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◎イスラーム 12(五行 1)

2015-06-14 17:16:06 | 宗教
イスラーム 12(五行 1)

五行

・五行はムスリムであるための信仰行為としての5つの義務である(5柱ともいう)
 1、信仰告白
 2、礼拝
 3、喜捨
 4、断食
 5、巡礼

 1、信仰告白(シャハーダ)


○信仰告白は2つの部分からなる

第1のシャハーダは「ラー・イラーハ・イッラッラー(アッラー以外に神はなし)と私は証言する」
第2のシャハーダは「ムハンマド・ラスールッラー(ムハンマドはアッラーの使徒である)と私は証言する」

○第1の証言は、神の実在を受け入れることであり、神の唯一性を信ずることである
 多神教を信じることは罪であるとみなされる

○第2の証言は、預言者ムハンマドが神に「服従する者」であることを認めることで、神への服従を認めるものである

・クルアーンを神の言葉と認めることによって、イスラームを受け入れることである

 ムハンマドは神ではなく、人間である

 言って聞かせるがよい。「わし(ムハンマド)はお前がたと同じただの人間にすぎぬ。お前がたの神は唯一なる神とのお告げをわしは受けておる。…」(クルアーン 18章110節)


・キリスト教においてはイエスは神であるとするが、イスラームではイエスは人間(預言者)であるとする

 イエスが神であるとすると、神が2つになってしまい、一神教の立場と矛盾する
 ゆえに、イスラームの言い分のほうが理にかなっている

○映画「マトリックス」に「トリニティ(Trinity)」という女性が登場するが、「Trinity」の意味は「三位一体」であり、主人公のネオ(Neo)は「救世主」として覚醒する
Neoの文字を並べ替えるとone 「the one」は「唯一の」の意味


●入信儀礼

・ムスリムになる入信の儀式は、証人である2人の男性ムスリムの前で2つのシャハーダをアラビア語で唱える
 一般的にはウラマー(法学者)が立ち合う

 入信する女性は、肌をおおう服装をしてベールをかぶっていることが求められる
 入信する際の経費は不要である
 入信後、一般には6信と五行の遵守を誓わせる(「6信と五行」は段階的にやっていけばいいとのことである)
 この後、シャハーダ書に証人2人が署名する

○男性ムスリムは、1神教(ユダヤ教、キリスト教)の女性が相手であれば結婚できる
 結婚した女性は、イスラームに改宗することは強制されないが、現実には改宗せざるをえない
 生まれてくる子供は、必然的にムスリムとなる

「棄教」は許されるか?

 ムスリムになったら、棄教(ムスリムが公然とイスラームを放棄または否定すること)は許されない

 ムスリムがイスラームから離れることは、神に対する最大の冒涜とされる

 入信は簡単であるが、いったん入信したら、やめることは許されない
 ムスリムになるのは、相当な覚悟が必要である(「イスラム教徒への99の大疑問」佐々木良昭、プレジデント社)

 「棄教」はイスラーム刑法上の刑罰の対象とされ、その場合の刑は通常は死刑であるが、ハナフィー学派は女性については終身禁固刑とする
 いずれもイスラームに復帰した場合は解除される
 もっとも、これは、背教がそれほど重い罪であることを示すだけで、実際に執行された事例は歴史的にも限られている

 イスラームは他宗教には寛容で、それぞれの信仰の自由を保障しているが、自己の共同体からの離脱に関しては不寛容な立場をとっている
 しかし近現代では、信教の自由を制限するものとして、西洋などから批判されている(「岩波イスラーム辞典」)


●宗教的な寛容

○かつてはアラブの征服軍は「右手に剣、左手にコーラン」の二者択一を迫ったと言われていたが、これはキリスト教側が言ったいいがかりである

 ムスリムは武力や暴力で異教徒に改宗を強制したことはない

クルアーンには「宗教には無理強いということが禁もつ」(2章257節)とあり、改宗を強制することは、クルアーンの教えに反する

 実際は、アラブの征服に対しては、

1 イスラームに改宗する、か
2 人頭税を支払って従来通りの信仰を保持する、か
3 1、2を拒否してあくまで戦う、か
の3通りがあった(「世界の歴史8」佐藤次高、中公文庫)

 逆に、暴力で改宗を迫り異教徒を殺害してきたのは、キリスト教徒のほうである

 たとえば、1099年7月15日、西洋人フランク(第1回十字軍)がエルサレムを占領し、女性や子供を含む多数の(7万人ともいう)ムスリムやユダヤ教徒を虐殺した

 キリスト教徒は、異教徒に対しては「愛」などないということである

 スンナ派のセルジューク朝支配下のエルサレムでは、キリスト教やユダヤ教の信仰はみとめられ、安全は保障されていた
 エルサレムの旧市街は大きくムスリム地区、キリスト教徒地区、ユダヤ教徒地区、アルメニア人地区の4つに分かれている
 エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラーム共通の聖地で、当時は宗教の違いはあっても、平和的に共存していただろう
 キリスト教の聖地も、ユダヤ教の聖地も保護されていたし、ムスリムからの迫害もされていなかった

 当時は、西洋よりアラブ世界のほうが、はるかに高度な文明をもっていた

 それを理不尽にも、野蛮人の十字軍が一方的に攻撃し侵略した