で、先輩は
岡崎課長のことを
どう思ってらっしゃるの?
恋愛感情なんて
恋愛感情なんて
微塵もないの?
直球で聞いて来た。
直球で聞いて来た。
若さって、すごい
私には
私には
ダーリンがいるから
よくわからないんですけどぉ
って、なによぉ
って、なによぉ
悔しいけど知ってるわよ
岡崎課長って
岡崎課長って
社内でかなり人気あるの知ってますぅ
先輩くらいのお年頃な
先輩くらいのお年頃な
おねーサマたちは
かなりマジで狙ってますよ
先輩はいっつも
先輩はいっつも
我関せず
って顔で接してますよね
男って感じたことは
男って感じたことは
ないんですか?
おいおいおいおい
おいおいおいおい
この子には
かなわない
いやぁ男って?
いやぁ男って?
そんな風に思ったことは
なかったような気がするわ
とりあえず
とりあえず
そうはぐらかした
実際、恋愛感情
というものを感じているかどうかは
未だわからないのだから
とにかく今は
未だわからないのだから
とにかく今は
今夜のことを
話さないでいよう
寄りたいところがあるので
寄りたいところがあるので
先にここへ行っててくれ
と小さなメモを渡された
こういうのって
こういうのって
なんだかドキドキする
そういえば
そういえば
岡崎と会社帰りに待ち合わせたことは
なかった
いつもは大抵同じ部署の子たちと
いつもは大抵同じ部署の子たちと
大勢で店に向かうからだ
受け取ったメモには
受け取ったメモには
行ったことのない店の名前と
簡単な地図
電話番号が記してあった
私の為に予約を入れてくれた
電話番号が記してあった
私の為に予約を入れてくれた
そんな小さなことが
とても嬉しかった
先に店へ入っていてもよかったが
先に店へ入っていてもよかったが
なんとなく外で待つ
なんだかいい気分
ウインドウに映る自分の姿を
なんだかいい気分
ウインドウに映る自分の姿を
さりげなくチェックする
うんOK
うんOK
いい感じよ
しばらくすると岡崎がやってきた
なんだ千秋
しばらくすると岡崎がやってきた
なんだ千秋
寒いから先に入っていれば
よかったのに
あ、いえ
少し早すぎたので
と言いかけた時
軽く微笑み
軽く微笑み
背中にそっとまわされる腕
そのまま軽く抱かれるようにして
店の中へ案内される
うそ、なんだ今の
うそ、なんだ今の
私、キュンってした
入ったお店は
入ったお店は
気取った感じではない
フレンチレストラン
ワインリストを見ながら
ワインリストを見ながら
ソムリエとさりげなく会話を交わす
では、それでお願いします
そう告げると
そう告げると
岡崎は微笑みながら
私の方に身体を向ける
オレ
オレ
こういう店で
ワイン注文したの初めてだよ
小声で囁く
ちょっとかわいい
向かい合って座るって
向かい合って座るって
今までに
なかったよね
私は少し緊張していた
私は少し緊張していた
“初めて”
と言ったけど堂々とした態度
今夜の岡崎さんは
今夜の岡崎さんは
いつもと少し違って見えた
まずは乾杯だな
まずは乾杯だな
千秋、お誕生日おめでとう
そう言って岡崎はとても丁寧に
そう言って岡崎はとても丁寧に
“おめでとう”
を言ってくれた
料理が順に運ばれてきて
料理が順に運ばれてきて
食事も半ばにさしかかった頃
私はどうしても言わなければ
私はどうしても言わなければ
と思っていたことを
口に出す決心をしていた
あの あのね、岡崎さん
うん、なんだ
あの あのね、岡崎さん
うん、なんだ
神妙な顔をして?
・・・・・・
なんだどうした?
岡崎は少し頭を傾けて私の話を
・・・・・・
なんだどうした?
岡崎は少し頭を傾けて私の話を
聞いてくれようとしている
あの、えっと
あの、えっと
あ、そうそう
今夜は誘ってくださって
ありがとうございます!
誕生日を
誕生日を
誰かと
しかも一応男性と過ごすなんて
何年ぶりのことか
おい一応とはなんだ
おい一応とはなんだ
一応とは
笑っている
すいません だってその
すいません だってその
岡崎さんを男性 って
今まであまり思ったことが
今まであまり思ったことが
なかったもので
でも今は、その
少しだけ頬を膨らませて
少しだけ頬を膨らませて
無邪気な顔で怒ったふりをしている
とにかく
とにかく
まずは今夜のお礼を
言わなくちゃと思ったので
それからですね
その後勢いで話そうと思った時
それからですね
その後勢いで話そうと思った時
メイン料理が運ばれて来た
うわぁおいしそう
うわぁおいしそう