よしーの世界

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ピアニストは語る  ヴァレリー・アファナシェフ

2020-06-30 07:46:13 | 
世界的な一流のピアニストが自らを語る本は少ない。軽いエッセイやインタビューはあるが、特に

自らの音楽に関して言葉で語ることで、誤解が生まれる可能性が高いことは知的感性が高い人ほど

よく理解しているはずだ。一流のアーティスト、スポーツに秀でる人もほとんど自ら語りたがらな

いのは当然だ。天才と呼ばれる人は凡人には理解し難い才能であるからだ。せめて私たちは、その

領域に少しでも近づけるように努力しなければ言っている言葉を少しも理解出来ないだろう。


ピアニストはその人生を背負い続けている。その人生の投影によって音楽の深みが出て私たちを感

動させる。若いピアニストの瑞々しい感性は驚きと発見をもたらしてくれるが、年を重ねたピアニ

ストによって与えられる深い感動までもたらすことは少ない。(ヴィルヘルム・バックハウスのベ

ートーヴェン:ピアノ・ソナタを聴いてほしい)


アファナシェフの人生はロシア(旧ソ連)出身ということだけでドラマティックになる。社会的背

景は重要で音楽性に多大な影響を与える。(そのことによって自らの才能を開花できずに終わって

しまう人もいる)亡命することによって自由を手にして音楽活動に打ち込むことが出来たのは素晴

らしい。アファナシェフのピアノをほとんど聴いていないので感想を書くことが出来ないが、本書

で度々アファナシェフが批評しているリヒテルのピアノが私は好きだ。


ピアニストは語る    ヴァレリー・アファナシェフ    講談社現代新書

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