて」

「情けない顔は見たくないわ、私はどちらでもいいのよ

別にあなたでなきゃいけない理由もないし

面倒なのはごめんだわ、それにしても早いわね

あなたって嘘がつけないタイプでしょう?

それとも、よほど愛されているかのどちらかだわ・・・」

「おいおい・・・そんな冷たいことを言うなよ、

オレはあいつといると息がつまりそうなんだ

こうしてお前といると癒される

あいつもあいつだ、オレがなんにも知らないと思ってやがる

あいつ・・・男がいるんだぜ しかも学生の時に付き合っていた元彼さ

少し前の同窓会で久しぶりに出会って 焼けぼっ杭に・・・ってやつさ」

「へぇ~面白い人ね、あなたの奥さまって でも元彼にだって家庭はあるんでしょう?

あなたもこうして好きなことをしているし

夫婦って、私にはわからないわ

夫婦が一緒にいるメリットって、なにかしら? 体裁だけ?」

「まぁな・・・長く一緒にいると夜の方もな・・・なんだか面倒になるし」

「まぁ、私とは身体だけの付き合いってことでもよくってよ

とにかく、面倒になるくらいなら私のところへは今日限り来ないでちょうだい」



達也はため息をつくと

「まぁとにかく今夜は帰るけど、機嫌直してくれよ 

じゃあまた・・・」と言って帰って行った。



今夜は修羅場か・・・・? 

達也に出会ってまだ1ヵ月ほどなのに・・・

きっと携帯チェックとかするタイプの人なのね

“おぉ怖っ”と自然に声が出たと同時に

私はなんだか楽しくなって夜空に向かってグラスを傾けたのだった