Pax(パクス)」――。古代ローマの人々は平和と秩序の女神をこう呼びました。20世紀は「パクス・アメリカーナ(米国による平和)」の時代だったといえます。米国が旧ソ連との冷戦に勝利し、民主主義と自由主義経済による繁栄が続くとの見方が世界に広がりました。
それから30年余り。大衆迎合主義(ポピュリズム)や強権主義が世界で勢いづき、民主主義の後退を指摘する声は珍しくなくなりました。冷戦下に自由を希求した国々が強権体制に傾くパラドックス(逆説)が広がり、新型コロナウイルスの世界的流行が格差や対立、不信や矛盾をあぶり出しています。
連載「パクスなき世界」の第2部では、自由と民主主義の未来をみなさんとともに考える機会にしたいと思います。(日経 電子版 特集記事) . . . 本文を読む
米大統領選をめぐって米主要メディアは7日、民主党のバイデン前副大統領の当選が確実になったと一斉に報じた。激戦州では共和党のトランプ大統領との大接戦が続くなかで開票作業が進んでいたが、米メディアはどういう経緯で当確を出したのか。米東部時間7日午前11時24分(日本時間8日午前1時24分)、CNNテレビが最初にバイデン氏の当確を報じた。それから数分以内にNBCテレビやCBSテレビ、ABCテレビが追随。やや遅れてAP通信も続き、FOXニュースがバイデン氏の当確を報じたのが同11時40分ごろだった。
当確の根拠となったのは東部ペンシルベニア州でバイデン氏の勝利が確実になり、選挙人の獲得数が過半を超える見通しになったことだ。ペンシルベニア州では州法に基づき、両候補の得票率差が0.5ポイント以下の場合に全ての票を自動的に再集計する。AP通信はバイデン氏のリードが0.51ポイントに達し、再集計が必要となる0.5ポイント以下に戻ることはないと判断して、当確を出したという。バイデン氏のリードが0.5ポイント以下であれば再集計で結果が変わるリスクがあるため、米メディアは当確の判断を控えていたとみられる。
米メディアが当確を出したころにペンシルベニア州ではまだ約6万票の集計が残っていた。その多くは民主党支持者が圧倒的に多いフィラデルフィア郡と、ピッツバーグが位置するアレゲニー郡の票だった。開票作業が進むにつれてバイデン氏のリードが広がる公算が大きく、トランプ氏が巻き返すのは困難との見方が多かった。トランプ陣営が州法に基づき支持者を通じて再集計を求める可能性は残る。ただ数ポイントの得票率差があればバイデン氏の勝利が覆ることは考えにくいとみられる。
FOXニュースの当確判断が遅れたのは、西部アリゾナ州をめぐる判断が物議を醸したことが影響した可能性がある。FOXニュースは3日に同州でバイデン氏が勝利する見通しになったと報じたが、AP通信を除く他の主要メディアは7日夜時点でも当確を出していない。トランプ陣営や選挙アナリストからはアリゾナ州での当確判断が早すぎたとの批判が相次いだ。CNNによると、アリゾナ州ではバイデン氏のリードが0.6ポイント(開票率97%)に縮まっている。(*日経 記事より)写真:米民主党のバイデン前副大統領は東部ペンシルベニア州でリードを拡大していた=ロイター . . . 本文を読む