心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

想いは伝わる・・・17 ~変わらぬ想い・last~

2024-02-09 10:14:00 | 想いは伝わる



おい千秋
オレが酔っているとでも
思ってるんだろう

そう言いながら岡崎は
上着のポケットから
小さな箱を取り出した

酔ってはいないが
話の展開如何では
渡しそびれるところだった

お誕生日おめでとう
慌てて選んだから
気に入ってもらえるか
わからないが

と笑いながら
小さな箱
私へ差し出した

なぁ千秋
会社では
おまえがやりにくいのなら
わからないようにすればいい
でも時期が来たらその時は
ちゃんと話していいだろう?

時期って
どう言うこと?そう言うこと?
私はその心使いに
改めてこの人の素晴らしさを感じた
やはりこの人なら
本当にすべてを委ねても
後悔しないんじゃないか
と、心からそう思っていた。

今までは
好きならばそれでいいと思っていた
でもこれからは
好きなだけでなく
好きになってもらえる 
そんな女性になりたい


あの日
小さな箱をもらった後
岡崎さんが
もう一度改まった顔をした

千秋
さっきの店ではうやむやになったが
改めて言わせてもらっていいか?
オレはこれから先の人生を
おまえと一緒に過ごしたいと思う
今までにあったさまざまな事を 
すぐに忘れろとは言わない
きっと忘れることなど
できないだろうから
人は心の中でいろいろな
思いを持っている
それでもその上に
新しく素敵な思いを重ねて行けば
いいと思っている
これから一緒に
沢山の思い出を作って行かないか?


私はすぐに頷いた
もう躊躇などなかった

そして
こちらこそ
よろしくお願い致します

とても緊張した面持ちで頭を下げた

なんだよ
営業トークみたいな
挨拶じゃないか
真面目な顔してんじゃないよ
と私の返事に
照れくさそうに笑っていた


想いはいつか伝わるもの
そう それを信じよう
その時の私は
心からそう思っていた



あれから何年経っただろう
今も私に沢山の笑顔を 
作らせてくれる
今も変わらぬ想いでいてくれる


そんなあなたへ心を込めて

“ありがとう” 




想いは伝わる・・・16

2024-02-09 10:02:00 | 想いは伝わる


ちょうどデザートを
運んできてくれた男性の手が
一瞬固まった
きっと最後の言葉だけ
聞こえたのだろう

黙って聞いていた岡崎が口を開く

そうか千秋
よくそんな言いにくい話を
してくれたね
ありがとう
オレはおまえが
アイツと付き合っている時から
2人のことを見ていた
そしてアイツが
今度こそは本気かと
思うような付き合い方を
していたことも知っている
オレもその間
それなりにつきあった
女性もいたしな
何年か前
アイツから
千秋と別れたことを聞かされて
その後何年かして
同じ部署に配属されてきた
おまえに会って
最初のころは
よく知っているかわいい後輩
として見ていたが
最近は気がつくと
部屋の中でおまえを
探している自分に気がついた
気の強いおまえが
時々ふとさみしそうな顔を
しているのが妙に気になっていた

もしかしたらオレは
“千秋のことが好きなのかもしれない”
と思ったのは
最近のことだ
でも昨日 

明日は誕生日なのに一人でさみしい
けれど話せる人も
祝ってくれる人もいない
というようなことを言ってただろう?

それを聞いてオレは
自分の気持ちに
正直になろうと思ったんだ
未だにアイツを
忘れられずにいるのかもしれない
と思ったが
それでも
そんなことはどうでもよかった
本当に
過去のことなどどうでもいい 
これからのことを
考えればいいって思ったんだよ

だから今日
こうして心からお祝いが言いたい
と思ったんだ
なぁ千秋 
こんなオレとこの先

待ってください
私...本当は
気が弱くて泣き虫で 
おまけに
ここぞという時に限って
身体が動かなくて 
昔の自分を振り払いたくて
必死で強がってはいましたが
どうしようもない女なんですよ
そんな私に
そんなこと言わないでください
ダメです
それ以上言わないで

支離滅裂!

自分で何が言いたいのかわからない
嬉しいと思いながらも
今の私にこんなこと
言ってもらえる資格なんてない
と思う気持ちが大きくて
思わず声を出してしまった

すまない
オレ少し慌てすぎたかな
おまえの気持ちも考えずに
岡崎はそう言って
自分の頬を小さく叩きながら笑った

私は何度も頭を振り
いえそんなこと
わたしの方こそ途中で
大きな声ですみません
と頭を下げた

とにかく
ここは出よう

外は昨日までのクリスマスの気配が
一気に新しい年を迎える準備へと
変わっていた

もう少し飲もうか?

岡崎さん先ほどは ごめんなさい 
私本当は
とても嬉しかったんです
でも突然の話の展開に
ついて行けなくて 
というのか
心の準備が出来なくて
私も今は
あなたのことが好きです
素直にそう思ったんです

本当か?本当なのか?!

岡崎は私の肩を
ギュッと引き寄せながら
マスターに向かって

マスター今日はオレの
彼女連れてきました
今日は誕生日なんですよ
何か美味しいカクテル
作ってやってください!

弾んだ声でそう言っている


彼女って
ちょっ、ちょっと大きな声
そうだ忘れてた
あの話もしなくっちゃ

店主は
やわらかい笑顔を浮かべている

岡崎さん!
あの、あのですね
実は会社でイブの日のことを
見ていた人がいたようで
勘違い?というのか
もう噂になっているらしい

噂?  
いいじゃないか別に
だったらなおさら話が早い

岡崎さん
もう酔ってる?

いやいや あのですね
あなたはとても
モテていらっしゃるのですよ?
こんなこと本当に知れ渡たったら
私は会社にいられなく
なっちゃいます

他の女子の視線に耐えられません

何を柄にもないことを 
おまえそんなちっせぇやつじゃ
ないだろう
言いたいヤツには
言わせておけばいいんだよ

はぁダメだ
完全に酔ってるよ

岡崎はニコニコと笑いながら
何度も私の肩を引き寄せて
嬉しそうに飲んでいた





想いは伝わる・・・15 ~告白~

2024-02-09 09:41:00 | 想いは伝わる


あぁ私のバカ

メインが運ばれてきて
バカみたいな声をあげた私を見て
目の前の岡崎は
大笑いしたいのを抑えて
くっくと苦しそうに
笑っている

でも、
デザートが来る前の
この時間しかない
意を決して私は切り出した

実はイブの日
宮本さんがうちに来たんです
あ 突然なんですよ
いきなり電話してきて.....
岡崎さんとの待ち合わせの時間に
遅れてしまったんです

岡崎は黙ったまま聞いている

あのそれで 
私としては
出かけることを話したんですけど
聞いてもらえなくて
それで

・・・・

少しの間考えるように
眉間にしわを寄せ
天を仰いだ岡崎が突然
なぁ千秋
千秋はアイツのことを
まだ好きなのか?
もしアイツが
嫌がる千秋を 
無理矢理したいようにしたとなると
犯罪にも近い行為だ 
でももし千秋にも
その気があったんなら
それはそれで
仕方のないことだろ? 

あぁ怒らしてしまった?

人はな
いくつもの小さな間違いを 
犯すものだよ
でも人は
いつまで恨んでいても仕方ない
ということもわかっているんだ
そして
後悔したり反省したり
繰り返しながら
少しでもいい方向へ
向かおうとするんだ

おれはタカシとは古い仲だ 
アイツの良いところを知っている
その代わり
アイツの悪いところ
そうだな、特に女性に対しての
悪い “癖” 
とでも言おうか
その悪いところもよく知っている
アイツは
今でこそ立派に
ひとりでやっているよ 
でもな
中学に上がった頃
両親が離婚して
母親についたらしいが
その母親が
父親ではない男と
しょっちゅう恋に落ちては 
出て行き
終わったら 
帰って来る
そんな人だったようで
ほとんどは
母方の祖母に育ててもらってたんだ
だから
やさしさは持っているけれど 
どのように使ったらいいのか
いまいち 
わかっていないのかもしれない
母親に心底愛してもらった 
というのがないのだろうな
たぶん

あまり母親らしいことを 
してもらっていない

それである意味母親に対して
というか、
女性に対していまさら反抗しているのか?
だらしないヤツに
なってしまったんだと思う

そう言って
静かに微笑んだ

あなたは全てわかっていて 
今私と
こうしてくださっているのですか

あのぅ 

岡崎は
とても優しい目で
黙って私を見つめている

正直なことを言います
と前置きして
私は思いを隠さずに
話そうと思った

今はもうタカシを
好きという気持ちはありません 
それは本当です
でもイブの日たずねて来た彼を 
受け入れたいと思ったのは
それも正直ウソでは
ありませんでした
嫌だという気持ちと
嬉しいという気持ちの両方があって
あの日あの時
私は本能のままに動いていました

あなたとの約束が流れてしまっても
仕方ないとさえ思っていました
でもその後すぐに
ものすごく後悔したんです
行為そのものを 
後悔したというのではなく
横にいるタカシを 
見て
そうじゃない違う
って
この人のことを
心から好きだと
思っているからではなく
しばらく感じていなかった
人の温かみを 
ただ感じたいだけだった
ぬくもりを 
肌に感じたい...
自分勝手な
いやらしい身体の反応が
“誰でもよかったのかも?” 
って
それ自体にものすごく腹が立って
私欲求不満の
バカみたいな女でしょう?

もうだめだ 
こんな私
きっと岡崎さんには
受け入れてもらえない

正直に話そうと思いながらも
上手く話せない自分に腹が立って
涙が出そうになった







想いは伝わる・・・14

2024-02-08 17:56:00 | 想いは伝わる


で、先輩は
岡崎課長のことを 
どう思ってらっしゃるの?
恋愛感情なんて
微塵もないの?

直球で聞いて来た。
若さって、すごい

私には
ダーリンがいるから
よくわからないんですけどぉ


って、なによぉ
悔しいけど知ってるわよ


岡崎課長って
社内でかなり人気あるの知ってますぅ
先輩くらいのお年頃な
おねーサマたちは
かなりマジで狙ってますよ
先輩はいっつも 
我関せず
って顔で接してますよね
男って感じたことは
ないんですか?

おいおいおいおい
この子には 
かなわない


いやぁ男って?
そんな風に思ったことは
なかったような気がするわ
とりあえず
そうはぐらかした 
実際、恋愛感情
というものを感じているかどうかは
未だわからないのだから
とにかく今は
今夜のことを 
話さないでいよう

寄りたいところがあるので
先にここへ行っててくれ
と小さなメモを渡された
こういうのって
なんだかドキドキする
そういえば
岡崎と会社帰りに待ち合わせたことは
なかった
いつもは大抵同じ部署の子たちと
大勢で店に向かうからだ
受け取ったメモには
行ったことのない店の名前と
簡単な地図
電話番号が記してあった

私の為に予約を入れてくれた
そんな小さなことが
とても嬉しかった
先に店へ入っていてもよかったが
なんとなく外で待つ
なんだかいい気分

ウインドウに映る自分の姿を
さりげなくチェックする


うんOK
いい感じよ

しばらくすると岡崎がやってきた

なんだ千秋
寒いから先に入っていれば
よかったのに

あ、いえ
少し早すぎたので
と言いかけた時
軽く微笑み 
背中にそっとまわされる腕 
そのまま軽く抱かれるようにして
店の中へ案内される

うそ、なんだ今の
私、キュンってした

入ったお店は
気取った感じではない 
フレンチレストラン
ワインリストを見ながら
ソムリエとさりげなく会話を交わす

では、それでお願いします
そう告げると
岡崎は微笑みながら
私の方に身体を向ける
オレ
こういう店で
ワイン注文したの初めてだよ
小声で囁く

ちょっとかわいい
向かい合って座るって
今までに
なかったよね
私は少し緊張していた 
“初めて”  
と言ったけど堂々とした態度
今夜の岡崎さんは
いつもと少し違って見えた

まずは乾杯だな
千秋、お誕生日おめでとう

そう言って岡崎はとても丁寧に
“おめでとう” 
を言ってくれた

料理が順に運ばれてきて 
食事も半ばにさしかかった頃
私はどうしても言わなければ
と思っていたことを 
口に出す決心をしていた
あの あのね、岡崎さん 

うん、なんだ
神妙な顔をして?

・・・・・・

なんだどうした?

岡崎は少し頭を傾けて私の話を 
聞いてくれようとしている

あの、えっと
あ、そうそう
今夜は誘ってくださって
ありがとうございます!
誕生日を 
誰かと
しかも一応男性と過ごすなんて
何年ぶりのことか


おい一応とはなんだ
一応とは
笑っている


すいません だってその
岡崎さんを男性 って
今まであまり思ったことが
なかったもので 
でも今は、その 

少しだけ頬を膨らませて
無邪気な顔で怒ったふりをしている

とにかく
まずは今夜のお礼を 
言わなくちゃと思ったので
それからですね
その後勢いで話そうと思った時
メイン料理が運ばれて来た

うわぁおいしそう




想いは伝わる・・・13

2024-02-08 16:58:00 | 想いは伝わる


朝から気分がいい 
今日は新しいヒールを履いて来た
わからないところで
お洒落してみるのも悪くない
それにしても仕事中なのに
なんだかニヤついてしまう
私ってわかりやすい女だろうな
誰かにバレやしないかと
内心ドキドキする

ランチタイムは
美菜に誘われお気に入りのカフェへ

あれ?
先輩素敵なヒールですね

さすがするどいわ
たぶんお洒落大好きな美菜には
このヒールを 
初めて履いて来たことが
ばれているだろう
人の服装にも
細かくチェックを入れるのが
この子のいいところでもあり 
悪いところでもある

急に美菜の表情が変わる
ところで先輩
チョットした噂を
聞いたんですけど

思わずドキッとした

え、なぁに?
どうしたの  
さりげなく
なるべくトーンを落として聞いてみる

えっと あのね

なんなのよ
なにが言いたいのかしら?
黙って聞いていると

少し気まずそうな顔つきで
実は先日の
イブの日の出来事なんですけどぉ

え、なにっ?

真由美が 
あ、わたしの同期なんですけど
その子が
イブの日にBlue Noteで
先輩と岡崎課長が
一緒にいるところを見たって
言うんですよ

わたしは
そんなの絶対見間違いよって
言ったんですけど
その子絶対間違いないって
しかも千秋先輩が泣いていたって
いうんです
一緒にいること自体まさかですけど
千秋先輩が泣くだなんて
まさか、信じられないですよね?

私は、何者だ
泣かない女
そんなに強い?
それとも
なんだと思っているの?
いやいや
そんなことは、どうでも良くて
そんなことより
あの時あの場所に
会社の子がいたってこと?
誰かに
あの様子を見られてたってこと?

それってやばいでしょ!

今、噂って言ったわよね
もう、噂になってるの?

美菜の話を 
静かに聞いていたが
手の震えがおさまらない
慌ててテーブルの下へ 
でもきっと美菜には気付かれてる

美菜は
じっと私の顔を 
見ていたが
何を思ったか急に微笑み

でも先輩
もしも、もしもですよ? 
先輩と岡崎課長が一緒にいたとして
誰にも何にも言われる筋合い
ないですよねぇ

第一 うちの会社 
社内恋愛禁止ってわけでもないんだし
ましてや
先輩も課長もひとり身なんだし
不倫しているわけでもないんだから

いい加減2人ともいい年だし
どうせならくっついちゃったら 
いいじゃないですか
課長と先輩って
とってもお似合いだと思いますよぉ

ふぅとため息をついて
参りました とつぶやいた

美菜ちゃんあなたってひとは
あなたには
嘘を言っても駄目だろうから
正直に話すわ
そう言って
大きく息を吐いた

そう
あなたのお友達が見たことは
本当よ 
あの日
岡崎さんに声をかけてもらって
待ち合わせしていたの
たまたまチケットを 
貰ったらしくてね
そのチケットが
私の大好きなアーティストさんの物
だったので
イブだからというのではなく
純粋に聞きたいだろうと思って
声をかけてくださったの 
でも私ったら
ちょっとしたトラブルにあって
時間に遅れて行ったのよ

慌てて行った時は
もうアンコールの時間くらいに
なっててね

その時私の一番好きな曲が始まって 
その曲を耳にした途端
自分でもわけがわからぬまま
涙が出てきた
ということなの
残念ながら
ロマンティックな場面で
泣いた訳では
なかったのよ

美菜は目をパチパチさせながら
私の話に聞きいっていた
聞き終わると
嬉しそうに身を乗り出してきて
嬉しそうに一言

だから今日は素敵なヒール
履いているんですね
もしかして今夜はデートですか?

おいおい
まだ付き合ってる訳じゃ
ないってばー!