今日は実家へ寄って帰るつもりだった
本当は行きたくなかったが、兄が帰ってきている
土産物があるからと、
母がとってつけたような言い訳を使い
電話をかけてきた
兄は長い間仕事のため
家族を伴って海外暮らしをしていた
あたしは昔から兄のことが大好きで
いつもそばを離れなかった
兄が結婚してほどなく仕事も海外へと移った時
もともとあまりそりの合わなかった父親と
これ以上関係が悪くなるのが嫌で
自分もそろそろ自立しなくては、などと
あれやこれやと理由をつけて家をでていたのだった
結局のところ
付き合っていた男のところへ転がり込んだのだったが
あのけんかの後飛び出して
今は、花と一緒にいる
あたしの父は地方では結構有名な議員の一人で
自分の言うことは誰でもおとなしく聞くものだ
と思い込んでいるような
バカ男
母は根っからの専業主婦で
そんな父親のことを疑いもせず
日々の暮らしを良いものにしようと
毎日せっせと家事にいそしんでいた
あたしと父の仲の悪さを感じつつも何も言わず
というのか、言えずにいるのだろう
実家に着いたとき
リビングでは兄の家族と父母が
楽しそうに語らっていた
あたしはこの雰囲気の中に入ることをためらって
玄関から中へ入れずにいた
そこへ義姉が小さな男の子を連れて出てきた
直ちゃんお久しぶりね、どうしたの?
なぜお部屋に入らないの?
義姉との会話の続きが面倒なので
できるだけにこやかな顔を作って笑う
甥っ子の可愛らしい
なおちゃーんおいでーの声に
仕方なく一緒にリビングへと入ったのだった