スケッチブック

しずかに、のんびり、ゆるやかに

夜風

2013-06-24 23:42:25 | small talk
高校1年の、夏休み前のこと

中学の同級生が
予告どおり
夕ごはんの終わり頃
ピンポーンと、来訪

「サクサクくんよ」
母は、ろこつにいやな顔

わたしは家で
友だちの話をよくしていたし
男女とも
遊びに来てくれてたし

サクサクを見て
母がそんな顔するはずないのに
なんだろ?

30分くらいで戻るね
「なるべく早く帰りなさいよ」

外に出ると
サクサクの顔が
おそろしく、にこにこだった

どしたの?
「ちょっと見て」

暗闇にバイク
50ccの
たしかアールゼットと言ってた

おーすっげえじゃんっ
買ったの?
のせてのせてっ
・・・なんて男子ではないので
言うわけありません

なのにサクサクは
「乗ってみる?」
いいの?
自転車とおなじ?
またごうとするわたしを制し
「ち、ちがうよ、うしろに」

えー
だってこれ、せまいよ
音、小さくしてね
遠くまで行かないで
どこにつかまったらいいの?
「はらに」
え、やだよ
「たのむよー落ちるから」

いちいちうるさいわたしでしたが

サクサクの目は
キラキラのキラキラ

うちの近くのネギ畑
ゆるやかな坂を
ミーン、と走りました

こわい
でも高揚

夜風がすずしくて
ふしぎな乗り物
プチ・ジェットコースター


素朴ながら
中学生活は、たのしかった
ちょっとした進学校である高校には
まだ慣れず
ぼーんやりしていた頃なので

「オートバイはだめよ
お父さんの甥っ子が・・」
母からクギをさされたものの

はじめてのバイク体験
シゲキ的だった
サクサク、ありがと

こんな梅雨の夜

ふっと
おもいだして
ふっと
笑ってしまうのでした