心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

想いは伝わる・・・16

2024-02-09 10:02:00 | 想いは伝わる


ちょうどデザートを
運んできてくれた男性の手が
一瞬固まった
きっと最後の言葉だけ
聞こえたのだろう

黙って聞いていた岡崎が口を開く

そうか千秋
よくそんな言いにくい話を
してくれたね
ありがとう
オレはおまえが
アイツと付き合っている時から
2人のことを見ていた
そしてアイツが
今度こそは本気かと
思うような付き合い方を
していたことも知っている
オレもその間
それなりにつきあった
女性もいたしな
何年か前
アイツから
千秋と別れたことを聞かされて
その後何年かして
同じ部署に配属されてきた
おまえに会って
最初のころは
よく知っているかわいい後輩
として見ていたが
最近は気がつくと
部屋の中でおまえを
探している自分に気がついた
気の強いおまえが
時々ふとさみしそうな顔を
しているのが妙に気になっていた

もしかしたらオレは
“千秋のことが好きなのかもしれない”
と思ったのは
最近のことだ
でも昨日 

明日は誕生日なのに一人でさみしい
けれど話せる人も
祝ってくれる人もいない
というようなことを言ってただろう?

それを聞いてオレは
自分の気持ちに
正直になろうと思ったんだ
未だにアイツを
忘れられずにいるのかもしれない
と思ったが
それでも
そんなことはどうでもよかった
本当に
過去のことなどどうでもいい 
これからのことを
考えればいいって思ったんだよ

だから今日
こうして心からお祝いが言いたい
と思ったんだ
なぁ千秋 
こんなオレとこの先

待ってください
私...本当は
気が弱くて泣き虫で 
おまけに
ここぞという時に限って
身体が動かなくて 
昔の自分を振り払いたくて
必死で強がってはいましたが
どうしようもない女なんですよ
そんな私に
そんなこと言わないでください
ダメです
それ以上言わないで

支離滅裂!

自分で何が言いたいのかわからない
嬉しいと思いながらも
今の私にこんなこと
言ってもらえる資格なんてない
と思う気持ちが大きくて
思わず声を出してしまった

すまない
オレ少し慌てすぎたかな
おまえの気持ちも考えずに
岡崎はそう言って
自分の頬を小さく叩きながら笑った

私は何度も頭を振り
いえそんなこと
わたしの方こそ途中で
大きな声ですみません
と頭を下げた

とにかく
ここは出よう

外は昨日までのクリスマスの気配が
一気に新しい年を迎える準備へと
変わっていた

もう少し飲もうか?

岡崎さん先ほどは ごめんなさい 
私本当は
とても嬉しかったんです
でも突然の話の展開に
ついて行けなくて 
というのか
心の準備が出来なくて
私も今は
あなたのことが好きです
素直にそう思ったんです

本当か?本当なのか?!

岡崎は私の肩を
ギュッと引き寄せながら
マスターに向かって

マスター今日はオレの
彼女連れてきました
今日は誕生日なんですよ
何か美味しいカクテル
作ってやってください!

弾んだ声でそう言っている


彼女って
ちょっ、ちょっと大きな声
そうだ忘れてた
あの話もしなくっちゃ

店主は
やわらかい笑顔を浮かべている

岡崎さん!
あの、あのですね
実は会社でイブの日のことを
見ていた人がいたようで
勘違い?というのか
もう噂になっているらしい

噂?  
いいじゃないか別に
だったらなおさら話が早い

岡崎さん
もう酔ってる?

いやいや あのですね
あなたはとても
モテていらっしゃるのですよ?
こんなこと本当に知れ渡たったら
私は会社にいられなく
なっちゃいます

他の女子の視線に耐えられません

何を柄にもないことを 
おまえそんなちっせぇやつじゃ
ないだろう
言いたいヤツには
言わせておけばいいんだよ

はぁダメだ
完全に酔ってるよ

岡崎はニコニコと笑いながら
何度も私の肩を引き寄せて
嬉しそうに飲んでいた