心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

約束の行方・・・vol.42

2013-03-31 13:44:06 | 約束の行方


新しい年の始まりと共に何もかも一新しようと思った


「なにか良い事があった?」 そんな風にアサコ先輩に声をかけられて、私は苦笑した


「いえ、その反対ですよ良くない事・・・・というのか、


ちょっとむしゃくしゃしているので気合入れようかと思っていたところです」


「ははぁ~ん・・・彼氏と喧嘩でもしたのね? 気合か・・・ま、新年早々いい心がけでよろしい」


そう言って笑いながらアサコ先輩は、席についた 私は総一郎のことを聞いてもらおうか?と


ふと、考えたが きっとアサコ先輩なら


「そんな男のことは忘れて 次っ!行くのよ」なんて答えが返ってくるだろうと予測がついた 


どんな理由があったにしても結婚を決めたことには違いない


もう二度と総一郎と関わることはないだろうと思い 私は仕事に没頭することにした








そんなある日珍しい人から連絡があった


やっと気持ちを落ちつかせたという啓太からの電話だった


「エリー僕はもう大丈夫だよ・・・ありがとう あの時そっとしておいてくれて


むしろそれがよかったのかもしれない


でもエリー?君は元気かい?どうしてるの? イチ兄ちゃんとのことびっくりしたよ


結婚式の案内があったから、てっきりエリーとのことがまとまったんだと思ってよく見たら


新婦の名前が違うじゃないか・・・どういうこと?何かあったの?」


私は啓太の元気そうな声と私のことを心配してくれる言葉になんだかホッとして、少しだけ涙が出た


電話口で悟られないようにして「私はいつでも元気よ、啓太が元気になってくれてよかったわ


どうなる事かと心配したけど・・・・」


「エリー久しぶりに会わないかい?」 そんな申し出を 私は丁寧に断った


「今、啓太に会うのはやめとく また同じことの繰り返しのような気がするから


総一郎とは結局 “縁がなかった” ということやと思うねん、心配してくれてありがとうね


またいつかきっと会おうね・・・・」


啓太の声は明らかに残念そうだったが 私は、新たなものへと向かいたい気持ちでいっぱいだった


そうしなければならないと、心に言い聞かせていた


「また電話してもいいかな?」その問いには笑って答えた 「もちろん!」・・・と







女性の方が立ち直りが早いなんて言葉をよく聞くが私は決してそうは思わない


たとえば、憎むほど嫌いになったり、暴力をふるわれたり


そんな・・嫌な思いをした人でない限り心の中に気持ちは残るはずだ


上手く消化して次へと進みたいと思うのだろうが、全てがうまく行くとは限らないのだ


言葉の行き違いや、ちょっとしたすれ違い そんなことで簡単に壊れてしまうものがあるんだと知った



それからの私は、恋愛という甘い言葉が似合うような恋とは程遠い生活を送っていたように思う







私が社会人になって5年の月日が流れたころ アサコ先輩が突然結婚すると言いだした


アサコ先輩は私よりずい分上だったはず・・・・年齢のことを言うと怒られるけど・・・



「結婚なんてするつもりなかったんだけど・・・アイツが“どうしても” って言うからぁ~」


なんて・・・珍しくニヤけた顔で言うアサコ先輩がかわいらしく見えた


「実はさ・・・ずいぶん昔から腐れ縁的に付き合いのあった男なのよ、


相手は私のこと女だなんて意識していないと思っていたのに


突然“お前はいつまでひとりでいるんだ?”って聞くから 


“誰ももらってくれないんだから、いつまでって聞かれてもわからないわよ


そんなことを言うなら、アンタがもらって頂戴よ”って言ったらさぁ~


“じゃぁ仕方がないからもらってやるよ” だってさ あはっ・・・仕方がないからってのが余計だけどね」


といいながら、アサコ先輩はとても幸せそうだった


そう言って、アサコ先輩はあっさり仕事を辞め 専業主婦という道を選んだ


仕事を続けるのもだと思っていた私は、話相手がいなくなることがちょっぴり残念だったが


幸せオーラを沢山もらった気がして、私自信も幸せな気分だった



















約束の行方・・・vol.41

2013-03-29 09:41:36 | 約束の行方


「お元気そうって・・・ずい分冷たい言い方だね」


「冷たいって・・・あなたこそ、主役が抜け出してきてよかったの?


今日は可愛い人のお披露目なんでしょう?」 きっと嫌味な言い方をしていただろう


現に嫌味で言ったのだから仕方ないが、総一郎は絶句している


「何か言いたいことでも? 言い訳? 何もないなら帰ります。私、急いでますので」







“お見合い? 面白そう! してみれば?” そんな冗談のような一言であの日ケンカ別れをした


車から無言の重圧で下ろされた・・・けれど、すぐに追いかけてくれるものだと思っていた


寒空の下、地下鉄への階段脇で少し足を止めた私は、総一郎の車がそのまま走り去るのを


悲しく見送った。 “あんなことで本気になって怒るなんて” と心底大人げない人だと思った


あのちょっとした一言でここまで事態が変わっているのだ、


あの日からまだひと月ちょっとしか経っていない


私自信まさか、婚約まで済んでいるとは思ってもみなかった 


これ以上私を引き止めてこの人は何が言いたいのだろう? 今さら言い訳なんて聞きたくない






いつだったか誰かに聞いたことがある 


“お見合いっていうのは、受けたら最後 本人の意思とは違った方向へ


どんどん話が進んでゆく、女性からならまだしも男性から断りを入れるなんてのはもっての外


女性が「気に入らない」と言わなければ、どんどん物事が決まって行く” のだそうだ


そんなことをふと思い出したが、総一郎がそうだったとでも言いたいのだろうか?


今となっては、何を言われても手遅れだし今さらそんなことを言われても


いずれにしても私はまだ“結婚”自体したいとは思っていない どの道上手くは行かないのだ






総一郎は 「絵里子・・・あの時は悪かったよ、追いてきぼりで寒かっただろう?


あれから少ししてオレは勢いで、前から進められていた見合いに出かけた


自分でも何が何だか・・・知らない間に周りがどんどん話を進めて・・・お披露目だなんて・・・


今日もそんなことだとは知らずに来たんだ、言い訳に聞こえるだろうけど


オレは・・・オレの本心は・・・」


「総一郎? 今さらそんなことを言われて 


“ハイ そうですか、じゃぁ仲直りしてこの先楽しく過ごしましょう”なんて、出来る訳ないやん


“志穂さん? かわいらしいし、感じの良い人やん ええんちゃう? 


私らは、結局上手くいく運命じゃなかったのよ 総一郎から言い訳なんて聞きたくなかったわ」


「絵里子・・・志穂さんのこと知っているのか?」


「さっき総一郎が来る前に“こんな場所は疲れるね~”って世間話をちょっとしただけ


まさか、あなたの婚約者だなんて思ってもみなかったから・・・・」


「そうか・・・」


そう言ったきり総一郎は俯いて 「もう取り返しは付かないのか・・・・」 寂しそうにつぶやいた


「じゃぁ、お幸せにね さようなら」 私は、そう言ってまだ何か言おうとしている総一郎を置いて


ホテルを後にした。 













約束の行方・・・vol.40

2013-03-28 10:24:33 | 約束の行方


「あら、お酒ダメなのですね 残念・・・」 私はかわいらしいその人を心から気の毒に思った


お酒が飲めるということがそれほど立派なことではないが、


お酒を飲むと楽しくなったり、時には悲しい事を紛らわせる手助けとなることもある


仕事をする上でも何かと役に立つことがある


私の家族は皆それぞれに飲める人ばかりで、仕事上お客様から“一緒に”と勧められる事もある


そんなことを考えながら“お酒飲めへんかったら、付き合いの悪いヤツって思われるやろうなぁ”


などと、“余計なお世話” な事を考えたりしていた


表面上はにっこり笑いながら“実は私、叔母の代わりに来たので こういう席はあまり得意でなくて”


などと、世間話をしながらその場をしのいでいた


その女性も “私もこういう場所は初めてで、どうしたらいいのかわからなくて・・・” などと言っている


同じような立場で来ているのかな?と思っていた矢先


「あらまぁ志穂さん、こんなところにいらっしゃったのね さぁさあちらへ、みなさまに紹介致しますから」


そう言いながら、さっき挨拶を交わした総一郎の母親がやってきた


・・・・・・・と、いうことは・・・この人が総一郎の・・・???


“へぇ~こういうタイプに落ち着くんや・・・なるほど” 私は至って冷静にその人を見つめ


“あ、はい・・・では失礼致します・・”と、頭を下げるその人を笑顔で見送った


ではあの女性は、今日正式にこの場であの沢山のオバさま方に紹介され


やがては総一郎と二人でこういう場へ来るのだろうな・・・


考えてみれば長男である総一郎と結婚するということは


この堅苦しい場へしょっちゅう出入りすることになる


しかもあの義母とも上手くやって行かなければならないだろうし


やれ子供は?だの一人じゃかわいそう だのあれやこれやと煩く言われるだろう


“とうてい私には無理やわ・・・むしろ良かったのかも” などと一人で納得したのだった





ふわっと覚えのある匂いが、横を通り過ぎて行った


慌てて急ぐその人は私の存在には気がつかず、“志穂さん” がいる集まりの中へと歩いて行った


“まぁ遅かったのねぇ~” と大きな声が聞こえ何やらがやがやとその輪が賑やかにざわついていた


私は、叔父を探して “先に帰りたい”と伝えようとしたが、どういう訳か叔父もその輪の中にいたのだ


“あああ・・・これは困ったどないしよう”もうしばらくここで座っているしかない


私は諦めて、その輪には背中を向ける形で座り 


食欲は、あまりなかったが適当なものをつまんで食べた


しばらくその場をやり過ごし、そろそろいいかな・・・? と振り向いたとき


輪の中にいた総一郎とばっちり目があってしまった


私は、彼がいることを知っていたのでそれほど驚きもせず静かに頭を下げた


総一郎の方はかなり驚いた様子で、一瞬固まったが彼の視線は私にしっかりと注がれた後


宙をさまよい やがて、周りにいる人たちへと落ち着いた


気がついたのならいいかな、と思い 私はまっすぐその輪の方へと歩いて行き


総一郎のことは知らない人として叔父の袖を引っ張った


耳元へ「おじちゃんもうそろそろ帰りたいねんけど・・・ええかな?私一人で先に帰ってます」


と告げた。 


叔父は「ん?ああ・・ごめんごめん 僕はもう少しいるから 


じゃあ絵里ちゃん悪いけど帰ったら加奈子さんのことお願いしてもいいかな」と申し訳なさそうに言った


私は笑ってOKと指で示して さっさとその場を立ち去った


会場を出て手洗いだけ済ませて帰ろうと歩いていると、後ろから誰かが駆け寄ってきた


振り向かなくてもわかる それは間違いなく総一郎だ


何度も包まれたあの匂い・・・・私がお気に入りだった匂い・・・





「絵里子!」 総一郎は後ろから私の腕をつかんで 周りから見えない通路へと連れて行った


「あら、お久しぶりですね お元気そうでなによりですこと」 私はなるべく落ち着いてそんな風に言った






約束の行方・・・vol.39

2013-03-27 09:58:23 | 約束の行方


ちょっと後悔してた・・・・


でも、私の意地っ張りは今始まった訳ではなく自分でもどうしようもないから困ったもんだ


とにかく、なるようになれという諦めにも似た気持ちで


クリスマスは、一人で過ごし あっという間に新しい年を迎えた


毎年夫婦で参加している大事なパーティーの前日、珍しく叔母が風邪をひき辛さそうにしていた


パーティーでは叔父の仕事関係の方も沢山集うので、出来れば欠席したくないらしいが


風邪を引いたままで行くわけにもいかない


そこで “もしや・・?” と予感していたひと言が、叔父の口から飛び出した


「絵里ちゃん、明日のパーティーなんだけど 一緒に行ってくれないかい?」


私はいつも世話になっているこの人たちが、困る姿は見たくない


嫌だという顔は見せられないので笑って引き受けた





嫌だと思う原因の一つは、賑やかな集まりそのものがあまり得意でないこと


それともうひとつ・・・もしかしたら、その場には総一郎の姿があるかもしれない


ということだった


5年前のそのパーティーの席で総一郎に初めて会ったのだから・・・



もし会ったらどんな顔をすればいい? 逃げだすことは出来ない


いろんなことを頭に巡らせ、気合を入れて会場へと入った






相変わらず賑やかなオバさまたちが、これでもかというほどに着飾って


密かなアピール合戦が、あちこちで繰り広げられている


その中で比較的穏やかな・・・とでもいうのか、大人しい雰囲気の人が集まっているそばへ


叔父は近寄って行った


私は叔父と はぐれないよう必死に後をついて歩き 


紹介されるたびに満面の笑みで微笑み “叔母の代理だ” と挨拶した


大人しそうだがしっかりまわりを牛耳っていると感じたその婦人は総一郎の母だった


周りの取り巻きが “森下さま” と呼んでいたのだから間違いない


当然相手は私のことなど知るはずもなく


“まあ、奥さま風邪をお引きなったの、お大事にとお伝えくださいね”


と、優しく私に微笑んでくださった


頭を下げて立ち去ろうとした時、聞こえた話・・・・


“まぁ・・・そうですか、おめでとうございます 次男さんだけでなくご長男さんも・・・なのですね


それはそれは・・・おめでたいこと続きで・・・”


はっきりとは聞こえなかったが、それは総一郎も見合い相手との話がまとまったという趣旨の話だった


叔父が一通りご贔屓筋に挨拶を済ませ “絵里ちゃんありがとう、ちょっとゆっくりしてくれていいよ


何か美味しいものでも食べて来て” と言ったので、私は一人料理の並べられたテーブルへと歩みより


何があるのかな・・・・と思いながらも、ぼんやりしていた




ショックだった、というより悔しかった


“あの状態で別れて、ホンマに見合いするか? しかも、もう決まったって・・・あほらし・・・”


心の中でつぶやいた


食べる気にはならなかった、シャンパンをもらうと一気に飲み干し “はぁ~美味し!”と、つぶやいた 


その時急に横から話しかけられて、私は飛び上るほど驚いた


「お酒が飲める方が羨ましいですわ、私は全く飲めなくて・・・・」


横にいた同じ年頃の小さくてかわいいという印象の女性が、私に声をかけたのだった


私とは正反対な雰囲気 身長は?150?くらいか・・・とにかく私の肩の辺りくらいしかなく


“守ってあげなくちゃ” という雰囲気の清楚な女性だった





約束の行方・・・vol.38

2013-03-26 09:58:28 | 約束の行方



“私は薄情な女だ・・・・” そう思いながらも時間は確実に過ぎてゆく


立ち止まっていても仕方がないのだから


私は啓太に対し“そっとしておく”という表向き綺麗に聞こえる言葉で


結局は、ほおっておいた・・・


どうする事も出来ないのだからという理由であの日から長い間連絡もせずに過ごしていた


秋も終わり クリスマスを感じさせる気配が街中を飾りだした頃


総一郎からこんなことを聞かされた





“来年の春に弟が結婚することになったんだよ” 


“ちょっと気が早い話だけどあっという間にやってくるよね”・・・と、


総一郎の弟である総太郎さんは、来年春3月に結婚式を挙げることになったらしく


そんなことを言いだしたので


“自分より先に弟が結婚することに悔しい気持ちでいるのだろうか?” とか


“私がいつまでもぐずぐずしているからだろうか?” などと勝手に考えていると


「そこで・・・・なんだけど、周りがさ長男のお前はいつまで、ふらふらしているんだ?


いい加減身を固めろ、相手がいないのなら見合いでもどうだ? 


って、見合い相手を紹介すると言いだしたんだ」


親戚の中には世話好きな人が何人もいて困っているという


「お見合い? へぇ~いいじゃないですか、やってみれば?」 と、つい笑って言ってしまった


すると、 「そうか、絵里子はそんな風に考えているんだな


オレも最近いい加減どうにかしなくちゃいけないと


本気で思っていたところなんだよ、君にその気がないってことがやっと本当にわかったよ


大人のふりして気長に待とうって思っていたけど


どうやら、待っていてもどうにもならないようだね? 


そもそも絵里子はオレのこと本気で好きなのかな?」


私の反応を見て、総一郎はそんなことを言いながらかなり本気で怒りだした


この人が本気で怒ったのを見たのは初めてだったのでちょっと怖かった


私は決して怒らせるつもりだったわけでもなく、


本気で見合いなどという話受けるとも思っていなかったので


さすがにこの反応には驚いた


驚きすぎて、何も言えなかった


「何も言わないということは、やっぱりそう言うことなんだね?」


総一郎は珍しくちょっと興奮気味になっている


私はますます何も言えずになんだか勝手な事を言っている目の前の人に段々腹が立ってきて


とうとう言ってはいけないことを言ってしまった。


「ホンマ、大人げないわ 周りがあれこれ言わはるからって私に当たらんでもええんとちゃいます??


私はまだ仕事がしたい、今楽しくて仕方ないのに 


それでもどうしても白黒はっきりさせなアカンのでしたら


今は、無理です! 総一郎さんの気持ちには答えられません


見合いでも何でも好きにしたらええやんか」


はぁ・・・・・最悪!! もう自分で自分が止められない・・・・


「わかった、オレもちょっと考えてみるよ」 そう冷たい口調で言い残し


その日総一郎は食事もせず、送ってもくれず・・・


私は、大通りの並木道の横で車から降ろされたのだった





「うう・・・・さむぅ~」 腹が立ったが仕方がない自分が蒔いた種なのだから


冗談が冗談でなくなって怒らせるつもりもなく、怒るとも思わなかった出来事に呆然としたが


私自信も自分の気の強さが今さらながら可笑しくて 寒さをこらえながら地下鉄への道を歩いたのだった