心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

星屑の涙 ~秘密1~

2014-01-31 23:33:38 | 星屑の涙

いつになく忙しかった

自分の体調不良に苛々していた

好きなお酒も飲みたくなかった

達也との別れでこんなにも自分の気持ちが不安定になるなんて

正直思ってもみなかった

本気になんてなるはずもない

なれる相手でもなかったし、

亮介以外に心を動かす人などあり得ないと思っていた

そんな自分を認めたくなくて自分に腹が立っていた

情けない・・・考えたくなかった

そんな時、神戸に暮らす祖母から手紙が来た

久しぶりに遊びに来ないかと言う内容だった

祖母は年に1、2度手紙をよこす

内容は他愛もない事だがこの筆まめな姿には

いつもながら頭が下がる

モヤモヤした気持ちを紛らわせたくて、週末神戸へ行くことにした

母方の祖母は相変わらず若々しい

10代の頃に母を産み、母も比較的若い頃に私たちを産んだので

私と祖母が親子だと思う人もいるかもしれない

そして何より鋭い感性の持ち主だった

私をみるなり「あら、真理子ちゃん

ひどい顔してるねぇ、最近男の人と揉めたのと違う?」

「おばあさまには隠し事ができないね

揉めたと言うのはちょっと違うけど

そうともいえるのかな・・・」

「でも、ひどい顔はそれだけが原因じゃないね

思い当たることがあるやろ?」

祖母の言葉に驚いたが

やはり確かめなくてはいけない事なのだと

この時はっきりした





星屑の涙・・・25

2014-01-26 13:13:41 | 星屑の涙

呼び出し音が何度か鳴ったあと

“ただいま電話に出ることができません”

のアナウンスがあり電話は切れた

仕方がないので、その日はそのまま眠ることにした


その夜私は、イチロ兄の家に車を置いたまま

佐藤さんと一緒にタクシーに乗り合わせて帰ってきた

佐藤さんはご機嫌で「またそのうちみんなでゆっくり飲もうね」

と言いながら、十分過ぎるタクシー代を私に握らせて降りていった

飲み過ぎたりはしていない、いろんな話を聞き過ぎただけ・・・

むしろ私は、ほとんど飲んでいなかった

それでも気分が悪いのは、昼間の出来事のせいだろうか

あれこれ考えても仕方がないので無理をしてベッドへ潜り込んだ

眠りたいのに目が冴えて眠ることが出来ない


アロマのキャンドルに灯をともし、薄めの水割りを作った

しばらくぼんやりとキャンドルを眺めているところへ

インターフォンが鳴った

こんな時間にやって来た人に大体の予想は出来た


「ごめんなさい、悪いけど 今夜は帰ってくださらないかしら?」

「真理子、さっき電話くれただろう?開けてくれよ!」

大きな声を出すその訪問者に仕方なくオートロックを解除した


「美咲のやつお前さんの素性まで知ってやがった

真理子、お前の従兄弟とアイツは同級生なんだってな?」

「そうみたいね、今日は私その従兄弟達と一緒だったのよ」


うん、それも聞いた

あいつ・・・そのコンペに自分の知ってる探偵を潜り込ませたようで

“なにもかも知ってるんだ”なんて言いだして

“金持ちが相手だってわかっているから”って・・・・


きっとアイツ・・・金が目当てなんだよ

今まで不自由はさせたつもりなかったのに

“もうあなたとは無理だから、その女のところへ行けばいい”なんて言いだす始末だよ


開き直っているやつにはかなわない 何をいっても無駄って感じで・・・


それで出てきたって言うの?

私は、そんなお下がりみたいな男と一緒になるつもりはないわ

悪いけど、やっぱり今夜は帰ってくださらないかしら

もしこの先美咲さんが何か言ってきたとして、

“はいそうですか”って、私がお金を出すとでも思う?


美咲さん自信も同じようなことをしていて

それを私が知っていることも彼女はわかっているのよ

あなたが情けない態度でいるから、そんな風に言われたんでしょう?

彼女きっと内心ではお金が捕れるなんて本気で思ってないはず

あなたとの関係を解消しようと思っているかは、定かではないけれど

とにかく帰って頂戴、もうあなたと会うこともないわ


私の気持ちは一気に冷めていた、ざわついていた気持ちも落ち着いていた









「ったく、いい加減にしろよな」

そういい残してアイツは出ていった

これでいい・・・これでやっと終わりに出来る

「さよなら・・・」 閉まったドアに向かって静かにつぶやいた












星屑の涙・・・24

2014-01-23 10:01:56 | 星屑の涙

“どういうこと?”

その言葉ばかりが脳裏に浮かぶ

美咲は達也と私のことを どこまで掴んでいるのだろう?

この二ヶ月ほどは全く連絡を取っていなかったのだが

何か話が出たのだろうか?

何れにしても私から動くことは出来ない

いろんなことが頭のなかでぐるぐると廻る

なにも知らない三人は、まだ美咲や三宅さんの話で盛り上がっている


「そう言えばさ、小西が旦那のことを口にすること自体珍しいよな

アイツら完全に仮面夫婦ってやつだろ?」

「アイツ今だに稲垣とよろしくやってんだろうから

旦那が気づいて逆上したとか?」

「いや、もしかしたら旦那の方も腹いせに浮気やっちゃったりしてな」

「まぁな、何れにしても俺らには関係のない話だ なぁ?真理子ちゃん」


突然佐藤さんにそう言われて誰もがわかるほど私は驚いてしまった


「おい?どうした?今日の真理子は、らしくないね? 大丈夫かい?」

イチロ兄が心配そうにこちらを見つめている

「午後から急に調子を崩したんだろう? お昼に何か嫌なことでもあったのかい?」

鋭い指摘に益々私はびくついて、ついにはその場に座っていられなくなり

「いいえ、特になにもなかったけれど 久しぶりのラウンドにとにかく疲れただけだと思うの

少し外の風にあたってくるわ、調子に乗って飲みすぎたのかもしれない」

そうごまかしながら、席をたった



庭先においてあったチェアに座り空を見上げる

「亮介、助けて・・・ダメねこんな私、

あなたは空の上からきっとこんな私を見て呆れているでしょうね

もう達也とは本当に終わりにしなくちゃいけないわよね」


誰もいない空に向かってひとり呟いた


いつの間にか可愛らしい女の子がそばまで来ていた

不思議そうに私の顔を覗き混んだかと思うと、泣き真似をしたのだった

“え?・・・”と驚いたが、どうやら私は涙をこぼしていたらしく

その子の仕草で自分の涙に気がついたのだった

歩き始めたばかりであろう・・・歩くのがとにかく楽しそうな小さな少女

この子はイチロ兄の三番目の子で

上の子達とは少し年が離れて出来た女の子

総太郎おにいちゃまのところに三人目が出来たといっていた頃

同じように志穂さんのお腹にも新しい命が芽生えていた

それにしてもどうしてこんな時間にこの子が?と思っていたところへ

“しおり~”といいながら志穂さんがやって来た

「まぁ、真理子さんがいたのね?この子ったらお客様の気配に眠ってくれなくてね

気を紛らわそうと外へ出てみたのよ、なぜかこちらを気にするので来てみたら・・・」

「あら・・・煩くて眠れなかったのね?ごめんなさいね パパ達盛り上がっちゃってるからね」

いいえ、いいんですよ我が家へ集まるのは久しぶりなんだから

それはそうと・・・真理子さん飲み過ぎ?少し顔色が悪いようね」

栞ちゃんとやって来たのをきっかけに、私は少しの間 志穂さんと話をした。

ご苦労されているだろうと、気遣ってみたが志穂さんは笑って

「それがね、最初は大変だったんですけど

この子が生まれたくらいから急にお義母さまの態度が変わったのよ

上の二人が男の子でそれはそれは喜んでくださったのだけど

その分あれこれと注文が多くて大変だったわ

でも女の子ができたとたん人が変わったようになってね

自分が生むことができなかった女の子を生んでくれたと

この子の誕生にとても喜んでくださって

煩いことはまったく言わなくなったのよ、不思議でしょう?」


普通は、男の子を生むと誉められるって言うけれど

むしろ逆だったわ


そう言えば・・・

あの飲み会の時は、まだ志穂さんのお腹のなかにいることさえ分からなかった

時のたつのは早いもので、達也と出会ってずい分経ったのだ



やはりそろそろ潮時なのだと、この時改めて思いなおし

今夜は思いきって達也に連絡しようと心に決めた

星屑の涙・・・23

2014-01-22 10:03:53 | 星屑の涙

「真理子お疲れさま」

イチロ兄に声をかけられて思わず涙が出そうになった

「おいおい、どうした?今日は調子が悪かったようだけど

そんなに落ち込まなくてもいいじゃないか」

あまりにも調子が悪かった私を励まそうとして

おどけた顔で私をのぞきこんできた

何も知らないおにいちゃまは、「このあと家で飲まないか?」

と誘ってきた

家に行くのは久しぶりだったので少し戸惑ったが

総太郎おにいちゃまも、佐藤さんも一緒だと聞いて

楽しそうだと心が動いた

「お兄ちゃまありがとう、私そんなにひどい顔をしていたかしら?」

と、気を使わせまいと笑顔を作り少し無理に笑った

「ひどく疲れた様子だったからね、無理につき会わせちゃったのかなとちょっと思っただけさ」

「ごめんなさい、自分が情けなくてちょっと落ち込んでただけ

もう大丈夫よ、久しぶりにお邪魔させていただくわ」

とうなずいた




イチロ兄の奥さま“志穂さん”は、突然の訪問にも嫌な顔せず

とても美味しいお酒のあてを出してくれた

見習いたいお料理の数々に感心していた

私は、じっとしていることができずキッチンへと入った

「まぁまぁ、真理子さん!いいのよ、座ってらして

私こういうもの作るのが好きなのよ

どうぞ気になさらないで、ゆっくりなさってね」と美しい顔で微笑んだ

小柄でかわいらしいという印象、

それでいてその身体からは想像できない程の根性の持ち主だ

総一郎、総太郎兄弟の母・・・叔母である八重さんに長男の嫁として

しっかりと仕えているのだから、あの気の強い叔母に・・・

想像しただけで恐ろしい・・・親戚の中で一番苦手な人だった


そう言われてしまっては、うろつくのも逆に失礼だと思い

「ではお言葉に甘えて・・・ごめんなさい、何かあれば声をかけてくださいね」

と、言って席に着いた


イチロ兄には聞きたいことがあったのだが、どう切り出そうか思案していた

ひと回りほど違う男性とは縁があるのかもしれない

達也もこの三人の人たちと同世代

バブルの頃の武勇伝を語るときの目はいつになく輝いていた

バブル・・・勿論私も知っているがまだ学生だった

周りの男の子達は、高収入のバイトに明け暮れ

普通なら、到底手のでないようなアクセサリーをプレゼントしてくれたものだった

当然私は亮介からもらったものしか身に付けなかったが

そのバブルと言う華やかな時代

私は何より大切だった人を失った悲しみで

周りの事などどうでもよかった



そんな時、ふと佐藤さんが興味深い話をしだしたのだった

「なぁ、そう言えば どうして今日は小西来なかったんだ?

もとはといえばこのコンペって アイツが言いだしっぺだろ?

アイツ・・・今日みたいな場は、自分の独壇場になるからって

嬉しそうに、毎年かかさず来てただろう」

「ああ、何でも旦那がどうのこうのと言って先週断りの電話をしてきたんだよ

で、ゴルフのできる子ってことで真理子に声をかけたんだが・・・」


私は“ふぅぅぅんなるほどそういうことか・・・”と思って少し気分を損ねたが

そんなことは顔には出さず慎重に話を聞いていた。


「でもさ、僕は真理子との方が絶対楽しくて良かったよ あの人ちょっと苦手なんだよな」

と、同組だった総太郎おにいちゃまがそう言ったとき

佐藤さんも横で大きくうなずいて、「アイツとじゃ楽しめないよな、人のボールは探さないし

人をキャディ扱いしやがる

自分のことだけはちゃんと見てて欲しいってタイプで・・・」

と、ため息をついたのだった



“それはまぁいいじゃないか、それよりも・・・”と言いながらイチロ兄が口を開いた



そういや、小西のやつ“自分の代わりの子は見つかったのか?”って

聞いてきたんで、“真理子を誘った”って言ったら なぜか機嫌が悪くなってさ

きっと可愛い真理子に嫉妬したんだろうな

それともう一つ・・・

その次の日だったか・・・欠席だって言ってたはずの三宅が来るって言い出して

ビックリしたよ

「三宅って方はどの方?」私の問いには、総太郎おにいちゃまが答えてくれた

「三宅は僕たちの後ろの組にいて、真理子覚えてないかな?

ちょっと目付きの鋭い奴だよ、体格は大柄じゃないけどカチッとした感じで・・・」

私は首をかしげて思い出すふりをしていたけれど

それが、あの時ぶつかった男性だと言うことにすぐ気がついた

「そういや、アイツ今何やってんだ?」

佐藤さんの問に総太郎おにいちゃまは続けた

「あぁ今は、探偵みたいなことやってるらしいよ

浮気調査とか、人探しとか・・・ちょっとヤバイことにも手出してるみたいで心配だな

以前のアイツとはちょっと違うって言うのか

顔つきも、変わった感じだよな」


私はその話を聞いて怖くなってきた、寒くないはずなのに寒気がしていた


“探偵?なにそれ、なんでそんな人がお兄ちゃま達と知り合いなんだろう?”

疑問が多すぎて頭がパニック寸前だった


「おい?真理子?大丈夫か?酔うほど飲んだっけかな?」

私の顔色が変わっていたのかもしれない心配そうなイチロ兄の言葉に

私は、なんとか「ううん大丈夫、探偵なんて・・・そんなのテレビの中だけかと思っていたのに

少し怖いなって思っただけ」と答えた


大丈夫だよ、元々は僕の同僚なんだよ、組織に支配されるのは嫌だとかなんとかいって

二年ほど前退職したんだ、ヤバいといってもちゃんと心得ているはずだし

怖がらなくてもいいよ

もとはとっても気の優しい良いやつなんだから

そんなことで、私は自分から聞かずともあの男性の素性を知ることとなったのだった




星屑の涙・・・22

2014-01-18 19:08:31 | 星屑の涙

お昼の休憩時間に若い女の子が私の席に挨拶に来た

二人は、イチロ兄の会社の子たちで会議の時に何度か会ったことがある

一人はこの日コースデビューだったそうで、浮かない顔をして

「私にはまだ早かった、同組の方に迷惑ばかりかけている」と肩を落としていた

もう一人は小さいころからゴルフに携わっていたらしく堂々としている

それでいてその腕前を決してひけらかすこともなくニコニコと楽しそうだった

「真理子さん今度は女子だけで来ましょうね!!」と次の誘いを受けていた時だった



まただ・・・誰かにじっと見られているような気配・・・



その日私は幾度となく同じような感覚に襲われた

なんとなく誰かに見られているような、そんな気配を何度か感じていた

周りを見渡したがこれと言って不審な人はいない

今日のコンペのメンバーは、この二人の女の子と同組の方以外はほとんど初対面の方ばかり

朝バタバタとイチロ兄から紹介を受けたがはっきり言ってほとんど覚えていなかった

改めてメンバーを見渡す、やはり見たことのない人ばかりだ


はっ!とした


初対面の人ばかりだと思っていたが、ひとりだけどこかで会ったことのある

そんな気がする人がいた

イチロ兄の同級生?・・・いや、違う

でも確かにどこかで会ったような・・・?

後でイチロ兄に聞いてみようと思い化粧直しに洗面所へと席を立った

私は本当に人の顔が覚えられない

“ここに千秋でもいればな・・・”

彼女は一度会ったら忘れないと自慢するほど人の顔や乗っている車など特徴を覚えるのが得意だった

そんなことを考えていた時思い出したのだった

“そうだ、あの時の男性(ひと)だ・・・”

以前千秋と一緒にカフェに行った時千秋がこちらをじっと見ている人がいると言ったあの人だ

“どういうこと・・・??”

今日のコンペに来ているということは、イチロ兄と何らかの接点のある人ということになる

朝の紹介の時の様子を思いだそうとするが、やはり全く分からない

“誰だっけ・・・??”

ぼんやり考えながら化粧室を出たところで誰かとぶつかった

「キャッ!」 「おっと・・失礼!」 同時に声をあげ相手を見て驚いた

そう・・・その誰だかわからない、その男性(ひと)だったのだ

私はあまりの驚きに呆然としていたのだがその相手はすぐさま

「君は・・・真理子さんだね、今日の調子はどうですか?」

と、当たり障りのないことを聞いて来た

私はとっさに上手く答えられず 「あ、久しぶりなのでいまひとつです・・」と

なんとも間抜けな答えをしたのだった

その男性は 「そうですか、どうぞ楽しんでくださいね」と笑顔で言いながら去って行った



その時はっきりと感じた

そう・・・その人に一瞬じっと見られた時に感じた気配は、

その日朝から何度か感じていた気配そのものだったのだ


後続組なんだから見られていても仕方ないかとも思ったが、

得体のしれないその男性の事が気になって

午後のスコアは散々なものだった