心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

想いは伝わる・・・3

2024-01-24 10:29:00 | 想いは伝わる

連絡しようと思って向かった店では
すでに岡崎が来ていて
カウンター席でひとり飲んでいた。
あ そうか、
岡崎さんもこの店よく来てるんだった

男と二人きりは、ちょっと
と思うけれど
この人は、男といっても
アニキのような存在
それにしても この人の後ろ姿 
なかなかカッコイイ
きっと知らない女性なら
この背中を見ただけで
好きになるかもしれない


それでも私には
デキル上司としか思えないけど

視線に気付いた岡崎が振り返る
おぉ来たか
どうだった 一次会は?

ええ お腹いっぱい飲んで、食べました

あはは、そうか
それはよかった

で、岡崎さんは お食事は?

ん まぁいいよ
適当にここでつまんでいる

ドライマティーニを頼んで
隣りのスツールに
周りからみたら
私たちどんなふうに見えるかしら

おい、おまえ
強いのいくな
それもアイツの

と言いかけて
私の頭越しに入口の方を見た
そして次の瞬間 
ニヤッと口元に笑みを浮かべた


・・・?  
と、思った私が振り返ると
そこには
何度も何度も会いたいと願ったあの人が
知らない女性を伴って立っていた

私の心は一瞬凍りついたが
冷静を装い背筋をしゃんと伸ばして
座りなおした

どうしよう
私は
今にも心臓が破裂しそうだった
そんな気持ちを 
知ってか知らずか
岡崎は 軽く手を挙げて
その後は私に向きなおった

大丈夫か? 
もし辛いなら
別の店行こうか

いいえ、大丈夫です
私これでもかなり強いですから
そう言って精一杯いい女を
装って座りなおした


元彼
宮本高志は
一瞬固まったように見えたが
岡崎と同じように手を挙げ
あいさつすると
カウンターとは
違うボックス席の方へ歩いて行った

いまさら慌てて店を出るのも
不自然に思ったんだろう


宮本高志 35歳独身 会社経営
5年前までの3年間
千秋と付き合いがあった
岡崎とは大学時代の同級生
人懐っこく誰にでも愛想よく 
仕事もできる
しかし、少々女癖が悪い

タカシ
あなた、私と岡崎さんの関係を 
どう思った?



森田千秋  29歳独身

かなり美人ではあるが
メガネのせいでその容姿の良さを
知る者は少ない
男女共に好かれる 
男前な性格
でも本当の性格は









想いは伝わる・・・2

2024-01-22 15:35:00 | 想いは伝わる


石川 知史は
ちょっぴりむくれていた

せっかく憧れの美菜ちゃんと
ゆっくりお近づきになれる
チャンスだったのに、と
「先輩が大きな声で
美菜ちゃんの名前を出すから
さっかくの飲み会が
あ~でもいいや、
そもそも千秋先輩を誘ったんだから」

「悪いね、石川!
ま、また今度ゆっくりね
今回は みんなで割り勘しよう
あ、でも美菜ちゃんの分は
ヤロウ達持ちでヨロシク!」

上田美菜 24歳 
ふわふわとした可愛い系女子
男ならほおっておけないだろうな
という容姿で
やや天然
しかしその雰囲気は
決して計算によるものではない。
実は 芯はしっかりしている
三人姉妹の長女だ



石川知史 26歳 
身長が高く ややマッチョ
本人は
わかっているのか定かではないが
かなりのイケメン男子で
学生時代はゴルフ部に所属していた
プロになれそうなほどの
腕前だったらしいが
腰を痛めてあきらめたそうだ


岡崎さんのお誘いどうしよう
私は 揺れていた 
誘われて飲みに行ったら
きっとまたあの人のことを 
思い出すだろう
そして
もしかしたら、また会える?
なんて期待してしまうかもしれない

早めの忘年会をする人も
多いだろうこの時期
石川が行きたかった店は
予約でいっぱいだったらしい
それでも根性で見つけた店は
どこにでもありそうな店だったが
女の子と二人で来たら
結構いい感じになれそうな
雰囲気のいい
こ洒落たイタリアンの店だった。

大いに盛り上がり
やや飲みすぎた感があったが
私はお酒
かなりイケる方で
後輩男子がいい気分に盛り上がる中
ある意味冷静に
周りを見渡し
気のきくいい女風を 演じていた。

千秋せんぱ~い 私ちょっとお手洗い
そう言って美菜が席を立つと
男たちは一斉に仕事での愚痴を 
こぼし始めた

ねぇ~君たち 
その話は
ここでなくてどこか他でやりなさい
そんな話美菜ちゃんが聞いたら
きっと呆れるわよ
情けないヤツってね

後輩たちは苦笑いして
話を途中で切り次の店へ移動する話で
盛り上がりだした。



・・・ったく
しっかりしてよ
後輩たち


美菜が戻ってきたと同時に
石川が会計を済まして戻ってきた。
どうやらこの後は
男同士でこれからの自分たちの立場やら
仕事の方向性やらあれこれ話すそうだ

店の外で後輩たちと別れた私たちは
駅へと向かった。

千秋先輩お疲れ様でしたぁ
私これから彼と待ち合わせなんです

そう言ってにっこりほほ笑んだ美菜は
駅の改札へ向けて歩きだした。

あ、そうなの
あなた男いたのね

そりゃそうよね
あなたみたいなかわいい子 
ほおっておかないわよね
と、ひとりつぶやき

ちょっぴり取り残され感で 
さみしくなった私は、
結局岡崎に連絡するために
懐かしいあの店へ向かうことにした。


想いは伝わる・・・1

2024-01-22 14:38:00 | 想いは伝わる


大好きな歌が 
似合う季節になった
似合う
というのは
私が勝手に思っているだけかも
しれないけれど

これからの季節
なんとなく人恋しく思うような
暖かいぬくもりを 
感じたい季節にきっと似合う

そんな歌


nothing's gonna change 
my love for you

この歌を聞くと想いだす
想い出すまいと思っても
ふと
心に残っている想い

そんな思いを
あなたはしたことがあるだろうか

~1995・初冬~

ラジオから聞こえるのは
Christmas song ばかり
はぁ もうそんな時期
忘れてたわ

いいえ
忘れることにしていた

きっと今年のクリスマスも
ひとりなんだろう
彼氏いない歴5年目の
さみしいクリスマス前
私は 毎日坦々と過ごしていた
29歳という微妙なお年頃 
仕事にもずい分慣れた
というより慣れ過ぎて
今やお局様状態かもね

それでも
嫌な顔しない信頼できる上司や
可愛い後輩がいる

唯一さみしいこと 
と言えば
つらい別れを 
いまだに引きずって
前へ進めない事くらいだろうか

いや でも実際表面上は
決してそんなことを表に出さず
男前な ねーさんを 
演じているのだった

今日も後輩のひとり
やんちゃぼーずを絵にかいたような
石川 知史が
「せんぱい!今夜おごりますよ
一緒に飲みに行きましょ」
と 頼もしいことを言ってくれている

その頃の男子は
今の草食系男子と違って
女性にお金払わせるなんて
と思う子が多かったように思う

「OK!」

でも全部って借りは
作りたくないから
少しは出させなさいよ

今夜は君のお気に入りの美菜ちゃんを 
連れて行くわ
嬉しいでしょう

後輩といえど
男と二人きりになるのに
少し抵抗があった私は
男子社員のアイドル的
存在である美菜に声をかけて
一緒に出かけることにした。

美菜が行くという話を聞きつけた
後輩男子達が僕も おれも 
と浮足立ち
結局3人ではなく
大所帯になってしまった

「石川 どこか予約入れといてよ!」

ったく
相変わらずいつの世も男たちは
可愛い子には弱いな
女が私だけなら 
きっとこんなに
集まらなかっただろうな

いや
あいつらは
私のことを“女”だなんて思ってないな
うん
そうだな きっと
などとひとりグチグチつぶやいていると

上司の岡崎 信也が
声をかけてきた。
「おい、森田 今夜一緒に飲まないか?」
「あっ すいません、
今夜は先客が
と言っても 
石川くんたちなんですけどね」

「そうか」 
そう言って立ち去るのかと思うと

「1次会が終わった頃
どこかで待ち合わせないか?」

いやいやいや
えっと
なんなんだ?
この人のこの誘い

ええっと
どうしよう

岡崎は、
上司であると同時に
私の元彼である男性と
学生からの友人で
私たちが
別れたことも当然知っている。
彼と同じく大人の男だ

きっと私が
いまだに忘れられない男性と
今でもたまに飲みに行く
というような仲だろう

即答が出来ず
あいまいな態度をとっていると
「おい、千秋
心配すんな
オレはお前をくどこうってんじゃないんだ
この季節
いまだにひとりでいる美しい後輩を
後輩の話を 
たまにはじっくり聞いてやりたい

心底それだけだ!
まぁ よかったらポケベル鳴らしてくれ」

と クールな笑顔を見せて立ち去った。

岡崎信也 35歳独身 

私の同僚・先輩女子からは
かなり狙われているだろう(笑) 
なぜいまだ独身なのか?
定かではないが
仕事も遊びもデキル男 
渋さも増したいい男だ
彼のような人が
そばにいたら

きっと私は
安心して幸せな日々を送れるのかも
しれない



ひとりごと〜お話紹介〜

2024-01-22 14:00:00 | ひとりごと
[想いは伝わる]

このお話は2012の年末頃から
2013の1月頃にかけて
書いていたお話です

背景は1990年頃
世間は華やかで
私もまだ若く
千秋のような恋愛をしていた
そんな頃の思い出に
少しエッセンスを加えて
物語にしたのものです

辛かった恋愛もありましたが
今では良い思い出

そんな想いをここに綴って
忘れないようにしたいな
と、思っています。





いつも心の中に・・・last

2024-01-22 13:44:00 | いつも心の中に


ユーコ
会いたい
いま 幸せにしているの?

ねぇ ヒロキ 覚えている?
“星の話”
東の空にオリオン座が輝く頃になると
毎年あなたのことを 
想いだしていたわ
あなたはもう
あの星たちのそばにいるんだと
勝手に思っていたから

言ったよね
僕たちには 何度も奇跡が起きるって

でも 奇跡は
簡単には起きないから奇跡なのよ

あれからもうずいぶん年月が経っている
あたしはもう 
あの頃とは変わったわ
あなたもきっと
変わったでしょう

話が出来ただけでよかったわ
そしてなにより
あなたが生きていてよかった
心からそう思う

ね ヒロキ
私たちはもう
会わない方がいいと思うの

会えばこの先…

「ねぇぱぱ?おでんわちゅー?」

電話の向こうで
かすかに幼い声が聞こえ
少し慌てたヒロキの様子がうかがえた

これでいい
これで良かったんだ
あたしは 心からそう思った

会えばきっと
自分でもどうなるかわからない
今の生活を全て失ってでも
あなたと一緒にいたいと思うに違いない
それは
沢山の人を傷つけることになる
穏やかなあの人をも傷つける
あたしは
自分の気持ちだけを優先して
まわりを振りまわす生き方は出来ない

あの時とは違う

心が大きく揺れたことは否めない
ヒロキの言う奇跡は起こらないけれど
生きていたという
事実がわかっただけでも嬉しかった
これもあたしの正直な気持ちだった

もうあの頃には戻れない
あの屈託のない笑顔は 
もう見れないけれど
あたしだけに向けて輝いている


いつも心の中に