【クレスコグランド】
前走の大阪ハンブルグC3着は、ダービー以来の実践。道中は縦長の締まった流れを無理することなく後方から折り合いに専念する。元々が折り合いに不安のタイプで、道中は至極順調に運ぶ。3角から外めを通って進出を開始させ、一気に中団までポディションを押し上げる。直線を向く、一完歩ごとに力強い伸び脚を見せるが、坂上で苦しくなり手前を替えてモタれてしまった。久々で仕上り途上のうえ力の要る阪神の馬場で底力勝負の流れ。それでも見せ場を作ったのは高く評価できる。6番枠から手綱をしごいて行くも、ハミを取らずに後方からの競馬になってしまう。前々走で道悪の2400㍍を勝っているが、この時も道中で全くハミを取っていない。実は道悪は下手なのである。向こう正面でも手綱は動き通し。鞍上はずっとハミを取らせようと手綱をシェイクさせるが、なかなか反応がない。ズブさを見せまくっていたが、最後まで粘り強く差してきた。良馬場なら勝負どころでハミを取れるし、グンと重心を沈めたフットワークから長くいい脚を使うことができる。勝負どころの下り坂を利してロングスパートできる淀の外回りは歓迎。スタミナは満点。ブックのフォトパドックを見ると、昨春とは見違えるほどトモの肉付きが良くなっている。もの凄いトモが発達している。
【オルフェーヴル】
怪物が淀の2度の坂越えでどんな競馬を見せてくれるのか。前走の阪神大賞典2着は、前哨戦とあって万全の仕上げではなかったが、それでも直前の坂路では絶好の動きを見せた。間隔が開いたこともあってか下見どころからテンションは高かった。大外12番枠発走から好発を決めると、前に壁を作ることができずに3番手へ。本来なら最初の4角で内側に切れ込んで前に壁を作りたかったが、少頭数で行くタイプ不在だったため内に潜り込めない。池添は必死に手綱を引っ張っていたが、ナムラクレセントが外から被せてきた時にガツンとハミを取ってしまう。正面スタンド前では抑え切れずに前へ行ってしまう。1角ではコーナーワークにぎこちなさを見せて外へ膨れてしまう。2角からはナムラクレセントに馬体を併せに行く。向こう正面中盤からは大きく外へ膨れ、左手前のまま3角を迎えたために上手くコーナーを回れずに外へ大きく逸走してしまう。それは故障したかと思うほど。右手前に替えてからはスッと馬群に取り付こうとする。3,4角はいつものオルフェーヴルの脚でグーンと一気に捲る。直線を向き、一旦は単独先頭に躍り出ようとするも、内へ切れ込んで最後は脚が上ってしまった。本来なら競走中止でもおかしくないケース。それを盛り返して勝ち負けまで持ち込むのだから化け物である。凄すぎる。前々走の有馬記念2着は、鞍上の池添との「絆」でグランプリ制覇を飾った。菊花賞以来の実践となったが、この中間は3週続けて坂路でびっしりと追われ好仕上がり。馬体は4㌔減っていたが、下見どころではトモの肉付きがもの凄く、弾力性に富んでいた。一頭だけ造りが違っていた。レースでは発馬でトモに重心は掛り、行き脚はつかず後方からになる。ここで手綱をしごいてポディションを取りに行く選択肢もあったが、直後に少し出して行っただけで1周目の4角では手綱をがっちりと抑える。これはオルフェーヴルの力を信頼する池添との「絆」が成せる業だ。少し行きたがる素振りを見せたものの、正面スタンド前でインに潜り込んで前に壁を作り折り合うことに成功する。1角手前でフラつくローズキングダムと接触するも意に介さない。2角でローズの前に進路を取り、向こう正面入口でルーラーシップの前に進路を移し外めへ持ち出すことに成功する。歴史的超スローペースを考えれば、ここで外めに持ち出せたことは重要なポイントになった。3角から外めを通ってスパートを開始させる。4角では菊花賞同様に重心を沈めた推進力に富んだ走りでグーンと加速する。直線でスッと左手前に替えるとグングン加速。レースのラップが11秒4-11秒3-11秒3という中山競馬場ではあり得ない上がり勝負になったため、他馬も脚を温存して直線を迎えているため簡単にはバテない。その中でも一頭だけ違う脚色で差し切ってしまった。もの凄い瞬発力だ。ゴール前のVTRを見ると、3着のトゥザグローリーとは頭ひとつ分重心が沈んでいる。後肢の力強い蹴りと首をグッと下げた重心の低いフォーム。これがオルフェーヴルの瞬発力の源になっている。瞬発力、スタミナ、どれをとっても文句なし。凄まじい心肺機能を有する。課題はひとつ。折り合えるかどうかだけ。前走は最初の4角で前に壁を作れなかったのが大きかった。最初の4角の下り坂ですべてが決まると言っても良い。是が非でも真ん中より内が欲しいところ。2角までを乗り切れれば視界は明るい。馬込みの中で競馬ができれば3角でもしっかりと手前を替えるはずだ。
【ウインバリアシオン】
前走の日経新春杯2着は、ネコパンチが大逃げする縦長のレース展開で、2番手以下は団子状態。この流れをスッと最後方に控えて脚をタメる。ステイヤータイプの気性だけに道中の折り合いは完璧。力みのまったくない理想的な走り。向こう正面で少しポディションを上げると、3角から前のルーラーシップを目標に外めを通ってスパートを開始させる。4角でステッキが入り、反応はそれほど良くない。直線で大外へ持ち出すと、頭の高い走法ながら一完歩ごとにジリジリと差して、ルーラーシップは差し切ったが、勝ち馬には届かなかった。道悪でノメッたはいえ、勝負どころの反応はいい頃に比べれば物足りなかった。前々走の京都記念は勝負どころでトモに違和感を覚えてびっしりと追われなかった。3走前のジャパンC5着は、下見どころで例によって落ち着き十分の周回。12番枠から例によって手綱をがっちりと抑えて後方に控える。折り合いが付き、外めを通りながら脚をタメる。3角で流れは緩み、馬群がギュッと凝縮したところで外めを通って一気に捲る。残り900m付近から先頭に並びかけると、4角から11秒2-11秒0と一気にレースのピッチは上がる。坂上で逃げ馬を突き放して単独先頭に躍り出たが、最後はさすがに脚が上がってしまった。3角から一気の脚を使い、さらに4角からは11秒2-11秒0-11秒6(推定33秒8)の脚を使っている。それでいてラスト1ハロンも大きくバテずに粘ったのだから強いのひと言。長く脚を使っている。4走前の菊花賞2着は、下見どころではリラックスした姿で馬体を大きく見せ、デキの良さを窺わせた。レースではトモに力が付いたことで発馬を決めたが、無理することなくスッと控えて最後方に控える。安藤勝の腹を括った騎乗。道中の折り合いは完璧で、大きなフットワークで気持ち良さそうに追走する。3角の上り坂でレースの流れが極端に緩み一気に馬群は凝縮して自然と前とのポディションを縮める。ここでも安藤勝の手綱は持ったまま。4角で馬場の3分どころに進路を求め、初めて手綱が放たれる。直線入口でバテたベルシャザールを捌くのに少し苦労したが、そこからは一完歩毎にグイグイ伸びる。勝ち馬の派手な瞬発力には敵わなかったが、長くいい脚を使って追い込んできた。昨春は裂蹄の影響もあり、トモが緩く重心の高い走りをしていた。それがダービー時の中間からトモがパンとし、首をしなやかに使った推進力に満ち溢れたフォームに激変した。脚長でおっとりとした気性はステイヤー向きで、一瞬の脚力はオルフェーヴルに迫るものを秘める。ただ、一週前追い切りはいい頃に比べるとトモの蹴りに物足りなさを感じる。
【トーセンジョーダン】
前走の大阪杯3着は、久々の実践で実質速い時計は2本だけ。明らかな本番を見据えた仕上げだった。2番枠から手綱をしごくも、行き脚は鈍い。ようやく2ハロン目から行き脚がつくと、1角からハナを奪う。その後は13秒台の緩いラップを刻み、たっぷりと息を入れる。残り800mから一気にペースを上げると、4角ではズブさを見せて外から被される。直線入口でも反応は悪く、完全に飲み込まれそうになる。完全に負けパターンだったが、そこから鞍上のステッキに応えて一完後ごとに力強く伸びる。大きなフットワークでグイグイと盛り返してきた。持ち味の長くいい脚を見せくれたし、久々を考えれば及第点の内容だ。大トビだけに緩い馬場は避けたかった。前々走の有馬記念5着は、激戦続きのためこの中間は終い重点の攻めに終始。それでも、最終追い切りでは全身を無駄なく使った素晴らしい走りを披露し、疲れの心配は皆無だった。10番枠から好発を決めると、気合いを付けて出して行く。1周目の4角では内の出方を見ながら外めの3番手に取り付く。流れが極端に緩んだ1,2角では口を割って行きたがってしまう。前半に少し出して行った分、余計にスイッチが入ってしまった。向こう正面でブエナビスタがポディションを上げるも気にせずジッと我慢する。3角から手綱をしごいてスパートを開始させる。4角も手綱をしごいて目一杯追われるもズブさを見せる。直線を向いても反応はひと息で、ジリジリと伸びるだけ。ジャパンC,天皇賞で見せた並ばれてからの勝負根性は見られなかった。スパッとは切れないだけに究極の瞬発力勝負になったのは誤算だった。3走前のジャパンC2着は、ウィリアムズが内の出方を見ながら少し気合いを付けながらスーッと先団へ。大きなフットワークで、仕掛けたことでスイッチも入ることなく1角でスッと2番手に取り付く。緩い流れにもかかわらず2角では馬群は縦長に広がる。横一線の瞬発力勝負だけは避けたかっただけに、ウィリアムズの狙いどおり。3角で更に流れが緩んだことで馬群は凝縮しかけたが、ウインバリアシオンが一気に捲ったことでレースは一気にペースアップする。緩急ある流れに戸惑いを見せ、4角ではズブさを見せる。直線入口でも決して手応えは良くはなく、鞍上が懸命にステッキを入れて手綱を動かす。大きなフットワークで一完歩毎にジワジワと伸びる。残り300㍍から単独先頭に躍り出るも、すぐに外からブエナビスタに馬体を併せられる。切れ味では分が悪いだけに万事休したかと思われたが、馬体を併せてから抜群の勝負根性で粘りに粘る。ゴール前で僅かに屈したが、素晴らしい勝負根性だった。瞬発力勝負を避ける意味でスッと先行したウィリアムズの手綱捌きは見事だったし、ジョーダン自身も長くいい脚を使って持ち味を発揮した。3角から一気にペースアップする厳しい競馬でも最後まで粘ったように、底力に溢れた素晴らしい走りだった。4走前の天皇賞1着は、驚愕の日本レコードで初GIのタイトルを手にした。以前は坂路追い中心の攻め過程だったが、この中間は3週続けてコースで意欲的に追われ抜群の動きを披露。生涯最高のデキで大一番を迎えることができた。12番枠から発馬は決めたものの、行き脚は鈍く手綱をしごいて出して行く。1000㍍通過が56秒5の歴史的ハイペースだけに道中も少し気合いを付けながらの追走で、縦長の中団からの追走。ようやく3角から手綱のアクションに余裕が見られるも、4角で馬場の5分どころへ持ち出す。直線は大外へ。四肢を目一杯に伸ばした大きなフットワークでグングン伸びる。ラスト1ハロン過ぎで先頭に躍り出てもフワッとせずに集中して走る。ゴール前で内から2着馬の強襲に遭ったが、バテることなくラスト1ハロン推定11秒7の脚で踏ん張った。底力に優れた素晴らしい末脚だった。大トビで折り合いにまったく不安のないタイプ。むしろズブがあり、3200mは望むところか。リズム良く運び、坂下からロングスパートできれば同僚にひと泡吹かせるか。
【ローズキングダム】
前走の大阪杯4着は、リフレッシュして14㌔増。昨秋は長距離輸送が続いて一戦ごとに馬体減りしていただけに、好材料だった。レースでは8番枠から馬任せで中団からの競馬。前に壁を作ることは成功したが、行きたがる素振りを見せるのは相変わらずだ。3,4角からの勝負どころでも引っ張り切りのもの凄い手応え。4角では相変わらず内へモタれる。直線で大外へ持ち出すと、内へモタれながらも、鞍上が右ステッキで矯正しながらジリジリと伸びてきた。緩い馬場でも最後まで集中した走りを見せてくれたのは高く評価できる。前々走の有馬記念12着は、8㌔減で馬体はギリギリ。返し馬でテンションが高かったように、精神面でもギリギリだった。加えて歴史的な超スローペースの競馬となり、道中は頭を上げてモロに掛ってしまった。馬格がないタイプで精神的な脆さを抱えるタイプ。秋4戦目で限界だったか。3走のジャパンC9着は、前走で減った馬体が2㌔戻っていたし、落ち着いていた。レースでも馬任せで中団に取り付き、力むことなく道中は折り合っていた。中団馬群のなかを理想的に追走できたし、直線でブエナビスタとトゥザグローリーに寄られて一瞬怯むところはあったが、それにしても伸びなさすぎた。前々走の天皇賞10着は、長距離輸送で8㌔減。少し減り過ぎていた。2角で外からアーネストリーに入られた時に手綱を引っ張り、そこで馬にスイッチが入ってしまったし、左回りで外へモタれていた。直線も外へモタれるのを矯正しながらで伸びなかった。4走前の京都大賞典1着は、中間の攻め馬では完歩の小さい走りで決してデキは良くは見えなかった。加えて59㌔。メンバーに恵まれたとはいえ、不安要素はあった。レースでは7番枠から馬任せでポディションを取りに行く。各馬の出方を見ながら1角からスッと4番手のインに落ち着く。ペースの落ち着いた2角から少し行きたがる面と内へモタれたが、問題ない程度。向こう正面ではスムーズに折り合う。3角の上り坂に差しかかるところで内へモタれる。悪い癖を見せかけたが、鞍上がすぐに修正し4角から直線にかけてはスムーズに加速する。直線は鞍上の右ステッキと体と左手綱で真っすぐ駆け抜ける。首を水平に使い、グーンと加速する。最後は外から詰め寄られたが、着差以上に差を感じさせる切れ味で差し切った。開幕週のパンパン馬場で持ち味の切れ味を存分に発揮できたし、右回りで課題だった内へモタれる点も鞍上の渾身の騎乗でカバーできた。前走で馬体が戻ったのは好材料だし、輸送減りしやすい同馬にとって近距離輸送の京都は歓迎だ。課題は折り合いに付きる。前に壁を作ってどこまで我慢できるのか。走れる精神状態にあるだけに、一発の可能性は秘めている。右回りで内へモタれる点は後藤輝の手腕でカバーできるだろう。
【ナムラクレセント】
前走の阪神大賞典3着は、馬体を10キロ絞り、走れる態勢は整っていた。発馬では行き脚はつかなかったが、最初の4角でハナを奪う。正面スタンド前からは他馬を引き離す。誤算だったのはオルフェーヴルが掛って競りかけてきたことである。2角からびっしりと馬体を併せられ、ペースアップ。3角でオルフェーヴルが逸走してからは他馬もピッチを上げて競りかけてくる。かなり誤算の多い競馬となったが、最後まで粘りを見せてくれた。昨年のこのレースは3着。発馬で跳び上がる感じとなり、行き脚がつかず。直後に手綱をしごいてポディションを取りに行き、一周目の上り坂で中団のインまで取り付く。だが、元々が行きたがる気性であり、直後には下り坂が待っている。しかも、流れが落ち着いたことで案の定、掛ってしまう。幸い、インに潜り込んだことで前に壁ができていたのは良かった。一向にペースの上がらない流れに業を煮やした鞍上は、2角から向こう正面入口にかけて一気に仕掛けてハナ奪う積極策に打って出る。ここから一気にレースの流れが速くなる。三分三厘の下り坂を利して11秒7-11秒4とペースを上げると、4角で先行各馬が次々と脱落。直線入口では突き抜ける形となる。自身もかなり辛い流れであるのは間違いないが、鞍上の懸命のステッキに応えて粘りに粘る。さすがにラスト1ハロンは12秒8と脚が鈍って差されてしまったが、途中で動いた馬総崩れの流れで唯一、掲示板を確保したのは立派。強靭なスタミナを見せてくれた。重心の高い走りで行き脚はひと息だが、途中からでもハナに立って長く脚を使える強靭なスタミナが武器。スパッとは切れないが、自在に動けるのが持ち味。
【ヒルノダムール】
前走の阪神大賞典4着は、昨年の天皇賞同様に、ナムラクレセントが途中からハナを奪う入替りの激しい競馬。同馬は後方のインでジッと我慢し、道中は折り合いに専念する。乗り手に従順なだけにピタリと折り合う。オルフェーヴルが逸走した3角からレースの流れは一気に速くなり、同馬も外めへ持ち出してスパートを開始させる。直線を向き、力に勝るオルフェーヴルに進路をカットされて手綱を引っ張る大きなロスがあり、最後は脚が上ってしまった。まともなら3着はあっただろう。前々走の京都記念3着は、久々を叩いて16キロ馬体を戻してきた。大外枠発走から馬任せ。1角から内に潜り込むことができず、道中はずっと外めを通らされた。最後方でジッと我慢し、仕掛けたのは4角から。直線入口で一旦は2着馬に馬体を併せ、ラスト1ハロンまでは競りかける。だが、そこから苦しくなって手前を替えてしまい、頭が高くなってしまった。58キロを背負っていた分もあるだろうが、物足りない内容。3走前の有馬記念6着は、久々で乗り込みは入念だったが、馬体を戻しながらの調整で466キロ。ベストより少し細かった。下見どころでは少し気負っていた。3番枠から好発を決め道中は後方のインからの追走。歴史的な超スローペースでも道中の折り合いは完璧。前を行くブエナビスタを徹底マークする。だが、マークしていたブエナビスタが3角でまさかのズブさを見せる。ヒルノ自身もここで手綱をしごいてスパートを開始させるも、馬込みに包まれて動くに動けない。直線を向いても捌きに苦労し手綱を押しては引く形。ゴチャついたままゴール版を迎えてしまった。勿体ないレースとなった。昨春の天皇賞・春1着は、中間はレコード駆けの反動を見せることなく1週前に7ハロンから意欲的に追われ、最終追い切りは坂路で抜群の動きを見せ、デキは最高潮だった。レースでは2番枠からスーッと好発を決め、馬任せで先団へ。直後に迎えた下り坂を慎重に運ぶ。一つ目の難関をクリアすると、その後は好位のインで脚をタメる。正面スタンド前から入れ替わりの激しい流れになるも、気にせずヒルノのリズムを第一に考えて自然とポディションを下げる。ここでの判断が最後に勝利を大きく引き寄せることになった。経済コースをぴったりと立ち回り、3角手前で少し気合いを付けてポディションを上げるも、一気には行かせず再び手綱を抑える。3,4角の下り坂で仕掛けたくなるところだが、手綱はジッと持ったまま。4角で満を持してスパートすると直線は馬込みを割って抜け出す。バテた先行馬を交わしたところで2着馬に猛追されるが、そこで右手前に替えてもうひと踏ん張り。ゴール前で馬体を併せられたが、そこから粘りに粘って押し切った。凄い勝負根性だ。馬の力も素晴らしいが、鞍上のペース判断が素晴らしかった。一番の武器は折り合いに不安のない点だ。どんな入替りの激しい流れになろうと、乗り手に従順。これは長距離戦において強みになる。タメれば一瞬の脚は使える。中間はシャドーロールを着用し、集中力を増す工夫をされている。
【マイネルキッツ】
前走の日経賞9着は、道中は無理することなくスッと後方のインに控える。歴戦の古馬だけに道中はピタリと折り合う。レースの流れが一気に速くなった向こう正面終盤からズブさを見せる。反応が鈍い分、勝負どころから進路を選択する余裕はなく、馬場の荒れたインを通らされる。直線も伸びずバテずで見せ場を作れなかった。前々走のダイヤモンドS10着は、休み明けで一頓挫明け。仕上りはひと息だった。レースでは、テンは無理することなく後方から折り合いに専念する。向こう正面中盤から外めを通ってジワッと進出を開始する。4角まではいい手応えで運べたものの、直線入口での反応が鈍く馬群に沈んだ。3走前のステイヤーズS1着は、鞍上の三浦皇成がステイヤーの特性を生かすお手本のような騎乗をした。テンか後方でじっくりと構えて末脚を温存させ、勝負どころから早めに動いてロングスパートで押し切るマイネルキッツの良さをすべて出した走りだった。昨年のこのレースは残念な騎乗だったし、レースを乱してしまった。発馬でそれほど行き脚がつかず手綱をしごいて中団に取り付く。直後に迎えた下り坂で若干、気負った走り。最初の4角では前のトゥザの直後までポディションを上げる。歴史的な超スローであるため、普段は掛り癖のない同馬でも行きたがってしまう。更に前のトゥザもモロに掛ってしまったことで、2角でハナを奪う予想外の展開。これに応戦し、キッツも3番手までポディションを上げるが、かなり気負った走り。2角から向こう正面にかけて折り合いに専念したいトゥザがハナに立ったことで更にペースが落ちる。それに業を煮やしたナムラがハナを奪い、更にはローズキングダムも外から被せてくる。これに反応した松岡が手綱をしごいてポディションを上げたことで完全に馬のリズムが崩れてしまった。長距離戦でこれだけ手綱をしごいたり引っ張ったりしては力を発揮できないのは当然だ。4角で早くも手応えが怪しくなり、直線は伸び切れなかった。それでも、大きくバテずに最後まで走り切ったのは、さすがだった。叩き良化型だが、ここ2走は見せ場すら作れていない。昨冬の鼻出血の影響が少なからずあるか。距離は延びれば延びるほどいいタイプ。テンにじっくりと構えて3角からロングスパートができれば勝機はある。あとは、どこまでデキが戻っているか。
【ケイアイドウソジン】
前走の日経賞7着は、手綱をしごいてハナを取りに行くも、前走で3400mを使っていることもあって2番手が精一杯。道中は離れた2番手から追走する。向こう正面から手綱が動き、レースの流れが一気に速くなった3角からはスブさを見せて馬群に飲み込まれそうになるが、そこから粘り腰を見せてくれた。着順ほど負けていない。前々走のダイヤモンドS1着は、スーッと楽な手応えでハナを奪う。2番手のスマートロビンが折り合いに不安を抱えるタイプのため無理な競り合いはない。1周目の正面スタンド前までは13秒前後のラップを刻み、1角からは13秒台後半のラップを刻む。流れを緩めたにもかかわらず、2角からは後続を引き離す形に。3角までたっぷりと息を入れる。残り1000mからペースを上げると、4角手前から後続に一気に詰め寄られる。それでも、脚色に余裕があるため11秒4-11秒2-11秒5と二の脚で後続を突き放す。最後は2着馬に迫られたが、12秒5でしっかりと踏ん張り逃げ切った。折り合いに不安のないタイプで。スタミナは豊富。前走からの距離延長は歓迎だし、鞍上には追える川田。ここも同型の出方が鍵を握るが、単騎でスイスイ良ければ面白い存在に。
【ギュスターヴクライ】
前走の阪神大賞典1番枠から気合いを付けて好位を取りに行く。これは大人しい気性だからこそできるもの。急がせても掛ることなく好位のインでしっかりと折り合う。1角からは馬任せで無理をさせずにポディションを落とす。3角手前から進出を開始させるも、4角で前が壁になったために一旦我慢する。これが功を奏した。直線で追い出しを開始すると粘り強い脚で突き抜ける。一旦は怪物に並ばれたが、そこから粘り腰で振り切った。まったく折り合いに不安のないタイプで鞍上もロスなく上手く立ち回った。前々走は中1週のためテンションが高くて行きたがる素振りを見せたが、本来は折り合いに不安のないタイプで長くいい脚を使える。正直、前走はロスなく立ち回れた恩恵は大きく、一線級相手ではまだ力の差はあるか。激戦続きだが、1週前は併せ馬でグイッと先着して集中力のある走りを見せてくれた。
【ジャガーメイル】
前走の阪神大賞典5着は、珍しくテンから気合いを付けて出していく。これは有馬記念で消極的な騎乗で脚を余した反省を生かしてのもの。久々に掛るくらいの行きっぷりを見せてくれた。三分三厘で早めに先頭に並びかける正攻法の競馬。直線は馬場に脚を取られて失速してしまったが、久々を考えれば申し分ない内容だ。前走の行きっぷりなら年齢的な衰えを心配する必要はない。この中間は1週前に長めから意欲的に追われ、既に速い時計を2本消化。攻め馬を強化されている。前走の積極的な競馬が本番に必ず繋がるだろう。
前走の大阪ハンブルグC3着は、ダービー以来の実践。道中は縦長の締まった流れを無理することなく後方から折り合いに専念する。元々が折り合いに不安のタイプで、道中は至極順調に運ぶ。3角から外めを通って進出を開始させ、一気に中団までポディションを押し上げる。直線を向く、一完歩ごとに力強い伸び脚を見せるが、坂上で苦しくなり手前を替えてモタれてしまった。久々で仕上り途上のうえ力の要る阪神の馬場で底力勝負の流れ。それでも見せ場を作ったのは高く評価できる。6番枠から手綱をしごいて行くも、ハミを取らずに後方からの競馬になってしまう。前々走で道悪の2400㍍を勝っているが、この時も道中で全くハミを取っていない。実は道悪は下手なのである。向こう正面でも手綱は動き通し。鞍上はずっとハミを取らせようと手綱をシェイクさせるが、なかなか反応がない。ズブさを見せまくっていたが、最後まで粘り強く差してきた。良馬場なら勝負どころでハミを取れるし、グンと重心を沈めたフットワークから長くいい脚を使うことができる。勝負どころの下り坂を利してロングスパートできる淀の外回りは歓迎。スタミナは満点。ブックのフォトパドックを見ると、昨春とは見違えるほどトモの肉付きが良くなっている。もの凄いトモが発達している。
【オルフェーヴル】
怪物が淀の2度の坂越えでどんな競馬を見せてくれるのか。前走の阪神大賞典2着は、前哨戦とあって万全の仕上げではなかったが、それでも直前の坂路では絶好の動きを見せた。間隔が開いたこともあってか下見どころからテンションは高かった。大外12番枠発走から好発を決めると、前に壁を作ることができずに3番手へ。本来なら最初の4角で内側に切れ込んで前に壁を作りたかったが、少頭数で行くタイプ不在だったため内に潜り込めない。池添は必死に手綱を引っ張っていたが、ナムラクレセントが外から被せてきた時にガツンとハミを取ってしまう。正面スタンド前では抑え切れずに前へ行ってしまう。1角ではコーナーワークにぎこちなさを見せて外へ膨れてしまう。2角からはナムラクレセントに馬体を併せに行く。向こう正面中盤からは大きく外へ膨れ、左手前のまま3角を迎えたために上手くコーナーを回れずに外へ大きく逸走してしまう。それは故障したかと思うほど。右手前に替えてからはスッと馬群に取り付こうとする。3,4角はいつものオルフェーヴルの脚でグーンと一気に捲る。直線を向き、一旦は単独先頭に躍り出ようとするも、内へ切れ込んで最後は脚が上ってしまった。本来なら競走中止でもおかしくないケース。それを盛り返して勝ち負けまで持ち込むのだから化け物である。凄すぎる。前々走の有馬記念2着は、鞍上の池添との「絆」でグランプリ制覇を飾った。菊花賞以来の実践となったが、この中間は3週続けて坂路でびっしりと追われ好仕上がり。馬体は4㌔減っていたが、下見どころではトモの肉付きがもの凄く、弾力性に富んでいた。一頭だけ造りが違っていた。レースでは発馬でトモに重心は掛り、行き脚はつかず後方からになる。ここで手綱をしごいてポディションを取りに行く選択肢もあったが、直後に少し出して行っただけで1周目の4角では手綱をがっちりと抑える。これはオルフェーヴルの力を信頼する池添との「絆」が成せる業だ。少し行きたがる素振りを見せたものの、正面スタンド前でインに潜り込んで前に壁を作り折り合うことに成功する。1角手前でフラつくローズキングダムと接触するも意に介さない。2角でローズの前に進路を取り、向こう正面入口でルーラーシップの前に進路を移し外めへ持ち出すことに成功する。歴史的超スローペースを考えれば、ここで外めに持ち出せたことは重要なポイントになった。3角から外めを通ってスパートを開始させる。4角では菊花賞同様に重心を沈めた推進力に富んだ走りでグーンと加速する。直線でスッと左手前に替えるとグングン加速。レースのラップが11秒4-11秒3-11秒3という中山競馬場ではあり得ない上がり勝負になったため、他馬も脚を温存して直線を迎えているため簡単にはバテない。その中でも一頭だけ違う脚色で差し切ってしまった。もの凄い瞬発力だ。ゴール前のVTRを見ると、3着のトゥザグローリーとは頭ひとつ分重心が沈んでいる。後肢の力強い蹴りと首をグッと下げた重心の低いフォーム。これがオルフェーヴルの瞬発力の源になっている。瞬発力、スタミナ、どれをとっても文句なし。凄まじい心肺機能を有する。課題はひとつ。折り合えるかどうかだけ。前走は最初の4角で前に壁を作れなかったのが大きかった。最初の4角の下り坂ですべてが決まると言っても良い。是が非でも真ん中より内が欲しいところ。2角までを乗り切れれば視界は明るい。馬込みの中で競馬ができれば3角でもしっかりと手前を替えるはずだ。
【ウインバリアシオン】
前走の日経新春杯2着は、ネコパンチが大逃げする縦長のレース展開で、2番手以下は団子状態。この流れをスッと最後方に控えて脚をタメる。ステイヤータイプの気性だけに道中の折り合いは完璧。力みのまったくない理想的な走り。向こう正面で少しポディションを上げると、3角から前のルーラーシップを目標に外めを通ってスパートを開始させる。4角でステッキが入り、反応はそれほど良くない。直線で大外へ持ち出すと、頭の高い走法ながら一完歩ごとにジリジリと差して、ルーラーシップは差し切ったが、勝ち馬には届かなかった。道悪でノメッたはいえ、勝負どころの反応はいい頃に比べれば物足りなかった。前々走の京都記念は勝負どころでトモに違和感を覚えてびっしりと追われなかった。3走前のジャパンC5着は、下見どころで例によって落ち着き十分の周回。12番枠から例によって手綱をがっちりと抑えて後方に控える。折り合いが付き、外めを通りながら脚をタメる。3角で流れは緩み、馬群がギュッと凝縮したところで外めを通って一気に捲る。残り900m付近から先頭に並びかけると、4角から11秒2-11秒0と一気にレースのピッチは上がる。坂上で逃げ馬を突き放して単独先頭に躍り出たが、最後はさすがに脚が上がってしまった。3角から一気の脚を使い、さらに4角からは11秒2-11秒0-11秒6(推定33秒8)の脚を使っている。それでいてラスト1ハロンも大きくバテずに粘ったのだから強いのひと言。長く脚を使っている。4走前の菊花賞2着は、下見どころではリラックスした姿で馬体を大きく見せ、デキの良さを窺わせた。レースではトモに力が付いたことで発馬を決めたが、無理することなくスッと控えて最後方に控える。安藤勝の腹を括った騎乗。道中の折り合いは完璧で、大きなフットワークで気持ち良さそうに追走する。3角の上り坂でレースの流れが極端に緩み一気に馬群は凝縮して自然と前とのポディションを縮める。ここでも安藤勝の手綱は持ったまま。4角で馬場の3分どころに進路を求め、初めて手綱が放たれる。直線入口でバテたベルシャザールを捌くのに少し苦労したが、そこからは一完歩毎にグイグイ伸びる。勝ち馬の派手な瞬発力には敵わなかったが、長くいい脚を使って追い込んできた。昨春は裂蹄の影響もあり、トモが緩く重心の高い走りをしていた。それがダービー時の中間からトモがパンとし、首をしなやかに使った推進力に満ち溢れたフォームに激変した。脚長でおっとりとした気性はステイヤー向きで、一瞬の脚力はオルフェーヴルに迫るものを秘める。ただ、一週前追い切りはいい頃に比べるとトモの蹴りに物足りなさを感じる。
【トーセンジョーダン】
前走の大阪杯3着は、久々の実践で実質速い時計は2本だけ。明らかな本番を見据えた仕上げだった。2番枠から手綱をしごくも、行き脚は鈍い。ようやく2ハロン目から行き脚がつくと、1角からハナを奪う。その後は13秒台の緩いラップを刻み、たっぷりと息を入れる。残り800mから一気にペースを上げると、4角ではズブさを見せて外から被される。直線入口でも反応は悪く、完全に飲み込まれそうになる。完全に負けパターンだったが、そこから鞍上のステッキに応えて一完後ごとに力強く伸びる。大きなフットワークでグイグイと盛り返してきた。持ち味の長くいい脚を見せくれたし、久々を考えれば及第点の内容だ。大トビだけに緩い馬場は避けたかった。前々走の有馬記念5着は、激戦続きのためこの中間は終い重点の攻めに終始。それでも、最終追い切りでは全身を無駄なく使った素晴らしい走りを披露し、疲れの心配は皆無だった。10番枠から好発を決めると、気合いを付けて出して行く。1周目の4角では内の出方を見ながら外めの3番手に取り付く。流れが極端に緩んだ1,2角では口を割って行きたがってしまう。前半に少し出して行った分、余計にスイッチが入ってしまった。向こう正面でブエナビスタがポディションを上げるも気にせずジッと我慢する。3角から手綱をしごいてスパートを開始させる。4角も手綱をしごいて目一杯追われるもズブさを見せる。直線を向いても反応はひと息で、ジリジリと伸びるだけ。ジャパンC,天皇賞で見せた並ばれてからの勝負根性は見られなかった。スパッとは切れないだけに究極の瞬発力勝負になったのは誤算だった。3走前のジャパンC2着は、ウィリアムズが内の出方を見ながら少し気合いを付けながらスーッと先団へ。大きなフットワークで、仕掛けたことでスイッチも入ることなく1角でスッと2番手に取り付く。緩い流れにもかかわらず2角では馬群は縦長に広がる。横一線の瞬発力勝負だけは避けたかっただけに、ウィリアムズの狙いどおり。3角で更に流れが緩んだことで馬群は凝縮しかけたが、ウインバリアシオンが一気に捲ったことでレースは一気にペースアップする。緩急ある流れに戸惑いを見せ、4角ではズブさを見せる。直線入口でも決して手応えは良くはなく、鞍上が懸命にステッキを入れて手綱を動かす。大きなフットワークで一完歩毎にジワジワと伸びる。残り300㍍から単独先頭に躍り出るも、すぐに外からブエナビスタに馬体を併せられる。切れ味では分が悪いだけに万事休したかと思われたが、馬体を併せてから抜群の勝負根性で粘りに粘る。ゴール前で僅かに屈したが、素晴らしい勝負根性だった。瞬発力勝負を避ける意味でスッと先行したウィリアムズの手綱捌きは見事だったし、ジョーダン自身も長くいい脚を使って持ち味を発揮した。3角から一気にペースアップする厳しい競馬でも最後まで粘ったように、底力に溢れた素晴らしい走りだった。4走前の天皇賞1着は、驚愕の日本レコードで初GIのタイトルを手にした。以前は坂路追い中心の攻め過程だったが、この中間は3週続けてコースで意欲的に追われ抜群の動きを披露。生涯最高のデキで大一番を迎えることができた。12番枠から発馬は決めたものの、行き脚は鈍く手綱をしごいて出して行く。1000㍍通過が56秒5の歴史的ハイペースだけに道中も少し気合いを付けながらの追走で、縦長の中団からの追走。ようやく3角から手綱のアクションに余裕が見られるも、4角で馬場の5分どころへ持ち出す。直線は大外へ。四肢を目一杯に伸ばした大きなフットワークでグングン伸びる。ラスト1ハロン過ぎで先頭に躍り出てもフワッとせずに集中して走る。ゴール前で内から2着馬の強襲に遭ったが、バテることなくラスト1ハロン推定11秒7の脚で踏ん張った。底力に優れた素晴らしい末脚だった。大トビで折り合いにまったく不安のないタイプ。むしろズブがあり、3200mは望むところか。リズム良く運び、坂下からロングスパートできれば同僚にひと泡吹かせるか。
【ローズキングダム】
前走の大阪杯4着は、リフレッシュして14㌔増。昨秋は長距離輸送が続いて一戦ごとに馬体減りしていただけに、好材料だった。レースでは8番枠から馬任せで中団からの競馬。前に壁を作ることは成功したが、行きたがる素振りを見せるのは相変わらずだ。3,4角からの勝負どころでも引っ張り切りのもの凄い手応え。4角では相変わらず内へモタれる。直線で大外へ持ち出すと、内へモタれながらも、鞍上が右ステッキで矯正しながらジリジリと伸びてきた。緩い馬場でも最後まで集中した走りを見せてくれたのは高く評価できる。前々走の有馬記念12着は、8㌔減で馬体はギリギリ。返し馬でテンションが高かったように、精神面でもギリギリだった。加えて歴史的な超スローペースの競馬となり、道中は頭を上げてモロに掛ってしまった。馬格がないタイプで精神的な脆さを抱えるタイプ。秋4戦目で限界だったか。3走のジャパンC9着は、前走で減った馬体が2㌔戻っていたし、落ち着いていた。レースでも馬任せで中団に取り付き、力むことなく道中は折り合っていた。中団馬群のなかを理想的に追走できたし、直線でブエナビスタとトゥザグローリーに寄られて一瞬怯むところはあったが、それにしても伸びなさすぎた。前々走の天皇賞10着は、長距離輸送で8㌔減。少し減り過ぎていた。2角で外からアーネストリーに入られた時に手綱を引っ張り、そこで馬にスイッチが入ってしまったし、左回りで外へモタれていた。直線も外へモタれるのを矯正しながらで伸びなかった。4走前の京都大賞典1着は、中間の攻め馬では完歩の小さい走りで決してデキは良くは見えなかった。加えて59㌔。メンバーに恵まれたとはいえ、不安要素はあった。レースでは7番枠から馬任せでポディションを取りに行く。各馬の出方を見ながら1角からスッと4番手のインに落ち着く。ペースの落ち着いた2角から少し行きたがる面と内へモタれたが、問題ない程度。向こう正面ではスムーズに折り合う。3角の上り坂に差しかかるところで内へモタれる。悪い癖を見せかけたが、鞍上がすぐに修正し4角から直線にかけてはスムーズに加速する。直線は鞍上の右ステッキと体と左手綱で真っすぐ駆け抜ける。首を水平に使い、グーンと加速する。最後は外から詰め寄られたが、着差以上に差を感じさせる切れ味で差し切った。開幕週のパンパン馬場で持ち味の切れ味を存分に発揮できたし、右回りで課題だった内へモタれる点も鞍上の渾身の騎乗でカバーできた。前走で馬体が戻ったのは好材料だし、輸送減りしやすい同馬にとって近距離輸送の京都は歓迎だ。課題は折り合いに付きる。前に壁を作ってどこまで我慢できるのか。走れる精神状態にあるだけに、一発の可能性は秘めている。右回りで内へモタれる点は後藤輝の手腕でカバーできるだろう。
【ナムラクレセント】
前走の阪神大賞典3着は、馬体を10キロ絞り、走れる態勢は整っていた。発馬では行き脚はつかなかったが、最初の4角でハナを奪う。正面スタンド前からは他馬を引き離す。誤算だったのはオルフェーヴルが掛って競りかけてきたことである。2角からびっしりと馬体を併せられ、ペースアップ。3角でオルフェーヴルが逸走してからは他馬もピッチを上げて競りかけてくる。かなり誤算の多い競馬となったが、最後まで粘りを見せてくれた。昨年のこのレースは3着。発馬で跳び上がる感じとなり、行き脚がつかず。直後に手綱をしごいてポディションを取りに行き、一周目の上り坂で中団のインまで取り付く。だが、元々が行きたがる気性であり、直後には下り坂が待っている。しかも、流れが落ち着いたことで案の定、掛ってしまう。幸い、インに潜り込んだことで前に壁ができていたのは良かった。一向にペースの上がらない流れに業を煮やした鞍上は、2角から向こう正面入口にかけて一気に仕掛けてハナ奪う積極策に打って出る。ここから一気にレースの流れが速くなる。三分三厘の下り坂を利して11秒7-11秒4とペースを上げると、4角で先行各馬が次々と脱落。直線入口では突き抜ける形となる。自身もかなり辛い流れであるのは間違いないが、鞍上の懸命のステッキに応えて粘りに粘る。さすがにラスト1ハロンは12秒8と脚が鈍って差されてしまったが、途中で動いた馬総崩れの流れで唯一、掲示板を確保したのは立派。強靭なスタミナを見せてくれた。重心の高い走りで行き脚はひと息だが、途中からでもハナに立って長く脚を使える強靭なスタミナが武器。スパッとは切れないが、自在に動けるのが持ち味。
【ヒルノダムール】
前走の阪神大賞典4着は、昨年の天皇賞同様に、ナムラクレセントが途中からハナを奪う入替りの激しい競馬。同馬は後方のインでジッと我慢し、道中は折り合いに専念する。乗り手に従順なだけにピタリと折り合う。オルフェーヴルが逸走した3角からレースの流れは一気に速くなり、同馬も外めへ持ち出してスパートを開始させる。直線を向き、力に勝るオルフェーヴルに進路をカットされて手綱を引っ張る大きなロスがあり、最後は脚が上ってしまった。まともなら3着はあっただろう。前々走の京都記念3着は、久々を叩いて16キロ馬体を戻してきた。大外枠発走から馬任せ。1角から内に潜り込むことができず、道中はずっと外めを通らされた。最後方でジッと我慢し、仕掛けたのは4角から。直線入口で一旦は2着馬に馬体を併せ、ラスト1ハロンまでは競りかける。だが、そこから苦しくなって手前を替えてしまい、頭が高くなってしまった。58キロを背負っていた分もあるだろうが、物足りない内容。3走前の有馬記念6着は、久々で乗り込みは入念だったが、馬体を戻しながらの調整で466キロ。ベストより少し細かった。下見どころでは少し気負っていた。3番枠から好発を決め道中は後方のインからの追走。歴史的な超スローペースでも道中の折り合いは完璧。前を行くブエナビスタを徹底マークする。だが、マークしていたブエナビスタが3角でまさかのズブさを見せる。ヒルノ自身もここで手綱をしごいてスパートを開始させるも、馬込みに包まれて動くに動けない。直線を向いても捌きに苦労し手綱を押しては引く形。ゴチャついたままゴール版を迎えてしまった。勿体ないレースとなった。昨春の天皇賞・春1着は、中間はレコード駆けの反動を見せることなく1週前に7ハロンから意欲的に追われ、最終追い切りは坂路で抜群の動きを見せ、デキは最高潮だった。レースでは2番枠からスーッと好発を決め、馬任せで先団へ。直後に迎えた下り坂を慎重に運ぶ。一つ目の難関をクリアすると、その後は好位のインで脚をタメる。正面スタンド前から入れ替わりの激しい流れになるも、気にせずヒルノのリズムを第一に考えて自然とポディションを下げる。ここでの判断が最後に勝利を大きく引き寄せることになった。経済コースをぴったりと立ち回り、3角手前で少し気合いを付けてポディションを上げるも、一気には行かせず再び手綱を抑える。3,4角の下り坂で仕掛けたくなるところだが、手綱はジッと持ったまま。4角で満を持してスパートすると直線は馬込みを割って抜け出す。バテた先行馬を交わしたところで2着馬に猛追されるが、そこで右手前に替えてもうひと踏ん張り。ゴール前で馬体を併せられたが、そこから粘りに粘って押し切った。凄い勝負根性だ。馬の力も素晴らしいが、鞍上のペース判断が素晴らしかった。一番の武器は折り合いに不安のない点だ。どんな入替りの激しい流れになろうと、乗り手に従順。これは長距離戦において強みになる。タメれば一瞬の脚は使える。中間はシャドーロールを着用し、集中力を増す工夫をされている。
【マイネルキッツ】
前走の日経賞9着は、道中は無理することなくスッと後方のインに控える。歴戦の古馬だけに道中はピタリと折り合う。レースの流れが一気に速くなった向こう正面終盤からズブさを見せる。反応が鈍い分、勝負どころから進路を選択する余裕はなく、馬場の荒れたインを通らされる。直線も伸びずバテずで見せ場を作れなかった。前々走のダイヤモンドS10着は、休み明けで一頓挫明け。仕上りはひと息だった。レースでは、テンは無理することなく後方から折り合いに専念する。向こう正面中盤から外めを通ってジワッと進出を開始する。4角まではいい手応えで運べたものの、直線入口での反応が鈍く馬群に沈んだ。3走前のステイヤーズS1着は、鞍上の三浦皇成がステイヤーの特性を生かすお手本のような騎乗をした。テンか後方でじっくりと構えて末脚を温存させ、勝負どころから早めに動いてロングスパートで押し切るマイネルキッツの良さをすべて出した走りだった。昨年のこのレースは残念な騎乗だったし、レースを乱してしまった。発馬でそれほど行き脚がつかず手綱をしごいて中団に取り付く。直後に迎えた下り坂で若干、気負った走り。最初の4角では前のトゥザの直後までポディションを上げる。歴史的な超スローであるため、普段は掛り癖のない同馬でも行きたがってしまう。更に前のトゥザもモロに掛ってしまったことで、2角でハナを奪う予想外の展開。これに応戦し、キッツも3番手までポディションを上げるが、かなり気負った走り。2角から向こう正面にかけて折り合いに専念したいトゥザがハナに立ったことで更にペースが落ちる。それに業を煮やしたナムラがハナを奪い、更にはローズキングダムも外から被せてくる。これに反応した松岡が手綱をしごいてポディションを上げたことで完全に馬のリズムが崩れてしまった。長距離戦でこれだけ手綱をしごいたり引っ張ったりしては力を発揮できないのは当然だ。4角で早くも手応えが怪しくなり、直線は伸び切れなかった。それでも、大きくバテずに最後まで走り切ったのは、さすがだった。叩き良化型だが、ここ2走は見せ場すら作れていない。昨冬の鼻出血の影響が少なからずあるか。距離は延びれば延びるほどいいタイプ。テンにじっくりと構えて3角からロングスパートができれば勝機はある。あとは、どこまでデキが戻っているか。
【ケイアイドウソジン】
前走の日経賞7着は、手綱をしごいてハナを取りに行くも、前走で3400mを使っていることもあって2番手が精一杯。道中は離れた2番手から追走する。向こう正面から手綱が動き、レースの流れが一気に速くなった3角からはスブさを見せて馬群に飲み込まれそうになるが、そこから粘り腰を見せてくれた。着順ほど負けていない。前々走のダイヤモンドS1着は、スーッと楽な手応えでハナを奪う。2番手のスマートロビンが折り合いに不安を抱えるタイプのため無理な競り合いはない。1周目の正面スタンド前までは13秒前後のラップを刻み、1角からは13秒台後半のラップを刻む。流れを緩めたにもかかわらず、2角からは後続を引き離す形に。3角までたっぷりと息を入れる。残り1000mからペースを上げると、4角手前から後続に一気に詰め寄られる。それでも、脚色に余裕があるため11秒4-11秒2-11秒5と二の脚で後続を突き放す。最後は2着馬に迫られたが、12秒5でしっかりと踏ん張り逃げ切った。折り合いに不安のないタイプで。スタミナは豊富。前走からの距離延長は歓迎だし、鞍上には追える川田。ここも同型の出方が鍵を握るが、単騎でスイスイ良ければ面白い存在に。
【ギュスターヴクライ】
前走の阪神大賞典1番枠から気合いを付けて好位を取りに行く。これは大人しい気性だからこそできるもの。急がせても掛ることなく好位のインでしっかりと折り合う。1角からは馬任せで無理をさせずにポディションを落とす。3角手前から進出を開始させるも、4角で前が壁になったために一旦我慢する。これが功を奏した。直線で追い出しを開始すると粘り強い脚で突き抜ける。一旦は怪物に並ばれたが、そこから粘り腰で振り切った。まったく折り合いに不安のないタイプで鞍上もロスなく上手く立ち回った。前々走は中1週のためテンションが高くて行きたがる素振りを見せたが、本来は折り合いに不安のないタイプで長くいい脚を使える。正直、前走はロスなく立ち回れた恩恵は大きく、一線級相手ではまだ力の差はあるか。激戦続きだが、1週前は併せ馬でグイッと先着して集中力のある走りを見せてくれた。
【ジャガーメイル】
前走の阪神大賞典5着は、珍しくテンから気合いを付けて出していく。これは有馬記念で消極的な騎乗で脚を余した反省を生かしてのもの。久々に掛るくらいの行きっぷりを見せてくれた。三分三厘で早めに先頭に並びかける正攻法の競馬。直線は馬場に脚を取られて失速してしまったが、久々を考えれば申し分ない内容だ。前走の行きっぷりなら年齢的な衰えを心配する必要はない。この中間は1週前に長めから意欲的に追われ、既に速い時計を2本消化。攻め馬を強化されている。前走の積極的な競馬が本番に必ず繋がるだろう。
今年に入って競馬休んでますが、天皇賞予想も楽しみにしております。
オルフェーブル枠順最悪なとこですねー。
今年に入って競馬休んでますが、天皇賞予想も楽しみにしております。
オルフェーブル枠順最悪なとこですねー。
今年に入って競馬休んでますが、天皇賞予想も楽しみにしております。
オルフェーブル枠順最悪なとこですねー。
オルフェーヴル、最悪の枠順になっちゃいましたね。。。
逆にどんな作戦を打ってくるのか楽しみです。
今後ともよろしくお願いします☆