著者の略歴がスゴイ!東京大学法学部卒、リヨン大学法学部修士課程修了、警察庁Ⅰ種警察官として
警察署、警察本部、海外、警察庁等で勤務、警察大学校主任教授にて退官。この経歴を伝えて、現役
警官と対峙すれば相手は直立不動だろう。しかし、著者は何事か起こって警察と対応する場合、一市
民として経歴を明かさないことにしているので、理不尽な目に合うこともある。
勿論、勤務するほとんどの警察官はキチンと職務を全うしているが、中には例外的なバグが一定件数、
一定頻度で発生してしまう事を著者も認めざるを得ない。
まず著者の身近で起きた事例をいくつか上げているが、警察をも揺るがした事件で、記憶も新しい「
大宰府事件」「桶川事件」を取り上げ検証している。本書には警察内部の動きが詳細に記述され、問
題点が素人にも掴み取ることが出来る。
日本では救急車が無料であることによって、寝る間も食事する間もなく緊張を強いられる隊員が多数
いることは知られているが、警察もただであることによって、不適切な通報にも対応せざるを得ない
現場を紹介している。通報の4分の1はいたずら・無言、誤報、虚報、行政手続きの問い合わせ、緊
急性のない相談等ひっきりなしで、さらに警察官一人で複数の事件を掛け持ちしている現状もある。
その上で本書では事件等が発生し、警察官の対応に困った時の為に具体的なトリセツが書かれている
が、著者は市民と警察は本質的に協働者・同盟者であるので、必要なのは「問題解決を指向した」話
し合いと相互理解が不可欠という。
難しい法律用語等も頻出するが、ユーモアをまじえ軽妙な文章でつづっているので非常に読みやすく、
警察に対して親近感を持つことが出来る内容です。
事件でなければ動けません 古野まほろ GS 幻冬舎新書