新しい年の始まりと共に何もかも一新しようと思った
「なにか良い事があった?」 そんな風にアサコ先輩に声をかけられて、私は苦笑した
「いえ、その反対ですよ良くない事・・・・というのか、
ちょっとむしゃくしゃしているので気合入れようかと思っていたところです」
「ははぁ~ん・・・彼氏と喧嘩でもしたのね? 気合か・・・ま、新年早々いい心がけでよろしい」
そう言って笑いながらアサコ先輩は、席についた 私は総一郎のことを聞いてもらおうか?と
ふと、考えたが きっとアサコ先輩なら
「そんな男のことは忘れて 次っ!行くのよ」なんて答えが返ってくるだろうと予測がついた
どんな理由があったにしても結婚を決めたことには違いない
もう二度と総一郎と関わることはないだろうと思い 私は仕事に没頭することにした

そんなある日珍しい人から連絡があった
やっと気持ちを落ちつかせたという啓太からの電話だった
「エリー僕はもう大丈夫だよ・・・ありがとう あの時そっとしておいてくれて
むしろそれがよかったのかもしれない
でもエリー?君は元気かい?どうしてるの? イチ兄ちゃんとのことびっくりしたよ
結婚式の案内があったから、てっきりエリーとのことがまとまったんだと思ってよく見たら
新婦の名前が違うじゃないか・・・どういうこと?何かあったの?」
私は啓太の元気そうな声と私のことを心配してくれる言葉になんだかホッとして、少しだけ涙が出た
電話口で悟られないようにして「私はいつでも元気よ、啓太が元気になってくれてよかったわ
どうなる事かと心配したけど・・・・」
「エリー久しぶりに会わないかい?」 そんな申し出を 私は丁寧に断った
「今、啓太に会うのはやめとく また同じことの繰り返しのような気がするから
総一郎とは結局 “縁がなかった” ということやと思うねん、心配してくれてありがとうね
またいつかきっと会おうね・・・・」
啓太の声は明らかに残念そうだったが 私は、新たなものへと向かいたい気持ちでいっぱいだった
そうしなければならないと、心に言い聞かせていた
「また電話してもいいかな?」その問いには笑って答えた 「もちろん!」・・・と
女性の方が立ち直りが早いなんて言葉をよく聞くが私は決してそうは思わない
たとえば、憎むほど嫌いになったり、暴力をふるわれたり
そんな・・嫌な思いをした人でない限り心の中に気持ちは残るはずだ
上手く消化して次へと進みたいと思うのだろうが、全てがうまく行くとは限らないのだ
言葉の行き違いや、ちょっとしたすれ違い そんなことで簡単に壊れてしまうものがあるんだと知った
それからの私は、恋愛という甘い言葉が似合うような恋とは程遠い生活を送っていたように思う

私が社会人になって5年の月日が流れたころ アサコ先輩が突然結婚すると言いだした
アサコ先輩は私よりずい分上だったはず・・・・年齢のことを言うと怒られるけど・・・
「結婚なんてするつもりなかったんだけど・・・アイツが“どうしても” って言うからぁ~」
なんて・・・珍しくニヤけた顔で言うアサコ先輩がかわいらしく見えた
「実はさ・・・ずいぶん昔から腐れ縁的に付き合いのあった男なのよ、
相手は私のこと女だなんて意識していないと思っていたのに
突然“お前はいつまでひとりでいるんだ?”って聞くから
“誰ももらってくれないんだから、いつまでって聞かれてもわからないわよ
そんなことを言うなら、アンタがもらって頂戴よ”って言ったらさぁ~
“じゃぁ仕方がないからもらってやるよ” だってさ あはっ・・・仕方がないからってのが余計だけどね」
といいながら、アサコ先輩はとても幸せそうだった
そう言って、アサコ先輩はあっさり仕事を辞め 専業主婦という道を選んだ
仕事を続けるのもだと思っていた私は、話相手がいなくなることがちょっぴり残念だったが
幸せオーラを沢山もらった気がして、私自信も幸せな気分だった