中学生の時はグループサウンズの追っかけだったので、同年輩の男の子に目を向ける余裕もなく、高校生の時は習い事の帰り道、阪急河原町駅構内の切符売り場を目指して歩いていたら「あの~ちょっと」と背後から声をかけられた。
とうとう私もナンパされたかと振り返ると、ぜーんぜん好みではない大学生の男性が立っていた。
それでも何と言われるのかと待っていた。
「お金ちょうだい。50円」
「はっ?」
思わず聞き返すと、もう一度彼は、
「お金ちょうだい。電車に乗るのにお金がないから」と堂々とした口調で言った。
私はむっとしたものの、財布の中から50円玉を出して彼に渡した。
「どうも」
彼はそれで切符を買い、改札口に消えて行った。
私は呆然としていた。「いったい、何だったんだ・・・」
彼とは、お互いに初対面である。
その初対面の相手に「金をくれ」とどういうことか?
又、それに対して「いやです」と拒絶もせずに、反射的に、つい小銭を渡してしまった私。
小学生の時は「鼻たれ」、高校生の時は「金をくれ」
私って何???
頭を抱えてしまった。
私は頭のてっぺんから声を出して男性に甘えたり、科を作ってぐにゃぐにゃしている女を見ると「なんだ、あいつ」と軽蔑してしまう。
同性と異性の前で態度がころっと変わる女は、なおさらだ。
「あれが隙というのなら、一生,隙なんていらん」とも思っていた。
でも、よく考えると隙とは、そういうものではないらしかった。
つづく
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