やはり・・・
祖母の予想通りの結果が告げられた
私は達也との間に子供を授かっていたのだ
最初は医者から告げられた言葉が信じられなかった
私にはあり得ないと思っていたことだけに信じられないと思ったのだが
同時になぜかとても嬉しい気分になったのだった
普通他人が聞いたら “嬉しい”なんて表現に疑問を持つ人の方が多いだろう
達也との関係は、許されるものではなかったし
実際達也との関係は、終わっている
達也の子供だから嬉しいのではなく
子供を授かることが出来たということ自体が単純に嬉しかったのだ
私だけの心に秘めた秘密の出来事・・・・
それはあの時
あの悲しい事故の知らせを受けた時
私は亮介だけでなく
もう一つ小さな・・・・
私が、私だけがかすかに感じていた小さな小さな命までも失ったのだった
嬉しくて早く話したくて気持ちを押さえるのが必死だったあの日
あの人は、まだ光を浴びることもない小さな命までも一緒に連れて行ってしまった
祖母は気づいていないと思っていたのに
お医者様から帰ってきた私を見るととてもにこやかな笑顔で
「世間さまがなんと言おうと私はあなたの味方やからね
大事にせなあかんね今度こそ・・・」
と、笑って受け入れてくれた
唯一母だけが、亮介との間のことを知っているのだと思ってた私は
少々面食らったが、よくよく考えてみると
あの時母は、気持ちを病んでいて実家へ帰って来ていたのだから
その母の動揺を祖母が気づいていないはずはなかったのだ
精神的なショックと身体までも傷ついてしまった私は、あの時医者から
残念ながら、将来子供を授かることが出来ないかもしれないと告げられていた
それは絶対と言われていた訳ではなかったが
それ以来私自信 諦めや開き直りもあって相手任せにしていたところがあったのだ
「真理子ちゃん、相手の人にはちゃんと話せなアカンのよ
最終的には自分の身体なんやから自分が決めたらええと思うけれど」
「おばあさま・・・もしかして相手のこともわかるの?」
「さて・・それはどうかな、そやけどあなたまだ一人身なんやから
相手とはこの先があるのか? どうなのか?
どちらにしても順番が違うのやから、ちゃんと話して決めなアカンね」
「あのね、おばあさま実は相手とはもう会うことはないと思うの
家庭がある人でね、しかも私その人にはもう気持ちがないのよ」
祖母は黙って聞いてくれていた
どう感じたのか その表情からは読み取れなかったが
責めたりするような言葉はなく
いつものやわらかな笑顔だけを浮かべて
「あなたも、あの時とは違って大人なのやから
どうしたいのか、どうするべきか
判断できるし、周りがとやかく言う資格はないわ
とにかくしばらくここでゆっくりして行ったらええのと違う?」
といたずらっぽく言うと
「ああ、なんだかお腹が空いて来たねぇ
あ、そうそう・・・真理子ちゃんお酒だけはアカンよ
これだけは、年寄りの小言として言わせてもらうわよ
はるみさん今夜のお夕食は何にしよう?」
と言いながら嫁である晴海叔母さまのいるキッチンへと姿を消したのだった