新しく鉄砲がつくられ、新しく軍艦が進水し、新しくロケットが発射されること、これは食べるものがなくて飢えているのに、着るものがなくて寒いのに、人々からさらに何かを奪い去ろうということに他ならない。
武装された世界が費消しているのは金銭だけではない。全世界の働く人々の汗を、科学者たちの才能を、子どもたちの希望を使いつぶしているのである。これは真の意味における生き方などと呼べるしろものではない。戦雲のもとにおいては、これは人類が鉄製の十字架にかけられているに均しい。
ドワイト・D・アイゼンハワー大統領による
1953年のアメリカ新聞編集者協会での講演
(訳・國弘正雄)
アイゼンハワーは優雅な物腰と強力なリーダーシップの持ち主であり、軍人であったが、戦争の悲惨を知り、戦争を憎んでいた。そして自国の軍産複合化に懸念を表明し、これを批判した。
ショー的な熱を帯びるアメリカの大統領選挙。予備選で共和党の圧倒的な有力候補となった不動産王のトランプ。彼の品のない煽動的な暴言の数々を聞いていると、アメリカも政治と政治家の劣化が著しい。アイゼンハワーとの差は歴然である。
日本においては、戦前の政治家や官僚には大きな戦争責任がある。辻政信のようなエキセントリックな軍人も政治家になった。また多くの旧内務省官僚(特高警察官僚など)が自民党の議員になり、再び日本の政治は右旋回した。彼らはたちまち金まみれ政治を展開した。戦後の政治家では戦前の戦争に全く責任がなかった石橋湛山以外は、戦争責任を含めほとんど汚れていたが、それでも今の政治家よりはましだったのではないか。
安倍晋三は憲法改正は自民党の結党以来の党是と言ったが、吉田茂は憲法改正は考えていないと言明している。
それにしても、日本の政治と政治家の劣化は著しい。
安倍首相は経団連の強い要請を受けて、武器輸出を成長戦略に位置付けた。また原発輸出も成長戦略の一つとした。自国の原発事故の収束もままならぬ技術レベルで。
※
このアイゼンハワーの言葉と、昨今のトランプの数々の言葉を比較するまでもないが、トラン
プはおそらくアメリカ政治史上最悪最低な大統領であろう。
トランプはアメリカを愛しているとは思えない、彼が愛しているのは精神異常とも思える自己
中心主義の自己愛だろう。
それにしても、アメリカの政治と政治家の劣化も凄まじい。もちろんプーチンを筆頭に世界
の政治家の劣化も凄まじい。
※
トランプは「反知性」の象徴的政治屋だろう。現在の共和党とその支持者たちには知性も理
性も無いのか。現代アメリカ国民の凄まじいばかりの劣化か。知性も理性も全く影を潜めて
しまったのか。
アメリカ政治史の中に、かつてジョセフ・マッカーシーのマッカーシー旋風という反知性の
狂風が吹き荒れた時代があった。あれも右派共和党の嵐であった。