日本はかつて高度経済成長に浮かれ、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とも言われた。しかし世界第
2位であったGDPで中国に抜かれ(ドイツにも抜かれ)企業の世界ランキングから日本企業の名前は
消えた。米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は国境を越えて活動し、
中国でもBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)が成長しているが、日本には対
抗する存在が生まれていない。日本で改革が進まないのは何故か?
本書では素粒子物理の研究者で理系の相原氏と霞が関の行政官で文系の奥原氏による対談で、日本人が
自分の属する狭い世界、「タコ壺」にどっぷりつかり、外の世界との関係を考えず、そのタコ壺の内輪
のルールや「空気」に従うのが当然としているところに原因があるとしている。
日本の官庁の文系中心主義は根が深い。多くの省庁では、文系しか事務次官になれないそうだ。その為
に時代に合わないシステムが変更できず、前例踏襲が蔓延る。理系の思考プロセスは新しいものにチャ
レンジするという意識がかなりある、そうでなければ科学で成果を挙げることが出来ないからだ。
科学技術のほとんどの分野で、日本は世界水準にある、それでも国際会議では孤立する日本人が多い、
官庁が2年ごとに人事異動してしまうからだ。これからは行政官も専門分野に精通させ、視野を広げ、
交渉能力を高めるトレーニングが必要だという。さらに決定権の見えない無責任体制を指摘している。
国内の株価が上昇傾向にあり、経済人や大手マスコミははしゃいているように見える。日本の根本的問
題はまた棚上げされてしまうのだろうか?一番大きいのは大多数の国民には、その恩恵が殆どない事だ。
日本のGDPの5割以上は個人消費によるものだ。今、大きく変えていくことが出来なければ明るい未
来はない。
文系・理系対談 日本のタコ壺社会 相原博昭×奥原正明 日経プレミアシリーズ