高校生の頃、私に勝手に好きになられて勝手にののしられていた男の子が5人はいた。
あまりにも不漁が続き、私は下手な鉄砲も数打ちゃ当たるだろうと、
好きな男の子を30人くらい作った。
このうちの1人が私を好きになってくれれば、すぐ両想いになるという作戦を練り、
網に魚がひっかかるのを待っていたのだが、そう簡単に魚は引っ掛かってくれなかった。
私としては相当にレベルを落としたつもりだったのであるが、
男の子が選ぶ女の子のレベルが、はるかに私を上回っていたらしい。
そしてその30人からもれた、基準以下の男の子でさえ、私に言い寄ってこなかった。
正直に言えば全くいなかったわけではないが、
私は自分の嫌いな男の子に好かれても、ちっとも嬉しくなかったので、これは好かれた数には入れてないのだ。
私はその男の子が嫌いだった。
友達も彼を嫌い、そのうえ私の母親はPTAの副会長である彼の母親を嫌っていた。
父母会で彼の母親と喧嘩をしたことがあり「あんなにわけのわからないことを言う人は初めてだ」と呆れかえっていた。
ただでさえ嫌なのに、その上、友達からも嫌われているとあっては私としては、話すらしたくなかった。
しかし、そういうのに限って、もの凄くしつこい。
とにかく嫌われていても何でも、押しまくっていれば何とかなるだろうと考えているらしかった。
高校生だというのに、すでにオヤジのような雰囲気を漂わせていて、
やたら自慢ばかりする彼は「ねぇ、ねぇ」と言いながら、暇さえあれば、すり寄ってきた。
そのたびに私は彼がにじり寄ってきた距離の2倍、離れていたのだが、
そんな事をしても屁とも思わず、「ねぇ、ねぇ」とにたにた笑いながら顔を近づけてきた。
ある時など地理の授業中に隣にやってきて、突然、手を握られた。
にんまりしている彼の手の中にある自分の手を引き抜き、
にらみつけてやっても「へへへ」と笑っている。
登校時は駅の改札口で待っているし、下校の時には校門の前で待っている。
「ちょっと・・・またいるわよ」
友達から情報を得ると、私は校舎の裏のフェンスをよじ登って、
校門を通らないですむように遠回りをして帰ったこともある。
早く諦めてくれないかと思っていたら学年末のクラス替えがあり、彼と別々のクラスになった時は心底ほっとしたものだった。
つづく
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