よりみち散歩。

日々の暮らしのなかで心に浮かぶよしなしごとを、こじんまりとつぶやいています。お役立ち情報はありません。

ヤクザとサラリーマンの会話

2017年01月19日 | 日記
陽だまりのモノレールの中は、穏やかな空気が揺蕩っていた。

突如、刺々しい声音に、静寂は破られた。


「だから、俺がこれから行くって言うんだよ!」

50代くらいのヤクザ風男性。片手に缶ビールを握っている。

「申し訳ありません、こちらの説明不足で…」

消え入るように謝罪しているのは、30代くらいの気弱そうなスーツ男性。


「そんなこと聞いてねえ!今もウチの若けえモンを数人、絞めてきたとこだ」

「そういわれましても、はい…」

「だから、そんな説明じゃあ、わかんねえよ!どこなんだよ?」

「今ですか…?A川駅です」

「俺が行くのはC警察だろ?ちゃんと説明しろよ!」



妙に会話が噛みあっているのだが、ヤクザは扉付近に立ち、サラリーマンはそこから4mほど離れた座席に腰を下ろしている。

二人の耳には、それぞれスマホが押し当てられている。

まるで互いと会話しているようだが、どうやらヤクザはC警察と、サラリーマンは取引先とやりとりしているようだ。

何かのドッキリかと隠しカメラを探したが、会話のマッチは、偶然の一致らしい。


「では、今は車内ですので、後ほどまた連絡します」通話を終えるサラリーマン。

「…おい?もしもし?」

なぜ、ここまで息がぴったりなのだろう。

二人同時に話すことも、一切なかった。



下車後に、同行の友人に感想を聞いたら、私と同じことを思っていたらしい。

おそらくあの車両のお客さんたちは、全員同じ感覚を共有したことだろう。

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