心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

星屑の涙 ~秘密3~

2014-07-18 20:58:23 | 星屑の涙

「ママ! 明日は遠足だよ

お弁当にはタコのウインナ忘れないでね」

あれから5年・・・

私は達也には会うこともなく相談することもなく

母の実家がある神戸で子供を産んだ

そして横浜の住まいを神戸へと移していた


母は最初のうち呆れていたが、次第に協力的な態度にならざるを得なくなり

今では“あーちゃま”と呼ばれて嬉しそうだ

祖母は私の一番の強い味方であり頼もしい父の役目を担ってくれている

今時シングルマザーなど珍しくもない

家柄がどうとか、結婚もせずとか相手のわからない子だと

とかくうるさく言う父も祖母になだめられて何も言わなくなった

本当に何も言わないのは、博樹の可愛さゆえのことだろう

どうしようもなく親ばかだとは思うが博樹は人並み以上の容姿をしていると

私は思っている

もしも達也に似たならば、きっと体格もしっかりと大きくなるであろう

将来父親のことを聞かれたらはっきりと答えるつもりでいる

隠してどうなることでもない

来年の春には小学生になるこの元気な子を私は一番の宝物として

大切に育てなければならない



3年ほど前にイチロ兄から達也夫婦が正式に離婚したと聞かされた

理由は私のことではなく

美咲の金銭トラブルだそうだ

深くは聞かなかったが、私のことがなかったとしても

あの二人の関係は上手く行かなかったのだろう


いずれにしても私には関係のないことだと聞き流していた


母の実家近くのマンションを選んだのは景色のよさに他ならない

少し距離はあるがしっかりと海が見える

亮介との思い出ばかりが思い出される海も

やんちゃざかりの博樹にせがまれ行くうちに、今までとは違ったものに見えてきた






“過去とは違う私を探す旅に出よう

これからは苦しかった過去を心の奥深く封印して

前を向いて生きてゆく

亮介・・・ありがとう・・・そして、さようなら”



子供を産もうと決心したあの時、私は心から亮介に別れを言えた

それが終わりであり始まりなのだから・・・






























星屑の涙 ~秘密2~

2014-04-07 22:06:39 | 星屑の涙


やはり・・・

祖母の予想通りの結果が告げられた

私は達也との間に子供を授かっていたのだ



最初は医者から告げられた言葉が信じられなかった

私にはあり得ないと思っていたことだけに信じられないと思ったのだが

同時になぜかとても嬉しい気分になったのだった

普通他人が聞いたら “嬉しい”なんて表現に疑問を持つ人の方が多いだろう


達也との関係は、許されるものではなかったし

実際達也との関係は、終わっている

達也の子供だから嬉しいのではなく

子供を授かることが出来たということ自体が単純に嬉しかったのだ



私だけの心に秘めた秘密の出来事・・・・



それはあの時

あの悲しい事故の知らせを受けた時

私は亮介だけでなく

もう一つ小さな・・・・

私が、私だけがかすかに感じていた小さな小さな命までも失ったのだった



嬉しくて早く話したくて気持ちを押さえるのが必死だったあの日

あの人は、まだ光を浴びることもない小さな命までも一緒に連れて行ってしまった


祖母は気づいていないと思っていたのに

お医者様から帰ってきた私を見るととてもにこやかな笑顔で

「世間さまがなんと言おうと私はあなたの味方やからね

大事にせなあかんね今度こそ・・・」

と、笑って受け入れてくれた


唯一母だけが、亮介との間のことを知っているのだと思ってた私は

少々面食らったが、よくよく考えてみると

あの時母は、気持ちを病んでいて実家へ帰って来ていたのだから

その母の動揺を祖母が気づいていないはずはなかったのだ


精神的なショックと身体までも傷ついてしまった私は、あの時医者から

残念ながら、将来子供を授かることが出来ないかもしれないと告げられていた

それは絶対と言われていた訳ではなかったが

それ以来私自信 諦めや開き直りもあって相手任せにしていたところがあったのだ


「真理子ちゃん、相手の人にはちゃんと話せなアカンのよ

最終的には自分の身体なんやから自分が決めたらええと思うけれど」

「おばあさま・・・もしかして相手のこともわかるの?」

「さて・・それはどうかな、そやけどあなたまだ一人身なんやから

相手とはこの先があるのか? どうなのか?

どちらにしても順番が違うのやから、ちゃんと話して決めなアカンね」

「あのね、おばあさま実は相手とはもう会うことはないと思うの

家庭がある人でね、しかも私その人にはもう気持ちがないのよ」

祖母は黙って聞いてくれていた

どう感じたのか その表情からは読み取れなかったが

責めたりするような言葉はなく

いつものやわらかな笑顔だけを浮かべて

「あなたも、あの時とは違って大人なのやから

どうしたいのか、どうするべきか

判断できるし、周りがとやかく言う資格はないわ

とにかくしばらくここでゆっくりして行ったらええのと違う?」

といたずらっぽく言うと

「ああ、なんだかお腹が空いて来たねぇ

あ、そうそう・・・真理子ちゃんお酒だけはアカンよ

これだけは、年寄りの小言として言わせてもらうわよ

はるみさん今夜のお夕食は何にしよう?」

と言いながら嫁である晴海叔母さまのいるキッチンへと姿を消したのだった



























星屑の涙 ~秘密1~

2014-01-31 23:33:38 | 星屑の涙

いつになく忙しかった

自分の体調不良に苛々していた

好きなお酒も飲みたくなかった

達也との別れでこんなにも自分の気持ちが不安定になるなんて

正直思ってもみなかった

本気になんてなるはずもない

なれる相手でもなかったし、

亮介以外に心を動かす人などあり得ないと思っていた

そんな自分を認めたくなくて自分に腹が立っていた

情けない・・・考えたくなかった

そんな時、神戸に暮らす祖母から手紙が来た

久しぶりに遊びに来ないかと言う内容だった

祖母は年に1、2度手紙をよこす

内容は他愛もない事だがこの筆まめな姿には

いつもながら頭が下がる

モヤモヤした気持ちを紛らわせたくて、週末神戸へ行くことにした

母方の祖母は相変わらず若々しい

10代の頃に母を産み、母も比較的若い頃に私たちを産んだので

私と祖母が親子だと思う人もいるかもしれない

そして何より鋭い感性の持ち主だった

私をみるなり「あら、真理子ちゃん

ひどい顔してるねぇ、最近男の人と揉めたのと違う?」

「おばあさまには隠し事ができないね

揉めたと言うのはちょっと違うけど

そうともいえるのかな・・・」

「でも、ひどい顔はそれだけが原因じゃないね

思い当たることがあるやろ?」

祖母の言葉に驚いたが

やはり確かめなくてはいけない事なのだと

この時はっきりした





星屑の涙・・・25

2014-01-26 13:13:41 | 星屑の涙

呼び出し音が何度か鳴ったあと

“ただいま電話に出ることができません”

のアナウンスがあり電話は切れた

仕方がないので、その日はそのまま眠ることにした


その夜私は、イチロ兄の家に車を置いたまま

佐藤さんと一緒にタクシーに乗り合わせて帰ってきた

佐藤さんはご機嫌で「またそのうちみんなでゆっくり飲もうね」

と言いながら、十分過ぎるタクシー代を私に握らせて降りていった

飲み過ぎたりはしていない、いろんな話を聞き過ぎただけ・・・

むしろ私は、ほとんど飲んでいなかった

それでも気分が悪いのは、昼間の出来事のせいだろうか

あれこれ考えても仕方がないので無理をしてベッドへ潜り込んだ

眠りたいのに目が冴えて眠ることが出来ない


アロマのキャンドルに灯をともし、薄めの水割りを作った

しばらくぼんやりとキャンドルを眺めているところへ

インターフォンが鳴った

こんな時間にやって来た人に大体の予想は出来た


「ごめんなさい、悪いけど 今夜は帰ってくださらないかしら?」

「真理子、さっき電話くれただろう?開けてくれよ!」

大きな声を出すその訪問者に仕方なくオートロックを解除した


「美咲のやつお前さんの素性まで知ってやがった

真理子、お前の従兄弟とアイツは同級生なんだってな?」

「そうみたいね、今日は私その従兄弟達と一緒だったのよ」


うん、それも聞いた

あいつ・・・そのコンペに自分の知ってる探偵を潜り込ませたようで

“なにもかも知ってるんだ”なんて言いだして

“金持ちが相手だってわかっているから”って・・・・


きっとアイツ・・・金が目当てなんだよ

今まで不自由はさせたつもりなかったのに

“もうあなたとは無理だから、その女のところへ行けばいい”なんて言いだす始末だよ


開き直っているやつにはかなわない 何をいっても無駄って感じで・・・


それで出てきたって言うの?

私は、そんなお下がりみたいな男と一緒になるつもりはないわ

悪いけど、やっぱり今夜は帰ってくださらないかしら

もしこの先美咲さんが何か言ってきたとして、

“はいそうですか”って、私がお金を出すとでも思う?


美咲さん自信も同じようなことをしていて

それを私が知っていることも彼女はわかっているのよ

あなたが情けない態度でいるから、そんな風に言われたんでしょう?

彼女きっと内心ではお金が捕れるなんて本気で思ってないはず

あなたとの関係を解消しようと思っているかは、定かではないけれど

とにかく帰って頂戴、もうあなたと会うこともないわ


私の気持ちは一気に冷めていた、ざわついていた気持ちも落ち着いていた









「ったく、いい加減にしろよな」

そういい残してアイツは出ていった

これでいい・・・これでやっと終わりに出来る

「さよなら・・・」 閉まったドアに向かって静かにつぶやいた












星屑の涙・・・24

2014-01-23 10:01:56 | 星屑の涙

“どういうこと?”

その言葉ばかりが脳裏に浮かぶ

美咲は達也と私のことを どこまで掴んでいるのだろう?

この二ヶ月ほどは全く連絡を取っていなかったのだが

何か話が出たのだろうか?

何れにしても私から動くことは出来ない

いろんなことが頭のなかでぐるぐると廻る

なにも知らない三人は、まだ美咲や三宅さんの話で盛り上がっている


「そう言えばさ、小西が旦那のことを口にすること自体珍しいよな

アイツら完全に仮面夫婦ってやつだろ?」

「アイツ今だに稲垣とよろしくやってんだろうから

旦那が気づいて逆上したとか?」

「いや、もしかしたら旦那の方も腹いせに浮気やっちゃったりしてな」

「まぁな、何れにしても俺らには関係のない話だ なぁ?真理子ちゃん」


突然佐藤さんにそう言われて誰もがわかるほど私は驚いてしまった


「おい?どうした?今日の真理子は、らしくないね? 大丈夫かい?」

イチロ兄が心配そうにこちらを見つめている

「午後から急に調子を崩したんだろう? お昼に何か嫌なことでもあったのかい?」

鋭い指摘に益々私はびくついて、ついにはその場に座っていられなくなり

「いいえ、特になにもなかったけれど 久しぶりのラウンドにとにかく疲れただけだと思うの

少し外の風にあたってくるわ、調子に乗って飲みすぎたのかもしれない」

そうごまかしながら、席をたった



庭先においてあったチェアに座り空を見上げる

「亮介、助けて・・・ダメねこんな私、

あなたは空の上からきっとこんな私を見て呆れているでしょうね

もう達也とは本当に終わりにしなくちゃいけないわよね」


誰もいない空に向かってひとり呟いた


いつの間にか可愛らしい女の子がそばまで来ていた

不思議そうに私の顔を覗き混んだかと思うと、泣き真似をしたのだった

“え?・・・”と驚いたが、どうやら私は涙をこぼしていたらしく

その子の仕草で自分の涙に気がついたのだった

歩き始めたばかりであろう・・・歩くのがとにかく楽しそうな小さな少女

この子はイチロ兄の三番目の子で

上の子達とは少し年が離れて出来た女の子

総太郎おにいちゃまのところに三人目が出来たといっていた頃

同じように志穂さんのお腹にも新しい命が芽生えていた

それにしてもどうしてこんな時間にこの子が?と思っていたところへ

“しおり~”といいながら志穂さんがやって来た

「まぁ、真理子さんがいたのね?この子ったらお客様の気配に眠ってくれなくてね

気を紛らわそうと外へ出てみたのよ、なぜかこちらを気にするので来てみたら・・・」

「あら・・・煩くて眠れなかったのね?ごめんなさいね パパ達盛り上がっちゃってるからね」

いいえ、いいんですよ我が家へ集まるのは久しぶりなんだから

それはそうと・・・真理子さん飲み過ぎ?少し顔色が悪いようね」

栞ちゃんとやって来たのをきっかけに、私は少しの間 志穂さんと話をした。

ご苦労されているだろうと、気遣ってみたが志穂さんは笑って

「それがね、最初は大変だったんですけど

この子が生まれたくらいから急にお義母さまの態度が変わったのよ

上の二人が男の子でそれはそれは喜んでくださったのだけど

その分あれこれと注文が多くて大変だったわ

でも女の子ができたとたん人が変わったようになってね

自分が生むことができなかった女の子を生んでくれたと

この子の誕生にとても喜んでくださって

煩いことはまったく言わなくなったのよ、不思議でしょう?」


普通は、男の子を生むと誉められるって言うけれど

むしろ逆だったわ


そう言えば・・・

あの飲み会の時は、まだ志穂さんのお腹のなかにいることさえ分からなかった

時のたつのは早いもので、達也と出会ってずい分経ったのだ



やはりそろそろ潮時なのだと、この時改めて思いなおし

今夜は思いきって達也に連絡しようと心に決めた