◎ゾロアスター教
★ゾロアスター教
●以下、おもに「ゾロアスターの神秘思想」(岡田明憲、講談社現代新書)によります
○古代ペルシャの宗教で、創始者はゾロアスター(古代イラン語で「ザラスシュトラ」)
ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」の「ツァラトゥストラ」はそのドイツ語読み
ゾロアスターは紀元前9世紀から前7世紀の間に生きた人であろう
ゾロアスターに関してはムハンマドのハディースのようなものは残っていない
○ゾロアスターは瞑想をしている間に、つぎのような最初の啓示を受けた
白い衣装をまとい、光り輝く善の軍隊と、暗い悪の軍隊との決闘で、悪の軍隊の敗北に終わった
・ゾロアスターは、自ら至高神と名乗る者との対話から、人生の意義、宗教の現実、人類と宇宙の将来に関する啓示を受けた
伝承によれば、ゾロアスターは、17篇の讃歌「ガーサー」に詠んだ
・ゾロアスターは、アフラ・マズダーから「善い宗教」を復活させる使命を負わされた
●アフラ・マズダー
○ゾロアスター教はアフラ・マズダーを唯一神とする一神教である
善の神と悪の神という2つの神を崇めるというのは誤解である
・アフラ・マズダーは人間の行為の善・悪を正確にはかり、応報を下す峻厳な審判者である
●光と闇の二元論
・ゾロアスター教の二元論は善・悪の闘争を説く二元論である
ゾロアスター教では神と悪魔の配下に多くの天使や魔物をしたがえる
天使の最上位を構成するのが、次の7柱の大天使である
スプンタ・マンユ(聖霊、善霊)、ウォフ・マナフ(善思)、アシャ(正義)、アールマティ(敬虔)、クシャスラ(統治)、ハルワタート(完全)、アムルタート(不滅)
・アフラ・マズダーは、最も神聖なる心霊と称され、しばしば大天使の筆頭のスプンタ・マンユと同一視される
・対する悪魔アンラ・マンユは破壊霊である
●善の戦士
・ゾロアスター教では人間はアフラ・マズダーにより創造されたとする
それは、人間の本性は善であるととらえると同時に、アフラ・マズダーの善の軍団に参加し悪と戦わなければならないことを意味する
・ナオジョテと呼ばれるゾロアスター教の入信式の際には、司祭から聖衣スドラと聖帯クスティーをさずけられる
スドラは白色の綿のシャツで、善の戦士の鎧である
スドラの白色は善の世界を代表する
スドラを着ることは、アフラ・マズダーの軍団に参加したことを意味する
この世は善と悪の戦場であるから、人間は常に戦い続けなければならない
●ゾロアスター教の聖典「アヴェスタ」
・「アヴェスタ」は口誦で伝えられたが、5世紀ごろ特別につくられた文字によって書写され、現在の「アヴェスタ」は14世紀に再構築されたもので、21部のうち5部しか残っておらず、原本の4分の1ほどしかない
第1部は「ガーサー」を含む「ヤスナ」と呼ばれる儀礼讃歌集で、司祭者はそれを火の前で歌う
第2部は「ヤシュト」アフラ・マズダーなど
第3部は「ホルダ・アヴェスタ」祈禱集で1日の決まった時間に捧げられる日々の祈禱など
第4部は「ウィスプラト」儀礼書
第5部は「ヴェンディダード」汚れや浄化という問題に関する規則集
●ゾロアスター教徒の生活
○ゾロアスター教徒は毎日5回の祈禱と毎年7つの大祭を行うことを義務とする
○インドのゾロアスター教徒は、日に3度(朝、昼、夕)太陽を礼拝するという
○火を聖なるものとして崇拝し、「火の神殿」の中の「火の部屋」には、絶えることなく燃え続ける聖火が祀られる
○「ゾロアスターの忠告書」という書には、
「1日の三分の一は学問をし、三分の一は生活のために働き、三分の一は食事と休息と娯楽に使え」と説く
○ゾロアスター教の道徳の基本は善思、善語、善行の3徳である
思考と言語と行為を正しく善いものとすること
・ゾロアスターによれば、善とは、万人に対する公正さ、真実、家畜をよく世話すること、偽りの神々の排斥、祈りである
★キリスト教などへの影響
●メシアの原型
・メシアとは本来「油をそそがれた者」を意味し、王や祭司を指すもので、必ずしも終末論的救世主に特定されていたわけではない
それがキリスト(メシアのギリシア語意訳)になると、救世主に限定されて使用される
・このメシアの原型と考えられるのが、ゾロアスター教のサオシュヤントである
ゾロアスター教では、ゾロアスターの誕生から三千年後、世界の終末が来るとする
千年ごとにゾロアスターの子孫が出現し、救世主サオシュヤントになる
最後の3番目のサオシュヤントが、終末の総審判を行う者である
●最後の審判と個人の救済
○ゾロアスターは死後の世界を天国と地獄に二分した
ゾロアスター教では、人間は死後、肉体は地、水、火、風の四大に帰すが、霊魂は不滅で、裁きの橋を通過し、生前の善業、悪業に応じて、天国または地獄に赴くと説く
○ゾロアスターは、魂は地獄を経ることによって、段階的に浄化されるという考えを打ちたて、それ以前のいかなる宗教にもなかった、終末に行われる集団審判すなわち「最後の審判」の信仰という教義を導入した
○ゾロアスター教における善と悪との闘いは永遠のものではない
ゾロアスター教徒は最終的には善が勝利することを信じている
・終末における救世主サオシュヤントの出現により、善と悪の決戦が始まる
サオシュヤントは善の軍団を編成し、アンラ・マンユの悪の軍団と戦う
最終決戦で、7大天使は7大魔と戦って勝利する
最後にアフラ・マズダーがアンラ・マンユを無力化する
すべての死者が復活し、生前と同様な肉体を与えられ、総審判の場に臨む
義者は3日3晩、天国で至福の時をすごす
不義者は同じ期間、地獄で苦しむ
この後、義者も不義者も熔鉱の浄めをうける
ゾロアスター教では、熔鉱の浄めを通して、結局は救われると説く
焼け溶けた金属により大地が浄められ、世界は決定的に変質し、新たに正義が支配する時期が始まる
地獄に落とされた罪人は終末の日まで苦しむが、結局は世界の建て直しによって救われる
○ゾロアスター教の終末論は、人はこの一生で救いを得て、各人にそれぞれ異なった運命が定められるという理論を打ち立てたが、後に後期ユダヤ教、キリスト教、イスラームに受け継がれた
●菩薩の起源
・仏教の2つの潮流は小乗仏教(上座部仏教)と大乗仏教で、紀元前後に大乗仏教が生まれた
小乗仏教と大乗仏教の違いは菩薩思想の存在である
菩薩思想とは、自利、自己だけの悟りに満足することなく、利他、広く一切衆生を救済しようとする思想である
小乗仏教では自利のみを修行し、大乗仏教の菩薩道では自利と利他を修行する
菩薩とは「自身を軽んじて他人を重んじ、悪をもって自分に向け、善を他に与えようとする者」である
○菩薩の起源はゾロアスター教の救世主サオシュヤントであると考えられる
サオシュヤントは「人々を利益する者」を意味し、利他行に通ずる
サオシュヤントは、本来、ゾロアスター教の教えに従って、世を利益するために行動する人々を指す
★ゾロアスター教
●以下、おもに「ゾロアスターの神秘思想」(岡田明憲、講談社現代新書)によります
○古代ペルシャの宗教で、創始者はゾロアスター(古代イラン語で「ザラスシュトラ」)
ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」の「ツァラトゥストラ」はそのドイツ語読み
ゾロアスターは紀元前9世紀から前7世紀の間に生きた人であろう
ゾロアスターに関してはムハンマドのハディースのようなものは残っていない
○ゾロアスターは瞑想をしている間に、つぎのような最初の啓示を受けた
白い衣装をまとい、光り輝く善の軍隊と、暗い悪の軍隊との決闘で、悪の軍隊の敗北に終わった
・ゾロアスターは、自ら至高神と名乗る者との対話から、人生の意義、宗教の現実、人類と宇宙の将来に関する啓示を受けた
伝承によれば、ゾロアスターは、17篇の讃歌「ガーサー」に詠んだ
・ゾロアスターは、アフラ・マズダーから「善い宗教」を復活させる使命を負わされた
●アフラ・マズダー
○ゾロアスター教はアフラ・マズダーを唯一神とする一神教である
善の神と悪の神という2つの神を崇めるというのは誤解である
・アフラ・マズダーは人間の行為の善・悪を正確にはかり、応報を下す峻厳な審判者である
●光と闇の二元論
・ゾロアスター教の二元論は善・悪の闘争を説く二元論である
ゾロアスター教では神と悪魔の配下に多くの天使や魔物をしたがえる
天使の最上位を構成するのが、次の7柱の大天使である
スプンタ・マンユ(聖霊、善霊)、ウォフ・マナフ(善思)、アシャ(正義)、アールマティ(敬虔)、クシャスラ(統治)、ハルワタート(完全)、アムルタート(不滅)
・アフラ・マズダーは、最も神聖なる心霊と称され、しばしば大天使の筆頭のスプンタ・マンユと同一視される
・対する悪魔アンラ・マンユは破壊霊である
●善の戦士
・ゾロアスター教では人間はアフラ・マズダーにより創造されたとする
それは、人間の本性は善であるととらえると同時に、アフラ・マズダーの善の軍団に参加し悪と戦わなければならないことを意味する
・ナオジョテと呼ばれるゾロアスター教の入信式の際には、司祭から聖衣スドラと聖帯クスティーをさずけられる
スドラは白色の綿のシャツで、善の戦士の鎧である
スドラの白色は善の世界を代表する
スドラを着ることは、アフラ・マズダーの軍団に参加したことを意味する
この世は善と悪の戦場であるから、人間は常に戦い続けなければならない
●ゾロアスター教の聖典「アヴェスタ」
・「アヴェスタ」は口誦で伝えられたが、5世紀ごろ特別につくられた文字によって書写され、現在の「アヴェスタ」は14世紀に再構築されたもので、21部のうち5部しか残っておらず、原本の4分の1ほどしかない
第1部は「ガーサー」を含む「ヤスナ」と呼ばれる儀礼讃歌集で、司祭者はそれを火の前で歌う
第2部は「ヤシュト」アフラ・マズダーなど
第3部は「ホルダ・アヴェスタ」祈禱集で1日の決まった時間に捧げられる日々の祈禱など
第4部は「ウィスプラト」儀礼書
第5部は「ヴェンディダード」汚れや浄化という問題に関する規則集
●ゾロアスター教徒の生活
○ゾロアスター教徒は毎日5回の祈禱と毎年7つの大祭を行うことを義務とする
○インドのゾロアスター教徒は、日に3度(朝、昼、夕)太陽を礼拝するという
○火を聖なるものとして崇拝し、「火の神殿」の中の「火の部屋」には、絶えることなく燃え続ける聖火が祀られる
○「ゾロアスターの忠告書」という書には、
「1日の三分の一は学問をし、三分の一は生活のために働き、三分の一は食事と休息と娯楽に使え」と説く
○ゾロアスター教の道徳の基本は善思、善語、善行の3徳である
思考と言語と行為を正しく善いものとすること
・ゾロアスターによれば、善とは、万人に対する公正さ、真実、家畜をよく世話すること、偽りの神々の排斥、祈りである
★キリスト教などへの影響
●メシアの原型
・メシアとは本来「油をそそがれた者」を意味し、王や祭司を指すもので、必ずしも終末論的救世主に特定されていたわけではない
それがキリスト(メシアのギリシア語意訳)になると、救世主に限定されて使用される
・このメシアの原型と考えられるのが、ゾロアスター教のサオシュヤントである
ゾロアスター教では、ゾロアスターの誕生から三千年後、世界の終末が来るとする
千年ごとにゾロアスターの子孫が出現し、救世主サオシュヤントになる
最後の3番目のサオシュヤントが、終末の総審判を行う者である
●最後の審判と個人の救済
○ゾロアスターは死後の世界を天国と地獄に二分した
ゾロアスター教では、人間は死後、肉体は地、水、火、風の四大に帰すが、霊魂は不滅で、裁きの橋を通過し、生前の善業、悪業に応じて、天国または地獄に赴くと説く
○ゾロアスターは、魂は地獄を経ることによって、段階的に浄化されるという考えを打ちたて、それ以前のいかなる宗教にもなかった、終末に行われる集団審判すなわち「最後の審判」の信仰という教義を導入した
○ゾロアスター教における善と悪との闘いは永遠のものではない
ゾロアスター教徒は最終的には善が勝利することを信じている
・終末における救世主サオシュヤントの出現により、善と悪の決戦が始まる
サオシュヤントは善の軍団を編成し、アンラ・マンユの悪の軍団と戦う
最終決戦で、7大天使は7大魔と戦って勝利する
最後にアフラ・マズダーがアンラ・マンユを無力化する
すべての死者が復活し、生前と同様な肉体を与えられ、総審判の場に臨む
義者は3日3晩、天国で至福の時をすごす
不義者は同じ期間、地獄で苦しむ
この後、義者も不義者も熔鉱の浄めをうける
ゾロアスター教では、熔鉱の浄めを通して、結局は救われると説く
焼け溶けた金属により大地が浄められ、世界は決定的に変質し、新たに正義が支配する時期が始まる
地獄に落とされた罪人は終末の日まで苦しむが、結局は世界の建て直しによって救われる
○ゾロアスター教の終末論は、人はこの一生で救いを得て、各人にそれぞれ異なった運命が定められるという理論を打ち立てたが、後に後期ユダヤ教、キリスト教、イスラームに受け継がれた
●菩薩の起源
・仏教の2つの潮流は小乗仏教(上座部仏教)と大乗仏教で、紀元前後に大乗仏教が生まれた
小乗仏教と大乗仏教の違いは菩薩思想の存在である
菩薩思想とは、自利、自己だけの悟りに満足することなく、利他、広く一切衆生を救済しようとする思想である
小乗仏教では自利のみを修行し、大乗仏教の菩薩道では自利と利他を修行する
菩薩とは「自身を軽んじて他人を重んじ、悪をもって自分に向け、善を他に与えようとする者」である
○菩薩の起源はゾロアスター教の救世主サオシュヤントであると考えられる
サオシュヤントは「人々を利益する者」を意味し、利他行に通ずる
サオシュヤントは、本来、ゾロアスター教の教えに従って、世を利益するために行動する人々を指す